午後4時 その光で

 午後4時

 慶彦は学校内のとある教室にいた。そこは慶彦の所属する部活用の空き教室。そこで慶彦は部活動に励んでいた。

 といっても、雑談メインの部活動としての活動自体やっているのか怪しいラインの部活動である。

 部活動名『ざつだん部』

 どこぞの男、直也が慶彦他1名を巻き込んで無理やり入部させられた、直也発足の部活動である。

 この部活はその名の通り、雑談をする。ただそれだけ。

 それ故にこの部活動を発足するのに大変な苦労をした。

 活動目的とか、部員確保とか、顧問とか……。

 直也がどうしても! といって先生に土下座していたのはよく記憶に残っている。

 そんな経緯で発足した部活、ざつだん部。

 悲しいことにこの教室にはまだ慶彦しかいないため、部活動をしていると言いながら堂々とプラモを組んでいた。というか、部活動中の慶彦はほとんどこれである。

 1人寂しく活動をする慶彦。教室にはパーツを切る音が何度も悲しく響いた。

 パチパチとプラモを組んでいき、胴体部分が完成した瞬間、教室のドアが開かれる。

 パチッとパーツをはめた音とドアを開けた時のガラガラという音が見事に重なる。

「こんにちは〜」

 小柄な1人の少女。それは直也によってこの部活に入らされた被害者の1人、向日葵だった。

「よっ」

 挨拶を交わし、葵は慶彦と対面する位置に座る。

 葵は背負ってきたカバンを開け、タブレットを取り出す。

 それに遅れてタブレット専用のペンも取り出し、それで何かを描き始める。

 端的に言えば、絵の練習である。といっても、現時点で相当の画力の持ち主である。

 前に絵を描いているところを見させてもらった慶彦は、あまりの上手さに感嘆を漏らした。

 まるで画面上のキャラが動いているかのような躍動感溢れるイラスト。それが彼女の描くアートであった。

 パーツを切る音とペンとタブレットの液晶が擦れる音。

 お互いがお互いの世界に没頭し数分後、ふいに葵が口を開く。

「慶彦君、指輪してたっけ」

 絵を描きながら葵は質問する。

 その質問は深淵と出会い、新学年になってから初めてされる質問だった。

 手元にある些細な変化。葵はそれにしっかりと気付いていたのだ。

 慶彦はそういえば、といった様子で自らの手にはめられている指輪を見つめ、答える

「最近はめた」

 簡単にきっぱりと答える慶彦。

 もしこの状況下に直也がいたのなら、この指輪に関しては適当に流そうと思っていたが、今教室にいるのは慶彦と葵のみ。

 別に指輪1つで面倒事を起こすような奴でない葵には、きっぱりと断言してもいいと思ったのだ。

「…じゃああれ、結婚した?」

「してない」

 結婚という単語を聞き動揺しかける慶彦。けれどなんとか動揺を抑え、冷静に返答する。

 第三者から見れば普通でいつも通りの慶彦。実は心臓がバクバク鳴っているというのは秘密である。

「てか、なんで結婚に行き着くんだ」

「指輪は結婚の証」

「そういう代物か?」

「そういう代物」

 きっぱりと言われる慶彦。そこには価値観の違いと主観が混じっていた。

 左手にはめられた漆黒に輝く指輪。

 慶彦にとって、それは契約の証。葵にとって、それは結婚の証。

 これからの生活でより指輪の話題が出た時は気を付けようと感じた。

 会話相手が葵で良かったと、慶彦は心から思った。これで相手が直也だったら本当にどうなっていたか、想像もしたくない。

 と、その時に慶彦はあることを思いつく。見られたくないなら外せばいい、と。

 実際、1番効率の良い隠し方がそれだった。

 はめていなければ誰かに見られることはないし、バレた時の対処もしなくていい。端的に言えば楽だ。

 慶彦は指輪を眺める。

 深淵からほぼ勝手に契約させられて左手にはめることになった指輪。実はこの男、この指輪を取ろうとするのは初めての試みである。

 右手で指輪を引っ張る。けれどまったく取れる気配がない。むしろ力を加える度にどんどんと取れなくなっていっている気配すらある。

 力を加える方向を若干変えたり回転させながら引っ張ってみたりと色々したが、まったく取れない。

 流石は深淵、闇の存在なだけある。

 深淵の行った契約の凄さを痛感し、指輪を取るのは諦める。手が痛くてたまらなかった。

 ちくしょうと思いながらプラモ制作に戻る。なぜだか負けた気分の慶彦。本当になぜだろう。

「ん、もうすぐ完成」

「俺はまだ道のり遠いな」

 ふいに経過報告をする葵。慶彦もそれに便乗して経過報告をする。

 慶彦は今ちょうど頭部が完成したところ。驚くほどに造形が良く、慶彦は軽く感動していた。

 折角である。区切りもいいし、と思い慶彦は葵のイラストを見に行く。

 さてどんな出来だろう。

「うおっ。すげーなこりゃ」

 とんでもないくらいの出来だった。

 タブレットの画面を占拠するように立つ幹部のような少女。全体的に赤い服を纏い、背景では爆発やらなにやらが起こっていた。

「過激派系。いいでしょ」

「いいな」

 細かい影を加えながら葵は言う。魅力的な絵を前に、慶彦は無意識の内に肯定していた。まさかこれが絵の力とは……。末恐ろしい。

 ほぼ完成しているようにしか見えない状態の絵に少しずつ影が追加されていく。

 その様子を後ろからずっと眺める慶彦。気づけば夢中になっていた。

 それから数分後。

「完成。いや〜疲れた」

 タブレットとペンを机に置き、葵は脱力する。

 タブレットの画面上には先程よりもより洗練されたイラストが表示されている。

 とんでもない躍動感であった。

「お疲れ。すげー魅力的だな」

「私が?」

「イラストが」

 葵はふんっと、ふてくされたような表情をする。真実は時に地雷となることもあるのだ。

 慶彦がやべっと思った瞬間、教室のドアが開かれる。

 そこから現れたのは直也だった。

「よう! 来たぜ!」

「よっ」

「ほ〜い」

 適当に挨拶を交わし、直也は教室の空いている場所にカバンをドスッと置く。とんでもなく中身が重そうである。

 何持ってきたんだと慶彦は内心で思いながら椅子に座る。

 あとで上手く葵からイラストをダウンロードさせてもらう方法を慶彦は考える。

 葵の描くイラストはそれほど魅力的なのだ。もちろん本人に言いはしないが、葵本人も十分魅力的である。

「そういや、この教室に来るのも久々だな」

 直也が呟く。

「まぁ、言われてみればそうだな」

 春休み期間中は面倒くさいからという理由で活動はせず、新学期が始まって今日、久々にこの教室に来たのだ。部活動をするために。

 そう考えれば、確かに久々であった。

「新入部員は来るかねぇ〜」

 葵がのんびりと話す。

「入部せずとも、見学にだけは誰か来て欲しいな」

 この部活動を設立した時に書いた部活動名の書いてあるボードを見ながら直也が言う。

 控えめな望みであった。

 しみじみとした空気感になってきたその時、慶彦はあることを思い出す。それは深淵に関すること。あの日以来、まったくといっていいほど元気のなくなった深淵のこと。

「そういや、1個聞きたいことがあるんだが……」

 そう言って慶彦は2人に意見を求めるべく、言葉を連ねる。

「女子が元気ない時ってどうすればいいんだ?」

 深淵の存在のことから説明するのはかなり面倒だと思った慶彦は、上手い具合に言葉を選んで相談する。

「う〜ん、元気がない時かぁ〜」

 葵が腕組みをしながら思案する。直也もう〜んと悩みながらも考えてくれている。

 女子、もとい深淵を元気にする方法。

 あの事件が起こった後、真夜中になるまで散々考えてみたはいいものの何の案も思いつかず、今日ここにいる慶彦。

 このままでは埒があかないと危機感を抱き、今こうして慶彦は相談しているのだ。

「なんで元気がないかによると思うかな」

 葵が口を開く。

「元気のない原因ってことか」

 直也が葵の言葉に付け足しのように加える。

「原因………大切な人と、喧嘩しちまったみたいで……」

 突如現れた少女、暗黒。彼女との口論により深淵は納得しつつも、それから元気がなくなっていったのだ。

 あの時言われた言葉。慶彦は今でも覚えている。

『現実を見るのが、怖いよ』

 あの深淵から想像も出来ない程弱々しく、虚弱に見えたあの時の深淵の表情。

 喧嘩しただけの一言で表せるようなことではない。けれど、慶彦にはこう言うしかなかった。この理由もまた、深淵という人間界にとってイレギュラーな存在というのが説明の邪魔をしていた。

「喧嘩が原因なら簡単だよ。仲直りさせればいい。これで万事オッケー」

「仲直りはちょっと違う気がするんだ。もっとこう、1人で立ち直れるような……」

 せっかくもらった葵からの提案。けれど慶彦はそれを否定する。仲直りが原因ではなく、また何か、なんというのだろうか。慶彦は最適な表現が思い付かない。

「じゃああれだ、えっ〜と…そう! 叱咤激励。これならいいだろ」

「う〜ん」

 イマイチそうな慶彦の反応。これもまた最適解ではなさそうである。

「なかなか難しいな」

 直也が呟く。意外にも解決案を考えるのに苦労し、葵も直也同様、難しそうに悩んでいた。

「やっぱムズいよな。俺もいい案が思い付かないんだ」

 皆悩み、頭をフル回転させ思案する。彼ら3人は今回のような場面に出会ったことはない。この経験のなさが、悩んでいる理由の一大原因であった。

 静かな教室。聞こえる音は大空を飛ぶ鳥達のさえずりのみだ。

 と、その時

 ガシャーッ!!

 勢いよく教室のドアが開かれた。

「あんたら! 見なさいよ、これ!」

 ひとみが突如として教室に現れ、慶彦達にある紙を見せつけてくる。

「なんだこれ……廃部手続き……は!? なんなんだこれ!」

 1番近くにいた直也が紙の内容を見て絶叫する。

 それには廃部手続き同意書と書かれていた。内容もその名の通り、遠回しに廃部手続きしろ、というものだ。

 丁寧に書かれた文章からこの部活動を潰したいという謎の圧を感じる。そんな1枚の紙。

「どうするつもりよ。これ」

 ひとみが質問してくる。呆れたような顔をしていた。

 というのもそのはず、この部活動にはその顔をされるほどのことをしてきているのだ。いや、厳密には、そんな活動内容なのだ。

 無茶して作った部活、それがざつだん部。そしてその活動内容は雑談をするだけ。もしこれが一般的な部活動ならば、これに追加で月1、または年1で大会に出るなり賞に応募するなりをするのが普通だが、この部活動にはそれがない。そう、それがないのだ。簡単に言えば活動実績のない部活動。活動実績がない部活動を続けさせてくれるほど、この学校も甘くない。目的がないなら他でやれ、と言った感じである。

 しかし直也による必死の末、この部活動の発足を許可してしまった以上、そんな簡単に廃部させる事は出来ない。

 しかし今、俗に言う新生活という区切りの時期。そして学校では学年が変わったこのタイミング。それを見計らって、教師陣はこの紙をこの部活動に提示してきたのだ。

「こんなもん同意してたまるか! バラバラにしてやる!」

 紙を奪い取ろうとする直也を上手くかわし、ひとみは紙を自分の手元から離さない。謎に慣れた手つきだった。

「ちなみに、顧問はもう同意してるわよ」

「は!? あのババァ、ふざけやがって」

 よく見れば、顧問印と書いてある場所にハンコが押されていた。

 顧問でさえも、この部活動を潰す気である。

「ちくしょう! どうすりゃいいんだ」

 声を上げながら必死に廃部を回避する方法を模索する直也。その目は、本気でこの部活動をこのまま存続させたいという意志を感じる目だった。

「なぁ、これなんとかならないのか?」

 とりあえず、といった様子で慶彦はひとみに質問する。なんとなくで嫌な予感がするのは気のせいだろうか。

「なんとかする方法。1つだけあるわよ」

「来た! なんだそれは! 教えてくれ!」

「活動実績」

 ……場の空気が、一瞬にして凍りついた。活動実績。それは彼らにとって成し遂げることが非常に困難なもの。

 日々積み重ねているものがない。そもそも実績を得らえるようなことをしていない。そんな彼らに突然、活動実績を得なさい、と言われても出来るはずがなかった。

「……こりゃリアルにまずいな」

 直也が冷静に呟く。どうやら、ふざけている場合ではないと本気で危機感を抱き始めたようである。

「これ、本当に廃部する流れじゃない?」

 葵がそんなことを呑気に呟く。冗談じゃないと慶彦は思った。こんなしょうもない部活動でも、思い入れのあることは確かだ。そんな簡単に潰されて、まぁいいかとは絶対にならない。

 全員が黙り込む。関係のないひとみまでもが、この場の空気を察してくれていた。

「活動実績………あっ!」

 直也がふいに手を叩く。なにやら思いついたらしい。

 まさに勝ちを確信したような顔。確実にいいアイデアが思いついた様子だ。

 直也は葵の元に行き、彼女に頼む。

「活動実績のために、絵を描いてくれ!」

「はえ?」

 葵は疑問に思う。なぜ自分のイラストを直也が求めるのかを。

 それらも含め、直也は簡単に説明する。

「葵の絵は上手い。だから何かの大会に出せば、きっと何かしらの賞が取れる!」

「なるほど、いいね。それ」

 葵が理解し、サムズアップする。頼りがいがあるのかないのか分からない表情だった。

「決まったな。頼むぜ、葵」

「任せんしゃい。エロイラスト描いたるよ」

「それは勘弁してくれ」

 と、とりあえずで決まった活動実績を得られそうなチャンス。このチャンスを物に出来なければ終わりだということは内緒である。

 緊張というものは自身のパフォーマンスに大きく影響するものだ。ここで下手に葵を緊張させれば、活動実績を得られない可能性も確実に上がってしまう。それ故にこのことに関しては忠告しない。

 まぁ、そもそも応募出来る大会があるかどうかの方が問題の気がするが…。

「一段落したらしい、慶彦借りるわよ」

「は?」

 一段落もなにも、そもそも何もやっていない慶彦。面倒事があるのなら早く言ってほしかった。……面倒事だと決まった訳ではまだないが。

「ちょっと待てよ。なんで慶彦連れてこうとすんだ?」

「ざつだん部の部長に、お呼び出しがかかってるのよ」

 前言撤回。確実に面倒事確定だ。行きたくないと慶彦は思った。

 直也が作った部活動、ざつだん部。その部長(直也にやらされてなった)慶彦。こういうことがあるから、慶彦は部長が嫌だと言ったのに、直也が勝手に部長の欄に慶彦の名前を書いたのだ。

 慶彦は直也に視線を向ける。見事に目を背けられた。

「ほら、早く来なさい」

「うおっ」

 腕を引っ張られ、半ば強引に廊下に出される。そのまま、ひとみは1人勝手に歩き始め、それに引かれる形で慶彦も歩き始める。慶彦は憂鬱な気分になってきた。

「どこ行くか分かる?」

「どうせ職員室だろ」

「大当たり。流石、勘はいいわね」

「誰でも分かる」

 廊下の窓から日がさす。優しく照らす廊下を慶彦とひとみは2人で歩いていく。この状況に至るまでの原因を知らない人から見れば、完全にカップルのそれであった。

「あんた、あの部活に入って後悔してないの?」

 突然、ひとみがそんなことを聞いてくる。

「……別に後悔はないな。あるとすれば部長をやらされてることくらい」

 正直に慶彦は答えておく。だが、ひとみとの会話は注意しなければいけない。どこから急に不意打ちが来るか分からないからだ。例えるならば、あれ? お前その日遊べないって……、的な感じで放たれる不意打ちの上位互換である。

「ふ〜ん。後悔はないのね」

 ひとみがほうほうといったような顔をする。よく分からない奴だと慶彦は思った。

「お前はどうなんだ? 風紀委員長」

 気になって理由を聞く。実は彼女、クラス長をやりながら風紀委員長なのだ。おそらく、そういう立場だからこそ、ひとみは慶彦達の前に現れたのだ。風紀と廃部に関係があるのかは分からないが。

 それに、ひとみと話す機会は意外と少ない。こういう機会に、折角だから話しておきたいと思ったのだ。

「後悔はないわよ。私はやりたくて選んだんだから。この立場を」

「こりゃ将来有望だ。応援してやるよ、お前みたいのがきっと政治家になったほうがいい」

「ごめんなさいね。私にはもう夢があるの」

「夢?」

 慶彦は聞き返す。夢。それは自分のなりたい将来の姿。人はそれに向かって生きていく。けれど、夢を持っても叶えられない人がほとんどだ。だからこそ、人は現実を見て将来にある自分の姿を変え、その時に夢を捨てる。夢とはそんなものだと、慶彦は思っていた。

 だからこそ、聞き返した。無理だと分かっているものをいつまでも無理に追い続けるのは、あまりにも滑稽に思えた。

「そう、夢よ。私には叶えたい夢があるの」

「その夢って?」

 ひとみはジト目で慶彦を見て

「なんであんたに言わなきゃならないのよ」

 速攻拒否された。それも仕方ない。夢を簡単に誰かに話す奴はいないものだ。

「……まぁ、言うなら大きな夢よ」

 前を見ながら、ひとみは言った。その目は、希望で満ち、輝いていた。

「夢か……」

 慶彦はふと考える。自分にも、しっかりと夢はあった。けれど、諦めてしまった。高いハードルに現実という壁。それを超えられるとは、慶彦には到底思えなかった。けれど、なぜだが不思議と夢をもう一度見てもいいと思った。希望は、持っていたいと思った。

 今の、慶彦の夢。

 適当にそれっぽく生きてきた高校1年。つい最近山に行って、希望を砕かれたばかりだ。その代わり、慶彦には不思議な少女がそばにいることになった。

 深淵。初めて会った時、あんなにも元気だった彼女。けれど今は、まったく元気がなくなってしまった。まるでそれは、枯れたヒマワリの様だった。

 夢。今ある慶彦の夢。それはちっぽけで、自分ではどうしようもないかもしれないこと。それでも、慶彦は叶えたいと思った。

 今ある慶彦の夢。それは深淵を笑わせること。もう一度、彼女の元気な姿を見ること。

「よし」

 慶彦は拳を握る。自分に出来ること。自分にしか出来ないこと。それを、やりに行こう。

「悪いひとみ、俺用事思い出した」

「は? 何言って……」

 ひとみが振り返った時には、慶彦はもう反対方向へと走り始めていた。

「なんなのよ。あいつ」

 ひとみは慶彦の後ろ姿を見ながら悪態をつく。突然走り出し、まるで逃げ出したように廊下を走る慶彦。

 本来ならば追いかけて捕まえるが、今回はそんな気になれなかった。初めてみる慶彦のあんな姿。あの姿を見たら、なぜか止めるのは野暮な気がしたのだ。

 1人廊下に取り残されるひとみ。その姿には窓からの光も相まって、とんでもなく哀愁漂っていた。

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