第20話 弟、一緒にお風呂に入る

「おい、本当にする気か……」


「だって汚いじゃん」


「俺は綺麗だああああああ!」


「うるさい!」


 俺は犬の頭をペチペチ叩きながらも、シャワーをかけていく。


 この国の湯浴みは浴槽と浴室が分かれているわけではないため、一度犬を洗ってからじゃないと一緒には入れない。


「やっぱり汚いじゃんか」


「うっ……」


 体から汚れが落ちていく。


 黒い犬だから汚れがただ見えにくいだけのようだ。


 シャワーを浴びると、どんどん水が黒くなる。


「なんでそんなに嫌がるんだ?」


「俺は水が嫌いなんだよおおおお!」


 どうやらただの水嫌いらしい。


 どこまでも犬っぽさがない犬だ。


 猫で水嫌いはよく聞くけど、犬も水嫌いがいることを知った。


 手に泡を乗せて、体をゴシゴシと洗うが中々泡が立たないほど汚れている。


 それでも何度か流して洗い直しすると、もこもこになってきた。


「泡犬の完成だ!」


「おい、俺で遊んでるだろ」


「えっ? そんなことないよ?」


「お前、性格悪いな」


「ふふふ、ダークウッド公爵家だからね」


 だって一人の時ぐらい偽った自分ではいたくない。


 それに大事な時はいつも選択肢で選ばれてしまう。


 俺の気持ちなんてあるようでないものだ。


 一通り綺麗にしたら、お湯をためていく。


 服を脱ぎ終えるとなぜか犬がオロオロとしている。


「じゃあ、僕も入ろうかな」


「俺は出るぞ!」


「何で出るんだよ! 一緒に入れば良いじゃん」


 俺はそのまま浴槽の中に入る。


 犬が逃げていかないように、しっかりと脚で挟めば問題はない。


 それに二人で入ればそんなにお湯を入れなくても済む。


 節約も兼ねているからね。


「おい、早く離せよ」


「だって暴れるじゃん」


 お湯がたまればあとはこっちのもんだ。


「ゆっくりお風呂に浸かろうねー」


「うぉ、やめろお……そんなところに触れる……はあああああん」


 頭から顎にかけて撫で回した後に、お腹や腰と少しずつ手を動かしていく。


 犬も気持ちいいのかぐでーんとなっている。


 元々実家では犬を飼っていたが、働くようになってから一人暮らしで実家に帰ることもなかった。


 久しぶりに犬と過ごす日々って幸せだな。


「よし、出ようか」


 満足した俺が浴槽から出ると、湯船に犬は浮いていた。


「責任取れよ」


 うん?


 責任って何の責任だろうか。


「死ぬまで一緒だね」


「ふん、仕方ないな」


 どこか照れているのかそっぽ向いていた。


 それよりもまだ浴槽から出てこないのだろうか。


 体を拭き終わっても、しばらくは湯船に浮いている。


「出てこないの?」


「力が入らねーんだよ!」


 どうやら酔ってしまったようだ。


 体を持って勢いよく引っ張り出す。


「あっ……」


 犬の体が大きいからあまりにも勢いで引っ張るため、俺は足を滑らせた。


 そのままの勢いで俺達は倒れていく。


――ドン!


 俺は再び尻もちをついてしまった。


 本当にこの体って鈍臭いな。


 だが、この音に反応した人がいた。


「ダミアン大丈夫か?」


 扉を開けたのは兄のオリヴァーだった。


 あの時鍵を閉めて追い出したはず。


 それなのに今部屋の横にあるバスルームにきていた。


「あっ……」


 段々とオリヴァーは顔を赤く染めていく。


 バスルームが熱かったのかな。


「兄しゃま助けて」


 それでも兄に助けを求めるしかなかった。


 のぼせた犬は俺の上から動けないようだ。


 犬を転がして、俺も引っ張ってもらう。


 感覚的には芋掘りをしてスポンっと抜ける感じだろう。


 俺はそのまま勢いでオリヴァーの上に乗ってしまった。


「うっ……」


「兄しゃま?」


「うわああああああ!」


 オリヴァーは急いで俺を引き剥がし、部屋を後にする。


「兄しゃま大丈夫かな?」


 どこかまた体調悪そうに屈んでいたけど、どこかぶつけたのだろうか。


 少し心配になったが、湯冷めするまでバスルームで涼むことにした。


 その後、さっき着ていた服を片付けようとしたが、またなくなっていた。


───────────────────

【あとがき】


「どっ……どうしたら破滅フラグが折れるんだ……」


 ゆるふわキュルルンのカシューナッツが助けを求めているようだ。


▶︎★★★評価をする

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「こっ……これは……!?」


 選択肢の投票が行われた。


「★★★評価をよろしくお願いします!」


 どうやら★★★評価をすると破滅フラグが折れるようだ。


「BLフラグは……?」

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