Rewrite
明日葉直希
第1話 プロローグ
「お前のことが……ずっと好きだったんだっ!!俺と付き合ってください」
「……ごめんね。私、好きな人……というか憧れの人がいるの。大輝のことは好きだけど、その想いとは違うかな。だから、ごめんね……」
そう言い残して、帰ってしまった。
あぁ……これが世間でいう所のフラれるってやつなのか。
俺、水澤大輝《みずさわだいき》は、模範解答のようなフラれ方をして、人生初の告白は幕を閉じた。
情けないという気持ちなのか、それとも単純にフラれると分かっていたのか、はたまた付き合えるという慢心があったのか……。
何とも言えないが、それでも心は苦しい。
「ずっと好きだったんだけどな」
大森友美《おおもりともみ》は、俺と幼馴染でそれこそ生まれた時からお隣さんだった。
決して、容姿端麗と言えるかは微妙だが、大和撫子と言った感じで、どこか気品があるそんな可愛さと可憐さを持ち合わせた女の子だった。
今でこそ、髪はかなり長い方で、体育のときに結ぶポニーテールが彼女を新鮮にさせる魅力的なアイテムだったが、昔はかなり短髪で出会った当初は、負けず嫌いな一面も相まって男かと思っていた。
いや、男よりも男らしい……そんな幼少期だった。
毎日公園に連れまわされ、何をやるかと思いきや、仮面ライダーごっこで敵役を任された。
おかげで毎日泥だらけ、傷だらけだ。
おまけに、周りの地域では割と大きめの公園だったのもあり、公園で立地条件のいいところを争う陣取り合戦が繰り広げられていたが、その中で特に勇んでいたのが友美だ。
でも、いつからか女性らしくなり、いつの間にかスカートを履き出し、中学ではそこそこの人気者だった。
嘘か誠か、友美の会などという、いわゆるファンクラブのような集団が中学の時に、あったとかなかったとか。
とにかく、年齢を重ねるにつれて、なお一層女性らしさというものに磨きがかかっていった。
そんな彼女のことを好きだった。
クサイ言い方をすれば、心から愛していた。
こんなこと言うキャラではないと思うけど……。
彼女を好きになってから、14年。
友美との思い出が走馬灯のように、頭の中で高速で映像化されたシーンが駆け巡る。
その思い出も取るに足らない、言ってしまえば素朴なもの。
新聞紙で仮面ライダーのお面をつくったり、ランドセルの止める金具を外して、荷物をバラバラにさせられた悪ふざけだったり、義理だと言っていたかなり塩味が効いたチョコを大量にくれたり…………。
あれこれ想像するうちに、雨がポツポツと降ってきた。
そういえば、母さんが雨降るよっていってたっけ。
「やべ……傘忘れちゃった……」
そう思ったが、今のブルーな気分には丁度いいかもしれないとも思った。
そして、濡れるのに身を任せ、複雑な気持ちを抱えながら家に帰る。
頭に冷たい雨が滴り落ちるのと一緒に、時折暖かい雨が頬をつたっていく。
その日の俺は、家に着いてから夜ご飯を食べる気が無く、そのまま部屋に戻り、布団に入った。
今まで欠かさなかったソシャゲのログインもすること無く……。
「今日は電源を切るか……」
いつもなら消さないスマホの電源を消した。
何となく、自分の心が電源を落とさせたような気がする。
嫌なチャットが来るわけでも、冷やかしの電話が来るわけでもないのだが、それでも何だかシャットダウンしたい気持ちだった。
そうして、外にいないにも関わらず、頬を濡らす雨に忌々しさを感じながらも、気づけば眠りについていた。
この時は、告白に失敗した。
ただ、それだけの悲しみだった。
しかし、俺はまだ知ることはなかった。
あの日、友美が伝えたかったことを。
そして、本当の悲しみを。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます