★2 【午前8時15分、ボクはきっと担当さんに抹殺される(確信)】
タイトル:【午前8時15分、ボクはきっと担当さんに抹殺される(確信)】
キャッチコピー:「 書くしかねえ。」 8時15分、それがタイムリミットだ。
作者:うさぎパイセン、オーナーはもうダメだ。
URL:https://kakuyomu.jp/works/16818093080132536180
評価:★2
【あらすじ】
主人公は今流行りのベストセラー作家。
…という訳では無い。
それを目指して奮闘している新米作家の卵である。
ぽぽぽぽーんと書いて送った処女作が某小説大賞にスルリンと受かってしまった。お前才能あるな。
大賞作は商業出版が確約されている。担当者も着く。
しかし。
わかると思う。ここのSNSを活用している作家の皆さまならわかると思う。
書き上げたあとの自作の読み返しの面倒くささ…!
そう、主人公は…
「赤入った後の修正確認めんどくせえええええ!(大声)」
(※解説。「赤」とは修正するべき箇所を赤い文字や線で表記する用語。つまりは校正ですね。)
コイツはせっっっかく、自分の紙本が一般の方々の手に取れる環境に置かれている(※確約)というのに、全く小説の校正箇所を修正していなかったのだ…!
担当さんから提示されたタイムリミット、本日午前8時15分までに書け。とにかく書け。
そんな主人公にヒロイン(老女)が隣の窓ガラスから舞い降りた!持ってるのは赤い縄とらいふりー紙オムツ!
夜明け前に試される2人の小説誤字脱字修正ドタバタコメディ。
人って追い詰められると本性出るよね(にこり)
【拝読したストーリーの流れ】
本作の作者である「うさぎパイセン、オーナーはもうダメだ。様」は以前に批評させて頂いた『めんどくせえ嗚呼めんどくせえ』の作者でもあります。
また本作は1話完結の短編です。
新米小説家の主人公は締め切りに追われていた。
電話で泣きつく相手は同世代の親友……ではなく、お隣に住むおばあちゃん。
いくら甘えても「とにかく書け」の一点張り。
どうしようもないと悟った主人公は逃げようとするが、その時おばあちゃんが窓から入ってきたっ。
赤い縄と、らいふりー(オムツ)で拘束された主人公に逃げ場はないっ!
かくして主人公はタイムリミットの午前8時15分までに原稿を仕上げるべく、お隣のおばあちゃんと共に戦うのだった……、といったお話でしょうか。
【タイトル・キャッチコピーの批評】
まずタイトルですが、個人的にはかなり良いと思います。
タイムリミットを示し、「担当さん」という単語から、何となく「主人公が締めき切りに追われる話」である事が連想できます。
「抹殺される」という、少し過激な言葉も読者の興味を惹くワードになっていますし、その後の「(確信)」がコミカルさを出しています。
懸念点があるとすれば、タイトルに登場する「担当さん」が本編には最後に少ししか登場しない事くらいでしょうか。
キャッチコピーは、タイトルの補強のような文章ですね。
「書くしかねぇ」で作家である事を、そしてタイムリミットを改めて強調しています。
悪くはないのですが、もう少し別の方向から攻めた方が良い気もしますね。タイトルは十分に分かりやすく、興味を惹く出来になっているように思えますので。
【キャラクターの批評】
本作のキャラは素晴らしいですね。
「主人公」「おばあちゃん」「担当さん」の3人が登場しますが、どのキャラも個性的で特に「おばあちゃん」はブッ飛んでます。
窓から侵入し、縄で縛り、トンファーで脅してくるんですよっ?
しかも実の祖母ではなく、「隣のおばあちゃん」です。
こんなにファンキーなおばあちゃん、創作の中を探してもそうはいません。
ですが「おばあちゃん」だけでなく、主人公もマトモではありません。
あり得ない表記漏れや変換ミスをしているのですが、それがギャグとして面白くなってしまっています。
そして一人称が「ボク」であり、私は最初性別を誤認していたのですが、後半で女性である事が分かります。
叙述トリックという程では無いのですが、性別が判明してから読み返すと作品全体の印象が変わりましたね。
登場シーンはあまり多くは無いのですが「担当さん」も良い味を出してます。
上の2人に比べればマトモに見えるのですが……。やっぱりマトモではないですね。
3ヵ月の付き合いで、担当作家(しかも学生)の尊厳を盾に締め切りを守らせようとは、マトモな社会人のする事では無いですね。(褒めてます)
【文章・構成の批評】
文章なんですが、本作はセリフの占める割合が多い為か、前作ほどの「クセの強さ」は感じませんでした。が、これは「クセの強さ」が【文章】ではなく【キャラクター】に移動しただけですね。
「文章のクセが強い」ではなく「キャラのクセが強い」となっていますので、前作よりは読み手を選ばないと感じました。それでも万人向けとは言えませんが……。
クセ以外の、文章における大きな問題点としては「セリフ内で改行・空行を行っている」事ですね。「 」内の文章は、改行・空行を入れない方が良いと思います。
特に本作は長文のセリフでこれを行っていましたので「どこからどこまでがセリフなのか」が非常に分かりづらかったです。
またセリフと思われる文章に「 」が無い時があったのも、この読みにくさに拍車をかけていました。
あとは個人的な好みかも知れませんが、空行が多すぎると感じました。
他の作品でも指摘した事がありますが、空行が多いとエピソードが縦長になってしまい、スクロールの手間が増えます。
続いて構成ですが、とても良いと感じました。
「起(締め切りに追われ、おばあちゃんに拘束される)」
「承(あり得ないミスを修正していく2人)」
「転(疲労が限界突破。現実逃避を始める)」
「結(タイムアップ。担当さんがやって来る)」
このように、非常にキレイに纏まっています。
あえて難を挙げれば「承」の尺が少し長いと感じた事くらいでしょうか。
オチもしっかりついています。
こちらは、その表現が秀逸でしたね。
【ストーリー・設定の批評】
ストーリー・設定は非常に分かりやすくて良いですね。
ここまでこの批評を読んで、本作がどのような物語なのか理解出来ない人はいないと思います。
他人に「この小説、どんな話?」と質問されて、淀みなく答えられる作品は多くはありません。
「単純であれば良い」という訳ではありませんが、分かりやすいのは良い事だと思いますね。
【総評まとめ】
まとめますが、「文章がクセがあり、改行・空行の問題があって読みにくい。が、それ以外は非常に面白い作品」だという感想ですね。
中でも感心したのは「構成の美しさ」です。
これほどキレイに「起承転結」が分かれている作品はそう多くないと思います。
ですが本作は8/5現在、★0でPV数7しかありません。
短編は特に、投稿タイミングなど運の要素が強いとは思いますが「作品の面白さと、カクヨム上の評価は一致しない」の例に当てはまりますね。
もっと読まれてもよい作品だと思います。
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