誰かの幸せ

@ku-ro-usagi

ショートショート

小学生の時

近くの大学の文化祭へ行ったことがある

占いサークルが敷地の端に小さくスペースを取っていた

中学生までは300円で占いますよって

占ってくれるのは普通のお姉さんって感じの人で

紫のローブとか被ってなくって少しガッカリした記憶はある

未来のこと聞いたら

タロットとは違うカードをペラペラ適当に引きながら

「結婚までは至極順調

旦那さん浮気するかも

でも、我慢より戻してからは、人生は薔薇色だよ」

って占われた

子供心に

(リアルなこと言うなぁ)

って思いながら

「もし別れたら?」

って聞いたら

「別れたら、うん、少し年下と付き合うけどちょっと苦労するかな」

ってまるで見てきたかのように言われた

そんなのすっかり忘れて大人になって結婚して数年して

旦那の浮気が発覚した


それでふっと

ずっと忘れていたのに

あの占いサークルの大学生の占いの言葉を思い出した

旦那の浮気相手は

いい年の子供がいるくらい年上の相手で

プライドはズタズタにされるし

腹も立ったし当然離婚が頭を過ったけど

あの大学生の

「より戻したら人生は薔薇色」

の言葉も

一緒に思い出していたから

我慢して結婚生活を続けることにした

そしたら

その後すぐに

旦那が仕事中に事故で死んだ

そしたら

色々諸々のお金が入ってきたし今も入ってくる

家も立地の良い場所に建ててたからもし困ったらすぐ高値で売れる

何もしなくても

ただ楽に生活していくには全く困らない人生になった


その後は

自分で言うものあれだけど

まだそこまで年でもなかったし

見た目も悪くないと思う

両親もやんわりと再婚を促してくるくらいだし

でもね

気持ちいいくらい

異性だけに限らず人との縁がぱったりなくなった

仲よくなりかけると途切れるの繰り返しでもう諦めた

友人たちも結婚出産となっていくうちに話が合わなくなり

たまに気の合う友ができたと思ったら

ただのマルチか宗教かどこからか嗅ぎ付けた金目当て

旦那の死を境にね

人生の全てを金運に割り振られてしまった気がした


それで気づいたと言うか思ったのが

あの時の

占いサークルの彼女にとっての人生薔薇色と言うのは

暖かい家庭

やりがいのある仕事

恵まれた人間関係

どれでもなくて

「お金に恵まれている人生」

彼女にとっての薔薇色って意味だったんだなって知った

あの時の彼女にはきっとそれが一番だった


もしも

あのまま夫と離婚して彼女の言う年下の誰かと結婚していたら

私はどんな人生だったんだろう

子供だっていたのかもしれない

友人と楽しくお茶をしていたかもしれない

そんなことを

1人では広すぎる家の中で

ぼんやり考えたりする

早春の午後






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