この小説の執筆者です。全てをお話しします。

芳乃 玖志

実はタイトルとキャッチコピーを考えた時点では中身は何も考えていませんでした。

「この世界の創造主……いえ、この小説の執筆者です。全てをお話しします」


 そんな放送が始まったのはお昼時、12時丁度のことだった。


「私はカクヨムに、そして『KAC2024~カクヨム・アニバーサリー・チャンピオンシップ 2024~』に小説を投稿している一人の創作者です。この賞に投稿を始めたのは、普通に小説を投稿しても全然読まれないので何とかして読者を増やしたいと考えていた時に、賞に投稿すれば読んでくれる人も増えるんじゃないか?と思いついたからです」


 その放送の独白は続く。


「また、今まで宣伝も特にしていなかったのですが、この賞に投稿するようになってからはX(旧Twitter)でも宣伝を始めました。それも全ては読者を増やしたかったから……しかし、全然読者は増えませんでした。」


 仮にもこの世界の創造主がそんな悲しいことまで話さないで。と思ったがツッコもうにも相手の姿が見えないので出来ない。


「まだKAC2024は半分残っているとはいえ、このまま普通に投稿を続けても読者増えそうにないな?と気づき始めました。なのに私にこれ以上できることは特に思いつきません。手詰まりです」


 手詰まりなの早くない?もっと他に出来ることあるだろ?

 周りからザワザワと声が上がりだす。


「ですが、ここで私は逆転の一手を思いつきました、それがバッファローです。第一回のお題にもなった『全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ』という出オチネタ、あれです。あれを再利用するのです」


 出オチとか言ってやるなよとツッコムべきなのかもしれないが、それ以上にその単語に嫌な予感がする。


「確かに一度は私も『全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ』というお題で小説を書きました。でも、あの小説では素材の味を全然上手く生かせていない。バッファローが舞台装置に過ぎず、何も薙ぎ払っていませんでした」


 嫌な予感が加速する。


「そこで、この現代を舞台にした普通の世界に『全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ』を解き放ったら面白いんじゃないか?という考えが浮かんだのです」


 そんな平凡な発想しか出て来ないからお前の核小説は読まれないんじゃないか?と誰かが呟いていた。

 自分も同意見だが相手に聞こえるわけもないし、なにより言葉の内容が不穏すぎてそんなことを指摘する余裕はなかった。


「では、放送はこれで終わります。みなさんは何とかしてこのバッファローの群れから生き延びてくださいね!」


 その言葉とともに、どこからかドゴドゴと何が走る音と大音量の破壊音が近づいてくるのが聞こえてきた。これは、放送の言葉が正しいのならバッファローの群れなのだろう。

 嫌な予感が当たってしまった。どうやらこの世界はバッファローの群れによって滅ぶ運命のようだ。


「あっ、決して『はなさないで』というネタで面白い話が思い浮かばなかったわけじゃないんだからね!!ただタイトルを思いついちゃったから、なんとかしてこのタイトルで話を書きたくなっただけだから!!」


 そんなことまで赤裸々に話さないで。そんなツッコミはバッファローの群れに飲み込まれて消えて行ったのだった。

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