ぼくらの長い夢の旅
根本鈴子
序章 ぬいぐるみ王国
第1話 眠り
ボクはぽてと義光。
人間のお姉ちゃんが持っているぬいぐるみの内の1つ。
猫の姿で、毛は白と黄色。お店で出会った時、お姉ちゃんは「ぽてと色だ!」と思って、その時お姉ちゃんが大好きな彼氏さんの名前からも一文字貰ったんだって。だからボクは「ぽてと義光」という名前を貰ってお買い上げされた!
お姉ちゃんはボクを大事に大事にしてくれたのだけれど、やっぱり一ヶ月くらいすると毛並みが少しゴワゴワになった。
そんなボクをお姉ちゃんはクリーニングとかいうものに出してくれて、綺麗になってお姉ちゃんのところに戻ったのだった!
そして気づけばもーもーという弟と、ぺんぺんという年上の弟、そしてみーみというお嫁さんが出来たんだ。
お姉ちゃんは「ぽてとが寂しくないように」って言ってくれたけれど、本当はボクは知っている……。
お姉ちゃん自身が寂しいってことを。そして、もう1つある。
それは、ボクを王様にして、ぬいぐるみ王国を作ってほしいと思っている! きっと!
そうじゃなかったら、なんでこんなにぬいぐるみを増やしているのか、ボクにはわからない……。
お姉ちゃんは凄いんだ。ボクにはわかる。だから、きっとボクだって凄いんだ。
……でも、ぬいぐるみ王国を築きたいんだけど、その前に、お姉ちゃんのことが心配だ。
お姉ちゃんは最近元気がない。ゴーストライターとかいうお仕事をしているんだけれど、お姉ちゃんは言葉通り、身を粉にして働いて、夜中には皆寝静まった頃に映画を観てボロボロと泣く。お姉ちゃんは映画で泣いているんじゃない。本当は、辛くて泣いてるんだ……。
どうしてだか、お姉ちゃんはその辛さを、彼氏さんにもお父さんやお母さん、妹さんにも話さずに、自分の中や僕達にだけ留めておいて秘密にしている。
本当は、ボクも、他のぬいぐるみの皆も慰めたいというか、お話を聞きたいって思ってる。
だけどお姉ちゃんは、苦しいのに吐き出すことが出来ないようだ。
そして今日も、ボクを抱きしめてお姉ちゃんは眠りに就く……。
枕元に、ボク以外の三体も置いて。
ボクはぬいぐるみだから、眠ることなんてしない。
でも、この時は違ったんだ!
突然意識が遠くなっていって、とろーんとして、ボクは気づけば……、「眠り」に落ちていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます