★1 寿司から始まる天下泰平 ~転生したら漁村の豪族だったので戦国で寿司を作ります~


タイトル:寿司から始まる天下泰平 ~転生したら漁村の豪族だったので戦国で寿司を作ります~

キャッチコピー:現代寿司まだ無き戦国で、寿司を作って天下獲り!今までなかった異色作推参

作者:川中島ケイ

URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330667670056330


評価:★1


【あらすじ】

どこにでもいる平凡な34歳社畜がある日休日出勤の帰り、寿司屋でビールを飲んでたら椅子から転げ落ちて気が付くとそこは戦国時代!!だからって大名の息子に生まれ変わったとかチートが使えるとかそういうんじゃなくて、海沿いの弱小勢力の平凡息子。


お金も無いし、力も無いし、大好きな寿司も無いけどっ!!


でも前世(現代)の知識を生かしてこの時代に寿司を持ってきて、そんで万民が平和に暮らせる天下泰平を目指すぞ!!


チート転生でも史実ifでもない、ありそうでなかった

戦国下剋上コメディストーリー、いざ推参ッ!!!



【拝読したストーリーの流れ】

 34歳の社畜である主人公「浜中 寿」は、「休日出勤の日は寿司屋に行く」という半年前からの週課を今日も欠かしていなかった。

 疲れた体を、ビールとつまみの寿司が癒してくれる。


 だが「ちょっとトイレにでも」そう思い立ち上がろうとした「寿」だったが、不運が重なってこけてしまった。

 打ち所が悪かったのか、「寿」の意識はそのまま薄れて行き……。


 気がついたら「寿」は、「今川義元」が治める駿河の東側、東駿河の国衆「浦浜太郎」の四男「浜 寿四郎」に転生&タイムスリップしていたのだった……、というお話でしょうか。



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 まずタイトルですが、非常に良いと思います。

 作品の設定や方向性が分かりやすく、またキャッチーにも感じました。

 題材が「寿司」である事から、「コメディ作品」だという事が伝わりやすいのも良いですね。(本作のタグには「コメディ」があります)


 ただ、【文章・構成の批評】で後述しますが……。

 私にとってはこれが落とし穴でした。



 キャッチコピーですが、こちらは「タイトルの繰り返し」のような内容ですね。

 今までは「タイトルとは別の情報を見せよう」などと申し上げてきましたが、本作においては「これで良い」と思います。


 本作が読者をキャッチする為に伝えなければならない情報は「寿司と戦国時代、転生」の3点だと思われます。この3つだけで、本作の魅力を伝え、読者をキャッチする事は可能だと考えられます。

 なので「他に余計な情報を与えない」このコピーは正解だと思いますね。


 ただ、「今までなかった異色作推参」という文言はどうでしょうか?

 過去にタイムスリップをして、現代の食文化で成り上がるという作品はけっこう見かける気がします。(有名作では『信〇のシェフ』なんかがそうだと思います)

 舞台が異世界ファンタジーなら大量にありますし、少し過剰広告では? と感じてしまいましたね。



【キャラクターの批評】

 キャラですが、性格付けなどは良いと思います。

 それぞれに分かりやすい個性があり、主に主人公がツッコミ役となる事で「コメディ」も成立しております。

 ただ、設定などは雑だと感じてしまいました。


 特に主人公ですが、転生前の設定がハッキリせず、また「寿司に対する情熱のルーツ」が曖昧です。


 「社畜」という、あまりにもありふれた設定ですが、どのような仕事なのかが書かれておりません。その為、転生前の主人公像がボヤけているように感じました。


 また、主人公の「寿司好き」という設定は「半年前から休日出勤の後には大手チェーンの寿司屋に行く習慣がある」という事しか語られていません。

 「寿司」は作品のテーマにも関わる大きな設定だと思うのですが、これでは「ただの寿司が好きな人」ですね。もっと寿司に対する情熱を持っているというエピソードがあれば良かったと思います。


 これら以外にも、「戦国時代の事はゲームで知った知識程度しかない」という設定の筈なのに正確に年号を覚えていたりするのにも違和感を感じました。

 ここは「歴史オタク」とでもした方が自然だったと思いますね。


 あとは「乗っ取り転生」に嫌悪感を抱く読者もいるかも知れませんね。

 転生後の主人公は14歳であり、それ以前の記憶などはありません。完全に「乗っ取り型の転生」です。


 これに付随して、「別人の人格が入っている」というのに、1人しか気付く人間がいないというのも違和感ですね。



【文章・構成の批評】

 文章は普通に読めるレベルです。

 ただ脱字や誤用などがあり、文章力や表現力が特段に優れているとは感じませんでした。


 あとは「句点の抜け」や、「 」内での改行、意味不明な場所での改行なども見られます。(意味不明な場所での改行に関しましては、カクヨムのバグ(仕様?)の可能性もあります。この様な事が稀にあると、以前に知りました)



 次に構成ですが、「普通のストーリーもの」の作品ならば大きな問題は無いと思います。

 テンポ良く物語が動き、キャラの魅力も見せ、エピソードの終わりには次話へのヒキもあるように思えます。


 ただ「コメディ作品」として見た場合は弱いですね。

 全体的にノリは軽く、面白いと思えるような小ネタも挟まれるのですが、ストーリーへの比重が大きく、次話へのヒキはあってもオチはありません。


 私はタイトルから「コメディがメインの作品」だと思ってしまったのですが、どうやら「コメディ要素もある、ストーリー重視の作品」のようです。(これが先ほど述べた「落とし穴」です)

 この認識の齟齬は意外に大きく、「思ってたのと何か違うな」という疑問が常に付きまとっていました。(序盤を乗り越えれば、この疑問は無くなるとは思いますが)



【ストーリー・設定の批評】

 ストーリーに関しては、「今川家の下につく主人公の家が、主人公の活躍で滅亡を回避する」というストーリーだと思います。

 少しでも歴史を知っている方ならご存知のでしょうが、「今川義元」は「織田信長」に敗死し、その後に今川家は没落してしまいます。


 これを「戦国時代には現代の寿司は存在しない」という事を武器に、主人公がどうにかして「寿司の力で成り上がる」のだと思います。


 第5話までの時点では「寿司」は出てきていませんが、どのような形で寿司を再現し、どうやって成り上がるのかは興味が持てますね。



 設定に関してですが、これまで書いた通り本作は基本的に「史実を元にして」書かれていると思います。

 実際、「今川義元」やその息子「今川氏真」などは史実の人物です。その周りにも、実在の人物が数名登場しています。


 こういった「史実を元にした作品」は、その考証なども厳しく見られがちです。

 私が気付いた所では、「おしめも替えた」というセリフがあったのですが、調べたところによると「おしめが使われ始めたのは江戸時代から」らしいです。


 面白くする為に必要な場面であれば史実の改変も良いとは思いますが、そうでない所はキッチリしたい所ですね。

 また、いくら頑張っても「事実と違う」「史実では~」「あり得ない解釈だ」などと言う人もいるかも知れませんが、これは「史実を舞台」とした宿命みたいなものかも知れませんね。



【総評まとめ】

 総評……というか、感想ですが「コメディ全開の作品だと思ったら、コメディ要素もあるストーリー重視の作品だった」ですね。

 このギャップは「期待していたものとは違う」という感想を生み、ひいては読者の離脱に繋がってしまうのではないかと思います。


 序盤はもう少し、コメディ色を強くした方が読者の期待に応えられたかも知れませんね。

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