☆KAC20246☆ 星の光と言葉

彩霞

前編

 学生だったころ、学園祭のテーマとして「星」が提示されたことがあった。


 すると担任の先生が、「皆、もし優勝を考えているなら、テーマに即したものを作らないと賞はとれないぞ」と言った。


 そのときの私は「ふーん」と思いつつ、クラスの出し物——ステージで発表するものなら何でも良かったようだが、最終的にダンスに決まった――を黙々と準備した。


 そして迎えた本番当日。

 裏方の照明係だったこともあり、私はクラスメイトたちが作ったダンスを体育館の二階にあるギャラリーで見ていた。


 ステージの頭上に、紙に書かれた「星」という文字が掲げられ、その下で色とりどりのペンライトを使ったダンスを踊っているクラスメイトたちがいる。

 それを見て、「ああ、なるほど」と思った。


 準備の段階では担任の言っていることがイマイチ分からなかったが、ステージで発表されたものを客観的に見たら、「星」というテーマにちゃんとマッチした内容だと思った。


 そのお陰で、我がクラスは優勝した。


 ダンスのできも良かったというのもある。

 だが、上手なクラスはもう一つあった。というより、人気はそっちのほうが上だったように思う。


 みんなが舞台上の発表に飽きだしていたころに、面白くてキレのあるダンスを披露ひろうしたため、観客が合いの手を入れたくらいである。最後は、拍手喝采はくしゅかっさい。「ヒュー!」という指笛もめちゃくちゃ聞こえた。


 どんなダンスだったのか。気になる人もいると思う。私も話してみたい気はするが、ぼんやりとした大枠を話しても、そのダンスを見た人に気づかれてしまう気がしてどうにも書けない。それくらい独創的だったということである。


 とにかく、それほどすごいダンスでもテーマとはかけ離れていたので、優秀賞には選ばれなかった。(しかし、審査員の先生たちはちゃんとそのダンスの人気ぶりを見ていたので、準優勝に選んでくれていた)


 さて、私がKACでどうしてこんなことを書いているのかと言えば、今回のテーマである「トリあえず」について考えてみたからだ。


「とりあえず」でもなく、「取りあえず」でもなく、「トリあえず」。


 KACというお祭りなので、「とりあえず」と捉えて物語を書いても全く問題ないと思うが、あえて運営さんが示してきた表記から推察すると、単なる「とりあえず」ではなく、一ひねりしてくれ、ということを感じた。


 では、何を書こうか。


 私は考えた末に、日本語に関する話を書こうかなと思い、今にいたる。

 すいぶんと長い前置きになってしまったが、今回は「トリあえず」について言葉の解剖をしてみようと思う。


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