This Bird had flown.

川線・山線

第1話 突然に

「放さないで。今だけはこのままでいたいの」


少し遅くなった夜、隆司が紗代子を駅前に降ろすと、彼女はそう言って彼を抱きしめた。


「紗代子さん…、僕は…」


と隆司が言葉を継ごうとすると、紗代子は


「何も話さないで。これでいいのよ」


と隆司の唇をふさいだ。隆司の腕もゆっくり紗代子の身体を包む。周りの喧騒の中で、二人の間には静寂の時が流れて行った。

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