第3話 奄美大島のN
学会が鹿児島であった頃の話を思い出した。同期なのにいつも敬語のKと一緒に、どうせそこまで行くのなら、と学会がえりにフェリーで鹿児島から奄美大島に渡ったのだった。フェリーは揺れに揺れた。いつも不眠気味のKが、ヨット部であったためかいつも以上に熟睡できたとの意外な感想であった。何しろ到着が朝5時くらいであったので、どこの店もやってないしな。と思いつつ、レンタカーが借りられるまでフェリーターミナルで休むこととなった。トレンチコートに身を包み、グラサンをし、謎の袋を持ってトイレから出てきたKは、明らかに不審で、火サスの一画面を見ているかのようであった。
眠い目を擦りつつ、レンタカーも無事借りることができた。観光地から至る所まで、あそびまくったせいでNは見事に現金を使い果たした。まあ、世の中にはカードという便利なものがあるからね、余裕でしょ。その足で、大島紬の工芸館に向かった。そこには見たことのない素晴らしい織物があった。冬大島・藍大島など耳にしあことはあったが、夏大島は知らなかった。なんとも薄い生地であるが上品なことこの上なく、珍しいので母に買って帰ろ、とクレジットカードを出す。店員さんが、なんか上限超えてるみたいです、、引き落とせません、、と。もう一個あるから大丈夫!と言ってもう一枚出したが、そちらもダメであった。シーン、諦めモード。店員さん達は、この貧乏なワタクシを気の毒に思ったようで、とにかく最大限値引きしますから、カード2枚で支払える金額でいきましょう。と救いの手を差し伸べて下すったのでした。さらに下処理代までおまけしてくださいました。万一お金持ちになったら、必ずまた買いにきます。(その時は定価で買います。ありがとうございます。)まだ、買いに行ってないし。
帰り道、みんなにお土産買わないとな、、まだキャッシュカードがあるから大丈夫!と言って数少ないコンビニなど寄りまくったが、関東ではメガバンクと言われるキャッシュサービスは、ここには存在していないのであった。チープなお土産をスーパーで漁ったが、お財布には1000円札すら残っていなかった。最終的に、Kにお金貸して下さい。と借金することとなったが、Kも言うほど現金が残っていなかったので、最後までかつかつであった。とにかく、関東に着くまではこれで乗り切らねば!
なんとか、帰ってきた頃には、ほぼほぼ現金は残っていなかった。今でもKとこの話題で盛り上がるのだが、毎度毎度「ご利用は計画的にして下さい」と諭されるのでありました。
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