迷信
佐々井 サイジ
第1話
昔、おばあちゃんと同居していた。よく「部屋を真っ暗にして寝てはいけないよ。幽霊の通り道になるからね」と教えられていた。初めて言われたころは小学一年生くらいだったと思う。でももっと前にもきっとおばあちゃんは言っていたはずだった。そのときは怖かったけど、おばあちゃんは寝る前には必ず例のことを僕に行っていた。それが「おやすみ」の言葉の代わりだったのかもしれない。
僕が中学生になっても相変わらず言い続けていたのでさすがに煩わしくて適当に聞き流していると「ちゃんと聞き!」と背中を叩かれながら叱られた。おばあちゃんが長年僕に刷り込み続けたせいで真っ暗で寝ることができなくて、常夜灯をつけて寝ていた。
迷信というのは怖がらせることでやってはいけないことを守らせる目的がある。でも「部屋を真っ暗にしてはいけない」ということがなぜやってはいけないのか。中学生の頃はこんな考えに至るはずもなく、ただおばあちゃんの言うことを聞き流しつつ、なんだかんだ薄い光をつけて寝るのが習慣だった。
中三で私立受験が終わった日だった。父さんが受験お疲れ様会と称して近所の回転寿司屋で外食しようと提案した。私立の受験が終わってまだ合否がわからないし、おまけに第一志望は公立高校だったため、やんわり断ったのだが、一度決めたら父さんはてこでも意思を曲げない。まあ父さんは勉強が大の苦手で、高校受験に失敗したとおばあちゃんが言っていたので、偏差値そこそこの私立高校を受験しただけでもすごいと思ったのだろう。
僕の家はそんなに裕福だったわけじゃなくて、実際に、滑り止めの私立を受けさせてくれたわりに回転寿司屋に行こうとしたら、母さんが「一人十皿食べたら三千円以上になるから三皿までや」って言いだして、「そんなもん全然食べれへんやないか」とすでに外出用のジャンパーを着ていた父さんと喧嘩しだした。
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