玉替え

枠上人生

プロローグ

電車の扉のそばに寄りかかっていると、オレンジ色の光が強く差し込んでくる。

僕は目をそっと細めながら、日没の太陽を照り返してくる瀬戸内海を見返した。

もう3年になるのか……。


広島県呉市、吉浦よしうら町。ここでは毎年10月1週目に吉浦カニ祭りが催される。

土曜日から夜祭よまつり本祭ほんさい後日祭おにまわりと3日間も続く、小さな町にしては盛大なお祭りだ。


夏休みに帰省し損ねた僕は、お祭りの時期にあわせて実家に帰ることにした。

東京の大学に進学してからは初めてだ。親不孝にもほどがある。

変わってしまったものも色々とあるだろうな。


駅でうどんを食べ損ねてしまったのでお腹がすいてきた。

その時は予定外の里帰りにちょっと気分が高揚していたかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る