第5話 始まる冒険

カシャン、カシャン、カシャン、カシャン


上層に転移した俺は絶賛逃げ回っている。

誰からか?そんなの決まっている。


「絶対逃すな!あいつ結構いい装備してるぞ!」


「任せて!あーん。矢が当たらない!」


「なんか戦い慣れてるよね、あの魔物。逃げ方上手いし。」


冒険者パーティーぽいやつらからだ。

そりゃスケルトンがこんないい装備つけてたらいいカモか。ちなみに、もういろんなパーティーに追いかけ回されて腕もないし、肋骨も半分くらい折られてる、もう瀕死だ。


あっ、行き止まりだ。やばい死ぬ。


「おりゃー!」

そうして冒険者の男に俺は狩られたのだった。



「はっ!」

意識が本体に戻る。


くっそー!!むかつく!

今からおれがあいつらのとこ行って殺して食ってやろうか!!


待て待て、まぁ。これは仕方ない。楽しかったは楽しかったし、まぁ良しとしよう。

次はボロ装備で狙われないようにしよう。

もう一回同じスケルトンを作って憑依して上層に出る。


これをもう1か月続けている。

なんでか教えてあげよう。出られないのだ。

死の迷宮の入り口には大きな町ができていているらしく、常に警備がいてスケルトンでは余裕で狩られる。


無理ゲーだ。かと言って強い魔物に憑依して無理やり出るのは少し心が痛む。


さてどうしたものかと腕を組んでボロ装備のスケルトンで歩いているとローブをきた1人の少女が他のスケルトンと戦っているところにでくわした。


「テイム!テイム!わっ!危ない!もう、なんで従わないのよ!」

スケルトンに向かってテイムの魔法をかけている。なるほど、従魔というやつか。


ピンと来てしまった!従魔なら街を歩けるのではないか!?もしかしたらいろんなところに行けるかもしれない。


「テイム!あっ、やっと成功し…」


バコン!バラバラバラ…


テイムが成功しそうだったので、思いっきりそのスケルトンをぶん殴ってバラバラにする。

ふふん!怪力Lv2を舐めないでいただきたい。


「なにするのよ!せっかく成功してたのに!!」


ジェスチャーで俺にしとけと伝える。


「え?あなたテイムしてほしいの?」


俺は頷く。


「こんなに自我がはっきりしてるスケルトンがいるなんて。もしかして…ユニークモンスター!?やった!これで学校で馬鹿にされずに済む!むしろ自慢できますわぁ〜!」

やったやったと跳ねている少女。

早くテイムしろよ。


「あっ、て、テイム!」

俺はテイムの魔法を受け入れる。

この子とのパスが繋がるのを感じる。

うんうん、こんな感じか。


「やったー!初めての従魔だわ!家に帰って自慢しましょ!」

少女はそう言ってダンジョンの外に俺を連れて行ってくれた。


あぁ、やっとだ。やっと外に出れる。長かった。

太陽がキラキラと輝いていて、中世のような街。大きな城。なんだ街じゃなくて王国なににかだったのか?どっちでもいいけど。


あぁ、この子には感謝しても仕切れない。涙が出そうだ。出ないけど。


「なにキョロキョロしてるの?あぁ、初めてダンジョンから出るから珍しいのね。貴方ほんとに賢いですわね。まずギルドにいって貴方を従魔として登録するわよ。」


そう言って酒場のような場所に連れて行かれた。大勢の冒険者風の大人たちが昼から笑いながら酒を飲んでいる。

あっ、あいつらこの間おれを殺した奴らだ。中指立てとこ。


大きな掲示板がありそこに無数の紙が貼られている。


少女は綺麗なおねいさんがいる受付まで歩いて行った。


「従魔登録をしたいのですが。」


「はい。従魔登録ですね。ではこの書類をご記入ください。手数料が掛かりますが代筆もできますが。」


「字は書けますわ。あっ、名前。どうしましょう。」

おっ!名前つけてくれるのか!生前は早乙女 仁だったが、名前つけてほしいな!

俺はウキウキして待つ。


「あっ!ルーカスなんてどう?」

バシと少女の頭を叩く。

勇者じゃねーか!やめろ!


「痛いじゃない!もう、嫌なのね。勇者様の名前なのに。」


「スケルトンに勇者様の名前をつけるのは不謹慎かと」

苦笑いしながら受付のおねいさんが注意してくる。

間違いない。


「じゃあ、もうスケルトンだからスケさんで。」

適当かよ!おい、もう書類にスケさんで書いてるじゃねーか!


「はい、これ登録料ね。」


「はい!確かに受け取りました。これで登録終了です。」


「これからよろしくね、スケさん。」


まぁ、いいか。よろしくな。








これから冒険がはじまる。






これは最強のダンジョンの主となった俺がこの異世界を好き勝手に生きていく物語。







国王?魔王?勇者?神?伝説の魔物?

全ては手に入れた俺の力とダンジョンの兵力と財力で捩じ伏せていく。

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