夜の店

椿 恋次郎

夜の店



「ハナちゃ〜ん、今日も良かったよ〜!股ボクの為に歌ってね〜ん♪」


肝井きもいさんも又来てボトル入れてネー☆」


 ここはカラオケスナック日々喜ひびき、オーナー兼ママの日比木ひびき 響子きょうこと女性キャスト二人で回してる小ぢんまりとした店だ。


「ハナちゃん、今日もありがとね。セクハラオヤヂの相手も大変でしょ?バイト代イロ付けとくワ」今日も響子ママはご機嫌だ。


「肝井さんは視線と発言が終わってるだけで触ってこないからまだ大丈夫ですよー」ハナちゃんの心は広い。


「いつも任せちゃってる私も悪いんだけどさー、それって普通にアウトよりのアウトよ?」もう一人のキャスト、ユメちゃんは辛辣だ。


「だけどハナちゃんはよく『離さないで Hold Me Tight』なんて曲知ってるわね、生まれてた?」自分の年齢は必死に思い出さない様にしてジェネレーションギャップを埋める努力を怠らない響子ママ。


「小学校の頃に人気アイドルがカバーしてたんです、だからカラオケ行くようになってから歌っても友達にウケが良かったですよ」流石常連客の間では歌姫と名高いハナちゃんだ。


「最後のサビが高いのよねぇ『忘れない、その名♪はなさないで☆ホーミータイッ』…あ゙〜出ないわ」セクシーなハスキーヴォイスがウリのユメちゃんなのだ。


「私も若い頃は歌えたのにねぇ、酒焼けしちゃうとダメね」ママさん、年齢を理由にするには若すぎ!昔出てた高音が出ないのは練習してないからだ。


「履歴書でご存知の通り本名は“井出さな”なんで『その名はな♪さな井出☆ホーミータイッ』って持ちネタが鉄板でした」うん、アレだ、残念な美人系ってヤツだね。


「チョ→ウケる、マジ草オーバーThe森だわ」ユメちゃん、無理しなくていいんだよ?


「そうそう、肝井さんも随分気に入っちゃてるわよね、最後に必ずリクエストしてくものねぇ」頬に添えた手が微妙に色っぽい響子ママ。


「あー、肝井さんには『話さないで、アホみたい』って歌ってますー☆」




 

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夜の店 椿 恋次郎 @tubaki_renji

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