おててつないで
常闇の霊夜
なかよくかえろ
神社、路地裏、森の中。
古今東西あらゆるところに悪霊と言う物は潜む物。
そして何より、迷い込む者が後を絶たない。また今日も、迷い込んだ者が一人……。
「……ここどこ?」
少年……。と言うよりもやや幼めな彼は、神社で遊んでいた所何故か祭りのを行っている空間に迷い込んでしまっていた。一体どうなっているんだと思っていると、少女に声をかけられる。
「あなた、まいご?わたしといっしょにいこ!」
「え?」
「ほら!て、つないで!」
「う、うん……」
彼は言われるがまま手を取ると、そのまま祭りを少女と楽しんだ。
始めこそ理解できなかったが夢だろうと思ったのか、しばらく楽しんだ後、そろそろ夜ご飯の時間だと帰ろうとする。
「もうそろそろかえらなきゃ……」
少女はそれを聞いて少し寂しげな表情を浮かべるが、すぐに少年の手を取ると歩き出す。
「こっちがでぐち。……いちおう」
そう言って二人は手を繋いだまま歩き出す。
「でもここはとってもまよいやすいから、てをはなしちゃダメだよ」
「わかった……」
そう言って森の中を突っ切っていく少女。流石の少年も本当にこの道で会ってるのか?このまま進んで大丈夫なのか?と心配になってきた。それでも手は離さなかった。
「ほら!でぐち!」
「ほんとだ!」
それは大きな鳥居だった。確かにここから入って来たのだと少年は思い出し、そして二人は鳥居をくぐろうとする。だが少女は少年が先に出たのを見ると手を放す。
「もう大丈夫でしょ?」
「え?うん……」
「……もう、来ちゃダメだよ?」
「うん……?」
遠くで母の声が聞こえた少年は振り返り帰路につこうとする。その前に少女の姿を一目見ようと振り返ると、そこには何もなかった。
「……え?」
文字通り。鳥居も少女も何もかも。何も無かったのである。
「……え??」
良く分からぬまま時は流れ、後になって高校生になった少年はある話を聞いた。
昔、彼が遊んでいた場所には大きな神社があってそこには神様が祀られていたのだが、今や壊されデカいマンションが立っていると。もはやそこには何もないと。
「……じゃあアレは」
そう言いかけたところで言葉を飲み込む。仮にはなすなと言う少女の言葉が、もう一つの意味を含んでいたのなら……。
「俺の心に秘めておこう」
と言う訳では無い。単にあの思い出を独り占めしたいだけなのだ。彼は。
おててつないで 常闇の霊夜 @kakinatireiya
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