快晴に散る

きこおみものお

第1話 双子の話

一緒に過ごして、お前がぼくにとってただの友達じゃなくて親友になって、それで、


うん。ねえ紫月しづき、僕はお前を泣かせる全てを赦さないよ。


………じゃ、この世界の全てがぼくを泣かせたら?


その時は一緒にこの世界を笑って蹴飛ばしてやろう


それって逃げるの?


違う、僕達の世界から仲間はずれにしてやるの


なにそれ、ふふふ


あはは ははは 

幼い笑い声が何時迄も木霊した









此処は、新しい世界から取り残された場所。古い常識だけが蔓延っている、カビだらけの廃墟。新世界の者たちは此処を「旧帝国」なんて馬鹿にして呼ぶ。いわく、古いだけの格好ばかりが仰々しい化け狐の巣窟だとか。


新世界というのは旧帝国での呼び方で皮肉を込めて呼ばれている。正式な名はネオキース。ちなみに、呼び方でどちらの出身かすぐに分かる。


ネオキースの多くの人々は新しいことをするのがとても得意で、反対に旧帝国の人々は得意ではない。そんな二つの世界の仲はお察しの通りだ。


さて、説明はこのあたりで終わり。足りないかもしれないが、我慢してくれ。これからきっと知っていけるさ——————










おはよう 

と言葉に出してみる。知ってるよ、返ってこないってことは


羽毛布団から身体を出す、ツンと刺す冷気を振り払ってチリン。とベルを鳴らす


コンコン

すぐに駆けつけてくるのはぼくの専属侍従。


「おはようございます。紫月様」

うん。と返事をして朝の支度をする。

「本日は、貴方様の御誕生日パーティーで御座います。御支度はこの私めにお任せください」


ああ、そうだっけ。そうだ、今日でぼくは十八になるのか。



ゴウゴウ ガーガー ギィギィ


煩い。 


小さい頃、ぼくには唯一無二の存在が居た。彼は、言うなれば魂の片割れ。血が繋がってはいないけれど、ぼく達はそんなこと気にならなかった。


幾つになってもパーティは好きなれない。カイナが側にいたら、好きになれるんだろうけど。そんなことを思ってたって仕方がないことは知ってるよ。

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快晴に散る きこおみものお @kikoomi

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