第53話 弟、ヒロインって少し変わっているね?
クロとパーティー会場に戻ると、入り口には姉とヒロインがいた。
思ったよりも険悪な空気感はなく、距離感が近いような気がした。
ひょっとしたら婚約破棄されても、冗談の対象相手が俺だったのがよかったのかもしれない。
「あっ、ダミアン様がきましたよ」
ヒロインが声をかけたことで、姉は振り返った。
「ダミアン……」
さっきより表情が暗かった。
やはりパーティー会場で何かされて外に出てきたのだろうか。
俺はクロの手を離して姉に近づく。
「姉さん何かされたの? また殿下に何か言われたの?」
俺の言葉に姉は驚いた表情をしていた。
また俺は何かやらかしたのだろうか。
「そんなことないわよ」
「ダミアン様に心配されて嬉しいんですよね」
ん?
ヒロインの言葉に俺は首を傾げる。
姉って気高くて強い女性だったはず。
さっきも婚約破棄されたことよりも、貴族としての立場や責任を優先していた。
そんな姉が俺に心配されて嬉しいのだろうか。
おっさんでは若い女の子の気持ちがわからない。
むしろ女心すらわからない気がする。
「静かにしないと怒るわよ」
「怒ったイザベラ様も可愛いですよ」
姉はヒロインを睨んでいるが、なんとも思っていないのだろう。
ヒロインのメンタル恐るべし。
幼い時の俺なんて、中身おっさんなのに初めはビクビクしていたからな。
成長した姉の睨みは昔より迫力がある。
「なっ!?」
でも彼女の優しいところを知ると、可愛いとすぐに気づくだろう。
それをヒロインもわかっている気がする。
「そういえば、まだ自己紹介していなかったですよね。姉さんの弟にあたるダミアンです」
僕がヒロインに挨拶をすると、なぜか目を輝かしていた。
「本当にそのまま成長してくれてよかったわ」
何かボソッと言った声は俺には聞こえなかった。
緊張しているのだろうか。
「ああ、すみません。フラワー子爵家のカメリアと申します」
名前からして花をモチーフにしたヒロインなんだろう。
髪の毛も薄いピンク色で可愛らしい。
「ダミアン様、そろそろパーティーも終わってしまうので早く戻りましょうか」
そんな俺に後ろから近づき、コソッとクロが話しかけてきた。
「ギュフフフ、クロも良い男になったわね。体格差もバッチリよ」
さっきまで目を輝かせていたカメリアはどこか霞んだ瞳で俺を見ていた。
突然の出来事に俺は時が止まった気がした。
あれ……?
ただ、頭上に選択肢は出ていない。
「私達も戻りましょうか」
瞬きを数回すると、元の顔に戻っていた。
本当に一瞬だったため、さっきの顔は見間違いだったのだろう。
「せっかくだから手を繋ぎませんか?」
「なんで私があんたと――」
きっと俺と姉が逃げ出した時の演出を最後まで演じた方が良いということなんだろう。
確かにあの婚約破棄が本当か冗談かもわからないからこそ、最後まで演出は必要だ。
「姉さんは嫌なんですか?」
俺は久しぶりに姉に向かってキュルルンビームを放つ。
前はまだ冗談でやりやすかったが、中身の年齢が40歳を超えてから恥ずかしくて封印していたからね。
「ダミアンが言うなら……」
俺がイザベラの手を取ると、なぜか反対の手はクロが握っていた。
「これでダミアン様は逃げられないですね」
「へっ……?」
「まだ、ダンスは始まってないですよ?」
「離してええええええ!」
クロは面白そうな笑みを浮かべて俺をパーティー会場に連れて行く。
「クロ×ダミアン最高じゃない。BLルートがこんなに間近で見られるとは思わなかったわ。みんなありがとう!」
そんな俺が見えないところで、カメリアは背後で手を合わせていた。
───────────────────
【あとがき】
「どっ……どうしたら破滅フラグが折れるんだ……」
ゆるふわキュルルンのカシューナッツが助けを求めているようだ。
▶︎★★★評価をする
レビューを書く
ブックマークする
「こっ……これは……!?」
選択肢の投票が行われた。
「★★★評価をよろしくお願いします!」
どうやら★★★評価をすると破滅フラグが折れるようだ。
「BLフラグは……?」
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