世を儚んだ友人がエルフになってファンタジー世界で私を脅迫するんですが
ゑ曽とがりねずみ
〜 Prologue 〜
あれは数年前のやけに暑かった夏の終わりだった。
割といつも、何となくベタつく潮風が吹き続ける
その上、毎年夏になると更にこの町特有の油っぽい魚介臭が
そんな街で久々に会った高校時代の同級生から飛んでもない話を聞かされた。
結婚して内地で暮らしてたはずの
はっ……!?
降って湧いた話に脳ミソが追いつかない。
「え、何、ソレ……?」
「何って、アンタ知らなかったの?」
「知らないも何も、最近特に連絡もなかったし……」
「アンタら仲良かったんじゃないの?」
その呆れたような相手の言葉に、私は思わずぐっと言葉に詰まる。
「ワタシも
彼女が下にズレた細いフレームの眼鏡を指先で揺すり上げながらそう言い淀んでいるのを見て、ある光景が私の脳裏にフラッシュバックする───
その時は別の友人も同席していたので、必要以上に
まさか───
私は目の前が真っ暗になる心地がしていた。
そんな私の様子を見て、眼鏡の同級生は何かを察したように口を開いた。
「……まぁ、
華田
本人達から遠縁に当たると聞いてはいた。
しかし私は全くそれどころではなく、ただ
意味が、判らない。
言葉にならない色んな感情が胸の奥底で渦巻き、足元が歪んで晩夏の街並が
冷たい汗が身体中から吹き出し、ぐゎんぐゎんと回り始める景色に、
キーンという
貧血だ───
私は小さい頃から虚弱で、朝礼の体育館でよく倒れていたクチなのだが、極度のストレスを受けた時でも同じような状態になる事があった。
今回のは間違えなくそれに
そんな私の様子に気づかずポニーテールに眼鏡女子の同級生は、たすき掛けのバッグの中からゴソゴソと何かを探すのに真剣だった。
それを横目に、テレビの砂嵐のような視界が
いや、倒れてるバアイじゃないっつーのに……!
遠くの方で眼鏡の同級生のくぐもった声がしているのが判ったが、狭くなってゆく視界と意識に自分ではどうしようも出来ないでいた。
里和ちゃん、何で……?
『か……、き………か、づ……き………』
沈んでゆく意識の奥底から、湧き上がってくるようなか細い声が聞こえてくる。
『
───
けれど私の名を呼ぶその声は、先程まで話していた眼鏡女子の同級生とは確実に違う
でも確実に聞き覚えのある、ちょっとキンキンするようなソプラノの声。
『香月………忘れて、ないよね………?』
えぇ……?
な、何を………何が!?
『忘れたなんて、言わせないよ………!』
そんな叫びにも似た
すると、目の前に生まれてこの
淡い
そして、月の光を凝縮したかのような輝きを放つ流麗な
コレって、
その神々しいまでに白く発光する現象に圧倒され、私は
すると、そのエルフらしき美少女は
次の瞬間───
その杖は空を斬り、私の胸に深々と突き立てられていた。
………えっ!?
余りに一瞬の
どくん………!
突き刺さった杖に、胸の中で冷たく重い質量を受けたまま自分の心臓が大きく一度脈打った。
だが、それきりだった。
胸から大量の血液が
そして、口からも───
あれ、何で………こんなコトに?
全く何の事か判らないまま、美しいエルフに刺し
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