雪の降る日に君は

@himagari

第1話

 風の無い街に雪が降る、静かな夜だった。


 街行く人も居なくなって、私だけが街灯の照らす薄暗い街を歩いてる。


 11時にもなると灯りも減り、雪を照らす人の温もりも消えていくようだ。


 サクッ、サクッと耳心地のいい足の音色を聴きながら独り歩き、家の前に辿り着いた。


 二年前に事故で他界した両親が残してくれた築四年の一軒家。


 私が成人すると同時に建築した家には、家族との思い出はそれほど染み込んでいない。


 それでもこの家で起きて、見て、出て、過ごす時に両親の事を思い出して辛くなる。


 莫大な慰謝料と両親の遺産を使えばこの地を離れて過ごす事も可能だっただろう。


 だけど私は僅かばかり残っている両親の思い出を求めて毎日この家に帰りつく。


 今日もいつも通り私の家へと辿り着き、いつも通りに家の中に入ろうとした。


 そしていつも通りでは無い一つの影に気がついた。



「……何をしているの?」


 私はその影に問いかける。


 問いかけられた影はゆっくりと私に視線を向けた。

 

「すみません、少し雪宿りを」


 その影は囁くような声で私に答えた。


 セーラー服の上に厚手のガウンを羽織って、マフラーを口元が隠れるほど深く巻いた一人の少女。


 これが雪の日に出会ったこの少女、雪乃との初めての出会いだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る