学生結婚したら、周りの美少女達が全員寝取り(NTR)属性だった件。
海の家
第1話 レナ
「新郎郁也さん。あなたは新婦春奈さんを妻とし、病める時も健やかなる時も、死が二人を分かつまで、これを愛し、敬い、貞操を守ることを誓いますか?」
「はい。誓います」
「新婦春奈さん。あなたは新郎郁也さんを夫とし、病める時も健やかなる時も、死が二人を分かつまで、これを愛し、敬い、貞操を守ることを誓いますか?」
「はい。誓います」
誓いの言葉を互いに終え、俺たちは笑い合いながら歩み寄った。
上目遣いでこちらを見る春奈の目は少し潤んでいる。
照れなのか喜びなのか、俺には分からない。
でも悲しみの色ではない事だけは確かだ。
「それでは誓いのキスを」
式場の外では、満開の桜が俺達の門出を祝福してくれている。
そんな3月31日、俺―上森郁也と、湊春奈は夫婦になった。
***
「ねぇーめっちゃ暑くない?暑いよね。これでまだ夏じゃないとか詐欺だろー」
「……」
「ねぇってばー郁也聞いてる?今日ってめっちゃ暑いんだよ?」
「………」
「ねぇって、ねねねね」
「うるさい」
「え?」
「うるさいって言ったんだよ。俺が無視してるのレナ分かってるだろ?」
俺は半ば機械的に、横にいる彼女にそう告げた。
最初のうちは感情が昂るもあったが、一ヵ月も続けば慣れたものだ。
特に彼女ははっきり言わないと分からない人だし。
「うるさいってそれは無くないー?普通に世間話してるだけじゃんか」
「……ねえレナ。俺の左手の薬指見えない?」
「え、見えるよ?結婚指輪」
「なら分かるでしょ。頼むからそろそろやめて欲しいな」
「えーなにそれ。結婚指輪してるからって異性と普通に話しちゃいけないわけ?そんなのおかし――」
「そんな胸強調しながら誘惑してきて普通に話してるは無理あるから!ほんとに無理あるから!」
前言撤回。
やっぱり一か月たっても感情は昂るみたいだ。
「あーやっぱり郁也気にしてるんだ。いけないんだー」
「ほんとに、頼むからどっかに行ってくれよぉ」
俺がそう言うと、彼女は更に妖艶な笑みを浮かべた。
彼女はレナ。
同じ大学に通う大学2年生で俺の同級生。
大学で一番の美少女との呼び声も高いが、それを上回る負の噂が彼女の本性だ。
他人の彼氏を寝取っては捨てる「悪女」
狙われたカップルは全て破局の一途を辿る「カップルクラッシャー」
社長たちを手玉に取り高値で自分の身体を売る「尻軽er」
などなど、嘘か真かは知らないが彼女の二つ名は膨大にある。
「他の人の男って最高だよね。その指輪見てるだけでゾクゾクしちゃう」
「いや……えぇ」
「も~引いてるふりしちゃってさ、本当は私のこと気になってきてるんでしょ?」
「……本当に引いてるんだよなぁ」
彼女から付きまとわれ始めたのは、俺が大学に復帰した6月の初旬。
大講義室で、結婚指輪を見た途端に隣の席に座ってきたのを今でも覚えている。
多分、ちゃんとした服を着てるのを見たのもその日が最後だ。
「何回も言ってるけどせめて服装だけでもちゃんとして欲しいな。それで横を歩かれてたら俺の評判が地に落ちそうだから」
「えー?そんなにおかしいかな。結構かわいいと思うけど」
「……さっきも言ったけど露出しすぎなの。いくら暑いからってそれはないから」
「そう?こんなの水着と同じじゃん」
「いやここ大学だからね?!大学で水着着てるやつおかしいでしょ?」
今日のレナはタンクトップ、といっても胸までしか丈がないものに、デニム生地のショートパンツというどこぞのグラビアのようなコーデだ。
これが横を歩く気持ちを考えてほしい。
レナだって、俺が水着で大学を歩いてたら目を疑うだろ。
「まあまあ落ち着きなよ。てかさ、話変わるけど今日ってサークルあるー?」
「あーあったと思うよ。やっと興味持ってくれたの?」
「なわけじゃん。郁也を堕とすチャンスが増えるからに決まってるし」
「………ですよねぇ」
そう、この女は俺に付きまとうためにサークルにまでついてくるのだ。
結構な零細サークルだし来てくれるのは嬉しかったんだけど、動機が不純すぎる。
それにこの動機に毎回「ですよねぇ」って返すのダメな気がするなあ。
けど一応、毎回期待はしてるんだよね、普通にサークル活動に興味持ってくれるのを。
「なにが「……ですよねぇ」ですか。そんな態度だからそんな女に付きまとわれてるんですよ」
「え?!沙耶?!」
レナと同時に声の方に目をやると、そこには案の定小動物のように愛らしい後輩が立っていた。
彼女の名前は、天月沙耶。
俺の一つ下の後輩で、同じサークルのメンバー。
人数が少ないので、まだ一年生なのに経理を担当しているしっかり者だ。
「あ、最近郁也にくっついてる後輩ちゃんだ」
「は?何言いよるん?このアバズレ」
……なんか登場して早々、だれも望まない修羅場が起きそうなのは気のせいだろうか。
【あとがき】
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