22 いきなりハーレム展開?

勇太はルナに対して筋を通せたと思っている。


前世ルナとの違いも見えてきた。双子の片割れと接する感覚。


前世ルナに申し訳ないと思いつつも、どんどんパラレルルナを好きになっている。


ルナには、この世界ならではの言葉でプロポーズしてしまった。そのシーンもネット上に流れている。


あとなぜか、体育館裏での初キッスまで流れている。


誰が撮った・・


勇太は、高校では自分の評価は低いと思っている。


そんな中でも、ルナだけは守るつもり。


梓もいるが、学年も違うから問題ないようだ。


重婚ありの世界。だけど、特に何人も娶る必要も感じない。


今、勇太はルナの母親に挨拶したあと、ルナに駅まで送ってもらっている。そして駅近くでドーナツ店に入っている。


周囲の女性客が、スマホで2人の写真を撮ったりしているが、勇太は気にならない。


「勇太君、あのプロポーズのシーンだけど、ドッキリでしたでいいからね」


「ルナ、なんでそんなこと言うの?」


「ネットで話題の勇太君の相手が私じゃダメでしょ」


「こっちも大した男じゃないし、大丈夫だよ。いきなり痩せたから、ちょっと話題になってるだけだよ」


「えええ?その程度と思ってるの」


「ルナのお母さんにも挨拶したし、ルナさえ嫌じゃなければ、堂々と付き合ってよ」



ルナは赤くなった。こういう誠実さは、この世界の男性にはない。


母親に対して、堂々と挨拶してくれる姿を思い出した。


逆に勇太は、男子が希少な世界で良かったと心から感じている。


前世なら大事な娘に部活中にプロポーズした男なんて、ぶん殴られてしまう。


◆◆◆

帰路についた。


週末の激務を控える葉子母さんを休ませ、勇太と梓が晩ご飯を作る。


予定だったが・・・


勇太は家に帰るなり、困惑した。


梓が涙目で訴えている。横には葉子もいる。


「ユウ兄ちゃんひどいよ。私には手も出さず、放っておいて、もうルナさんにプロポーズしたんだね・・」


「え、手も出さずって・・。梓って妹だよな」


「違うよ。最近は妹のように可愛がってくれるけど、従妹だよ。結婚の約束したよね」


「・・なぬ」


「ユウ兄ちゃんのお嫁さんになるために、処女も守ってる。料理だって勉強したのに!」


勇太は把握しているようで忘れていた。


梓は従妹なのだ。それにこの世界では、意外に多い婚姻のパターンなのだ。


助けを求めるように、葉子母さんを見た。


叔母である葉子母さんは、紙の束を出した。


「勇太、9歳の頃を思い出して」


「えーと、あっ・・・」


パラレル勇太、9歳の秋。まだ生きていた実の母親、叔母葉子の前に梓を連れて行った。


「僕、梓をお嫁さんにするから」。間違いなくパラレル勇太の口から出ている。


その直後に、母と叔母に誓約書を書かされて、サインもした。


筆跡鑑定書等の法的な証明書まで20枚も付いている。


違約金は10億円と書いてある。パラレル勇太のサインまである。


亡くなった母の策略だ。


ここで回避しても、最終的な結果は見えている。


男女1対12の世界、恐るべし。


「・・はい、思い出しました。梓、こんな俺で良ければ、よろしくお願いします」


「嬉しい、ユウ兄ちゃん。ルナさんと3人で幸せになろうね」


ルナは1人目の嫁をルナ自身ではなく、梓を勧めていた。まさか、本当にそうなるとは・・。


「やっと勇太も話が通じるようになって、思い出してくれたみたいよ、梓」


「ユウ兄ちゃん大好き!」


抱きつかれ、パラレル梓にキスをされた。


勇太は背徳感がバリバリである。



前世で勇太が死んだ原因は、妹・梓の身代わり。そのことに悔いはない。


目の前のパラレル梓は従妹。それに妹とは、まったくの別人。


分かっていても、似すぎている。梓を嫁にして夜の営みをする自信は、今のところない。



勇太は、梓には評判が悪い自分のことで懸念があると言った。婚姻を引き延ばすための言い訳だ。


この世界は15歳で結婚できるが、籍を入れるのは梓の16歳の誕生日にしようと言った。


勇太は、梓は3月29日生まれと、しっかり記憶している。まだ時間はあるし、それまで梓の認識を変える努力をしようと思っている。


2人で承諾した。


実はパラレル梓の誕生日は7月31日。


勇太は、梓の生まれた年が前世と4年もずれているのに、なぜ誕生日が同じと思ったのだろうか。


パラレル勇太はパラレル梓の誕生日を忘れていたから、記憶の中にもなかった。確認もしなかった。所詮は勇太も、パラレル勇太と同じ程度のアホである。


入籍の日まで2ヶ月程度しかない。アホな勇太は、まだ気付いていない。


慕われているのはいい。だけど、またも勇太にパラレル勇太絡みの悩みができた。


「前世と瓜二つのパラレル人物って、俺の頭を悩ませるためにいる?」


呟きながら、勇太は法律をチェックした。この世界も前世と同じく、4親等のいとこからしか結婚できない。


安心した。前世の母の顔をしたパラレル葉子に迫られる心配はない。


しかし、歴史を見て背筋が凍った。


精子提供と人工授精が安定していなかった平成17年までは3親等、つまり叔母とも結婚は可能だった。


前世の母親と瓜二つのパラレル葉子に迫られていたら、間違いなく家出してだろう。勇太は青い顔をして考えている。

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