第6話

「今尾さん。もういいでしょう。ここまでばれたんですから鏡の秘密教えて下さい。」

大樹は興奮しながら言った。

「…わかりました。あのカガミには変わった力があります。それを知ったのは博物館に提出した後でした。私が博物館にカガミを出してから何故かあのカガミに引き込まれるようになったのです。それから毎日博物館に向かいカガミを眺めていた。そういう生活を一週間ほど。そしたら変わったことが起こったんです。カガミに映る顔が自分と違う顔になっていた。それからそのカガミが怖くなって博物館から持ち出して路地裏に捨てました。それからカガミの前には行きたくなることはなくなりました。ですが何故か胸の奥がざわざわするのです。そしたらカガミが見つかったって。

それから私は前の顔とは違うままで生活してました、カガミの前には行きたくなくなったので顔が戻るのではないかと希望を抱いていましたが、一向に変わりません。」

今尾は瞳に涙を浮かべながら話した。

「今尾さん、その顔を元に戻す方法はありますきっと。何か知りませんかおじいさんのことなど。」大樹は前のめりになりながら言った。

「祖父のことですか?祖父は私が生まれる前に亡くなってますから…

あっ!そういえば祖父は科学者でして熱心にカガミの研究してたと、祖母が言ってましたもしかすると何か関係があるかもしれません。」

「成程。科学と鏡の関係ですか。達也何か知らないか?」大樹は外の庭にいる達也に呼びかけた。

「科学は専門外だな。小学生か中学で習う状態変化ぐらいしか知らないな。」


「え!それだけかよ。確かに基礎の基礎で大事だけど」


「でも祖父はそういうことをやってたと思います。前に祖父の論文を読んだことがあるんですけどそこには究極の状態変化って書いてありました。確か、ここにあった気がします。」

今尾は立ち上がり奥の押入れに向かった。

「ありました。これです。」それは古びた紙で『究極の状態変化』とかいてある冊子だった。

「これお借りして良いですか?」大樹は立ち上がりながら言った。

「はいどうぞ。」


「大樹、今尾からもらった冊子ちょっと見せてくれない?」大樹は不安そうな顔をしていた。

「いいけど、お前専門外だろ。」


「だからだよ。わかんない奴が読むことで違った視点が生まれて。斬新な解釈ができる。

お前だって科学は詳しくないだろ。」


「お前よりは詳しいよ」


「そうかい、じゃあ尚更俺が読むよ。」そう言って達也は古びた冊子を読み始めた。

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