はなさないで

@curisutofa

はなさないで

『ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ』


『『絶対に離すでないぞ。傭兵ゼルドナーっ!』』


善処ぜんしょさせて頂きます。男爵バローン閣下』


根元魔法を学ぶ為の学費と生活費を融資して頂いた高利貸し…、金融機関からの斡旋あっせんにより受けた今回の傭兵ゼルドナーとしての依頼ですが。大失敗でしたね。


『ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ』『バチンッ、バチンッ、バチンッ』


『『ええいっ、しつこいっ。空を飛んで逃げ…、転進てんしんしておるのに。賤民せんみんによるけがれた手による追撃が止まぬではないかっ!』』


魔法使マーギアーいでもある傭兵ゼルドナーとして、金融機関からの斡旋あっせんを受けた今回の依頼内容は。貴族諸侯であらせられる男爵バローン閣下に雇われて、御領地の境界付近の領界争いを武力で解決する為の軍事行動でしたが。


『ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ』『バチンッ、バチンッ、バチンッ』


『根元魔法の飛翔フルークにより、男爵バローン閣下と転進てんしんしておりますが。空を飛んで移動している私達を攻撃しているのは、精霊魔法かと思われます』


他家の領内深くまで攻め込んだ領界争いに敗れた、今回の依頼主である男爵バローン閣下と共に。家臣団の騎士リッター様や他の傭兵ゼルドナーも全て見捨てて、軍場いくさばから逃げ出して来ましたが。


『ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ』『バチンッ、バチンッ、バチンッ』


『こ、この不可視の障壁しょうへきは、破れぬであろうな?。傭兵ゼルドナーよ』


根元魔法の飛翔フルークにて空を飛んで転進てんしん中の私達を、精霊魔法で何者かが追撃していますが。不可視の障壁しょうへきを展開する魔法障壁マーギッシェ・バリエーレにより防いでいます。


『ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ』『バチンッ、バチンッ、バチンッ』


善処ぜんしょさせて頂きます。男爵バローン閣下』


『『先程から同じ返答しかしておらぬではないかっ!』』


依頼主にして貴族諸侯であらせられる男爵バローン閣下には、御領地に生還せいかんして頂きませんと報酬を受け取れませんから。それまでは生かして…。


衝撃波シュトース・ヴェレ』『ブオッ』


『『うおっ。何事かっ!』』


不可視の魔法障壁マーギッシェ・バリエーレを展開しながら、飛翔フルークにて空を飛び男爵バローン閣下と共に転進てんしんしていますが。根元魔法の衝撃波シュトース・ヴェレにて、魔法障壁マーギッシェ・バリエーレの外を攻撃しました。


飛翔フルーク魔法障壁マーギッシェ・バリエーレ衝撃波シュトース・ヴェレという、三種類の根元魔法を同時に発動出来るのは珍しいですね。金髪ブロンデス・ハール魔法使マーギアーい殿』


根元魔法の飛翔フルークにて移動中の私達と並行して空を飛んでいる、初めて見る奇妙な装いをしている男性が姿を現しました。


『貴方の方こそ。私の飛翔フルークの移動速度と同じ速さで空を飛びながら、衝撃波シュトース・ヴェレによる攻撃を受けても傷一つ負わずに平然とされていられますね』


敵対をしている魔法使マーギアーいでもある傭兵ゼルドナーである私の言葉に対して、奇妙な装いをしている男性は苦笑を見せまして。


民族衣装トラハトに傷を付けますと、部族の長老エルダーうるさいですから。戦乙女ヴァルキュリアの力を借りた精霊魔法にて防がしてもらいました。金髪ブロンデス・ハール魔法使マーギアーい殿』


やはり追撃を行っているのは、精霊魔法の使い手でしたか。


『き、貴様は何者だっ!。見た事の無い奇妙な服を着ておるな?』


精霊魔法の使い手である男性が着ている、民族衣装トラハトという装いを奇妙に感じる点男爵バローン閣下と意見が合いました。


『貴方達のような帝国之住民ライヒス・ビュルガーとは異なる、閉鎖的な部族社会にて私達は暮らしていますから。ご存じ無いのは当然かと』


精霊魔法の使い手である男性はそう話しますと、根元魔法の飛翔フルークにて移動中の私と並行しながら。


『今回の領界争いには、部族の長老エルダーの指示により力を貸しました。出来れば争いの元凶を引き渡しては頂けないでしょうか?。金髪ブロンデス・ハール魔法使マーギアーい殿』


ふむ?。


『私は男爵バローン閣下に雇われた魔法使マーギアーいでもある傭兵ゼルドナーです』


報酬を受け取るまでは引き渡すつもりは無いと返答をしますと。精霊魔法の使い手である男性は、不可視の魔法障壁マーギッシェ・バリエーレにより守られている男爵バローン閣下に視線を向けまして。


『引き渡して頂ければ、傭兵ゼルドナーとして約束された報酬の倍額をお支払いしますが?。金髪ブロンデス・ハール魔法使マーギアーい殿』


…交渉の条件を引き上げて来ましたね。


ギュウッ。


『ま、まさか引き渡すつもりではなかろうな?。傭兵ゼルドナーよ』


私の手を力を込めて掴んだ依頼主でもある男爵バローン閣下を眺めて、手を離すべきか一瞬間いっしゅんかんだけ悩みましたが。


善処ぜんしょさせて頂きます。男爵バローン閣下。魔弾フライ・クーゲル』『バチイッ』


拒絶するという返答の代わりとして、標的に必ず命中する魔力マナかたまりである魔弾フライ・クーゲルを、民族衣装トラハトを着ている精霊魔法の使い手の男性に撃ち込みましたが。戦乙女ヴァルキュリアの力を借りた防御により防がれました。


『律儀ですね。金髪ブロンデス・ハール魔法使マーギアーい殿』


傭兵ゼルドナーの仕事だけに限りませんが、信頼はお金では買えませんから』


ここで男爵バローン閣下の手を離して報酬の倍額となる金額を受け取りましても、仕事を斡旋あっせんして頂いた金融機関の信頼を失い、今後の学費と生活費の返済に支障をきたす恐れがあります。


『ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ』


空を飛びながら私と、民族衣装トラハトを着ている精霊魔法の使い手である呪術師ベシュヴェーラーとは、しばしの間空中で対峙をしましたが。


『時間切れですね。間もなく金髪ブロンデス・ハール魔法使マーギアーい殿の雇い主が治める領地に入ります。部族の長老エルダーからは、防衛以上の行動はするなと指示されていますから』


そう言いますと彼は、楽し気な表情を浮かべながら私に対して。


『貴方の事は気に入りました。精霊の導きがあれば、また会いたいですね♪』




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