第5話 シャノン、同情する

 私はイナミ

今、宿にいる。


「イナミお姉ちゃん変身して!」


「マジックアンドチェンジ!」


「もう1回!」


 今、シャノンの頼みで何回も変身を繰り返させられている。

どうやらシャノンは私の変身シーンが好きみたいで何度も見るのが楽しいみたいだ。


「そろそろ教えてよ」


「何を?」


「あら…」


 シャノンは自分が変身できて魔法が使えてサンダースパイダーと戦えた理由を変身するのを見せてあげたら教えてあげると言われたので今みたいに何度も変身してあげたが、その約束自体を忘れていたみたいだった。

シャノンが楽しそうだったから私的には良いのだが。


「変身したらシャノンがどうして変身できたのかとかどうやって魔法使えたのか教えてくれるって約束だったんだけど…忘れちゃった?」


 思い出してもらう為にもう1回その話を振ってみる。

私としてはシャノンのそういった面は気になるし、何よりそこからシャノンが光る箱に入ってた理由とかも知ることができそうだからだ。


「んー…なんかね?思い出したの」


「思い出した?」


「シャノン、昔なんだか戦ったことあるのを思い出しちゃってその通りに変身して魔法使ったらなんだか使えちゃって…」


 どうやらシャノンは以前にも変身して魔法を使った経験があるらしい。

だが、思い出したとなればそういったところの記憶があやふやなのだろうか?


「もうちょっと思い出せない?」


「んー…」


 シャノンが思い出そうとするが。


「分かんないや。忘れちゃった」


「そ、そっか」


 これ以上は思い出せないみたいだ。

無理に思い出させようとするのも無理があるのでこの辺までにしておこう。


「分かったよ。それじゃあそろそろ寝よっか。また絵本読んであげるよ」


「うれし〜あぁイナミお姉ちゃん!」


 何故かシャノンから声をかけられた。


「変身したまま読んで!」


「変身したまま!?」


 どうやらシャノンは変身したまま絵本を読んでほしいみたいだ。

恐らく変身したら私の声は変わるのでこの声で読んでほしいのだろう。


「分かったよ。読むからね」


 可愛いシャノンの頼みだ。

喜んで引き受けよう。


「昔々あるところに…」


 そうして私は絵本の読み聞かせを始める。

シャノンは私の変身した声が好きだからか楽しそうに聞いている。


 変身して絵本の読み聞かせをする魔法少女はこの世界に私以外いるだろうか?

そもそも宿の部屋で変身することはマジックステッキの動作確認以外したことがなかったので何気にシャノンがきっかけで新しい体験を今している。


「…はい。おしまい」


「…」


 読み聞かせを終えた後、シャノンは眠った。

シャノンの可愛い寝顔を見ながら変身を解除して私も眠った。


 翌日


「イナミお姉ちゃん!おはよう!」


「おはよう。シャノン」


 シャノンと私は起きた。


「お腹空いた」


「大丈夫だよ。買ってきてあるからね」


 私はシャノンに事前に買ってきた食べ物を渡した。


「ありがと〜いただきま〜す」


 シャノンは美味しそうに食べている。


「じゃあ私行ってくるから」


 この後、私はまた掲示板の依頼をこなすつもりだ。

そうでもしないと金が手に入らず、私もそうだがシャノンも生きていけないからだ。


「待って!シャノンも行く!」


「シャノンも?」


 何故かシャノンも行きたがる。

本来は依頼の最中にモンスターに遭遇したりする場合があるのでシャノンにはあまりついて来てほしくはない。


「イナミお姉ちゃんと一緒に行きたい!」


「シャノンはちょっとまだ早いかな…」


 やんわりと言ってあげる。


「やだ!行きたい!イナミお姉ちゃんと一緒が良い!」


 シャノンは駄々をこねる。


「…分かったよ。じゃあ一緒に行こっか」


 仕方がないので連れて行ってあげよう。

もし万が一シャノンに何かありそうだったら私が頑張ろう。


「決まり!」


 シャノンは行けることが決まったので喜ぶ。


「じゃあ選ぶよ」


 私とシャノンは掲示板まで足を運ぶ。

掲示板には色々な依頼が書かれている紙が沢山貼られていた。


「どれにしようかな…」


 今回はシャノンがいるので、できるだけモンスターに遭遇したりしなさそうな依頼を選ぼう。


「よし、これにしよう」


 建物の清掃があった。

これなら私もシャノンにもこなせれそうなのでこれにしよう。


「シャノン、一緒にお掃除に行くよ」


「行く!綺麗にする!」


 で、依頼の紙を剥がして清掃に向かった。


「では、この部屋をお2人で清掃、よろしくお願いします」


 担当者から何処を清掃すれば良いかを教えてもらった。


「はい」


「はーい」


 そうして私とシャノンは清掃を始めた。


「シャノン、向こう側お願い。私はこっちを綺麗にしていくから」


「分かった!」


 シャノンと2人で協力してきて段々と部屋は綺麗になっていった。


「ふー...こんな感じかな?」


「だね!」


 部屋は見事に綺麗になった。


「ありがとうございます。これどうぞ」


 そうして担当者から金が渡された。


「ありがとうございます」


 それを私は受け取った。

これで依頼は達成だ。


「2人で頑張ったね!イナミお姉ちゃんっ」


「そうだね。帰りに新しい絵本買いに行こっか」


 シャノンも頑張っていたのでご褒美に新しい絵本を買ってあげよう。

シャノンは私の絵本読み聞かせが好きなのできっと喜んでくれるだろう。


「本当に!?ありがとう〜」


 シャノンは絵本を買う話を振っただけで喜んでくれた。


 そして2人で本屋に入った。


「これください」


 私はシャノンに読み聞かせる絵本を購入した。


「帰って読もうね!」


 シャノンは今から楽しみにしている。


「そうだね。帰ってからね」


 で、そのまま宿の部屋に入った。


「寝る前にお風呂だよ」


「お風呂〜?」


「可愛いお人形さん浮かべて遊べるよ」


 お風呂に浮かせて遊べるおもちゃも買っておいた。

シャノンはどう反応するか?


「入る!」


 シャノンは私と一緒にお風呂に入ってくれるみたいだ。

よし、私の狙い通りだ。


 そしてシャノンの体を洗ってあげる。


「あわあわ〜あわ〜」


 シャノンは泡を見てはしゃいでいる。


「はい。あわあわ〜」


 私も泡で遊んでみる。

意外と楽しい。


「はい。ばしゃー」


「ばしゃー」


 シャノンについた泡を流してあげる。

ここもシャノンは楽しんでいる。


 で、私も体を洗って湯船に浸かる。


「ふぅ…温かいね」


「そうだね」


 シャノンは湯船に浸かりながらおもちゃで遊んでいる。


「イナミお姉ちゃんお話聞きた〜い」


 何故かシャノンが私に興味を示してきた。

今振り返れば私はシャノンについて聞いたがシャノンに私のことを話してなかった。


 あまり誇れる過去はないが勇者パーティーにいた頃の話をしてみよう。


「私ね、勇者パーティーっていうところにいたんだ」


「勇者パーティー?」


「そう。皆で色んなところを冒険して…」


 あまり誇れる話でもないし最終的には追放されてしまったので誰かに話したくなかったのだが、シャノン相手だからなのか勇者パーティーに入ってから追放されるまでの話を全てしてしまった。


「イナミお姉ちゃんにそんなこと言っちゃうなんて…そこの人たち酷い!」


 まさかのシャノンは同情してくれた。

シャノンは強いので私のことを勇者パーティーにいた皆みたいに見下してくるかと思っていたからこれは意外だった。


「いや、皆の力になれなかった私が悪いから…追放されたのは仕方ないことなんだよね…」


「イナミお姉ちゃんは強いって!その勇者パーティーにいる皆が分かってないんだよ!」


 シャノンは私を分かってあげようとしている。


「ありがとう。シャノン、元気出たよ」


「私はイナミお姉ちゃんを追放なんかしないから安心してねっ!寧ろ、一緒にいたいな」


 私の居場所はあった。

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