最終話/僕はいつか上司に出会うだろう
――あまりに孤独な道だった。ありのままではだめだった。歩み寄れば避けられ、努力すれば
正しく生きるべく異形となった僕は、今日も後ろ指をさされた。そして世界は僕を爪弾きにしたまま平和に廻っている。
僕は世の中を恨んだ。恨んで恨んで、何も感じなくなった。夜中に突然、涙が出ることがあった。誰にも求められずに生きていることが恥ずかしく、誰にも気付かれずに老いていくことが怖かった。
ぬるく激しい水が僕をさらい、抵抗するすべを持たない僕は
僕の設計図に描かれているのは白と黒のしま模様。その向こうにある灯台が、僕を急かすように青く点滅している。動きたいのに、動けない。海に流した男が僕の足を掴み、赤い目でにらんでいる。真横から突っ込んできた波が僕を地面に沈めた。
間違いだらけの設計図。
裂けた孔と、黒い身体。
愛はまだ、わからない。
ああ、この声が君に届くだろうか。世界に嫌われた僕を、ありのままで生きられない僕を、どうか君だけは拒まないで。
たったひとつの正解を求めて、こんなところまで来てしまった。君は疲れた僕にその肩を貸してくれるだろうか。僕のくだらない話を聞いてくれるだろうか。そのとき、君はきっと、僕の姿を怖がらない。身体も心も寄せ合って、いつか君の逆鱗にも触れさせてほしい。
逆鱗たち 水野いつき @projectamy
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