10

 美星が初めてキスをしたのは十四歳の雨の帰り道でのことだった。

 相手は里で里も初めてのキスだったらしい。(本当かな?)

「今日はありがとう。篠崎」

「もう泣いてへんな。よかった」

 と本当に安心した顔をして里は言った。

「引っ越しもうすぐだっけ?」

「ああ。もうすぐや。まあもう慣れたけどな」

「引っ越しばかりだと大変?」

「大変やけどいいこともいっぱいあるよ。いろんな土地が見られるし、友達もたくさんできる。それから」

「それから、なに?」

「なんでもない」

 笑って里はそう言った。


 お昼ご飯は街で食べることにした。

 有名なお食事処があるのだそうだ。

「里はもう引っ越しはしないの?」

「ああ。せえへんよ。この街にずっといる」

 里が連れていってくれたお店は古い家の中にある歴史あるお店だった。(テーブルの外には、小さな川が流れている)

 お蕎麦を食べて、お魚を食べて、食後に綺麗な和菓子を食べた。

「どう? 満足した?」

「満足した」と美星は言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る