第22話 来日編

「ソフィーといいます。よろしくお願いします」

 ソフィーが自己紹介するとレイコの顔が冷淡になる。

「タスクさん、説明してくださいますかしら?」

 レイコは冷たい目でタスクを見て冷たく聞く。

「説明するよ。彼女はソフィー。この世界とはまた違う異世界から来た王女様だよ」

 タスクが説明するとレイコの動きが完全に止まった。そしてしみじみと泣き始めた。

「タスクさん!あんまりですわ!ひどい嘘つくのですね?」

 タスクはちらりとソフィーに目をやった。異世界の姫はまたまた青と緑の目をまん丸く見開き、呆然としている。


「ごめん!うけると思ってね!冗談が過ぎたよ。謝るよごめん。彼女の名前はソフィーって言うんだ。イギリスから来たんだ。マンガ雑誌の文通欄で知り合ったんだ」

「そうではなくてどういった仲なのですか?」

 そういうとレイコは子供のように泣きじゃくる。

 ソフィーはそっと手を伸ばしてレイコの背中をさすってやる。

「ああ、泣かないで。落ち着いて。私とタスクさんはただの・・・・・・」

 姫は口ごもる。

「ただのお友達ですか?」

 レイコはそう聞くと一瞬笑顔になる。

「いえ違うわ。とっても熱烈な恋人同士って言えばいいのかしら?」

 ソフィーがそう嘘をつくとレイコはわんわんといっそう激しく泣いた。

 姫の手をはじき、レイコはタスクをキリっとにらむ。


「本当ですか?答えてください!二人は付き合っているのですか?今、どっちか選んでください!」

 レイコの問いかけにタスクは弱り果てた。


 結局のところさ、この状況はどちらか選べっていうのかな?どっちもえらく美少女なんで選べって言われてもねえ。これってさ、究極の選択じゃん?誰でも優柔不断になっちまうよ。


 タスクは長い間、考えた。

 ソフィーとレイコは物言わず、じっとタスクを観た。


 ガチャン!音を立ててドアが開いた。

 親友のナオトがピザの箱とコーラを抱えて入ってきた。

「ゾンビ映画一挙放送祭りが始まっちゃうよ」

 ナオトはぶつくさ言ってサンダルを脱ぎ捨て、脇目もふらずいそいそと中へ入っていった。

「今の誰です?」

 ソフィーが聞いてくる。

「マブダチのナオト君。あだ名はショーティ。小柄だからそう呼ばれている」

 タスクはそう教えた。

「おーい!タスク!もうはじまってるぞ!はやく来いよ!」

 リビングからナオトの声が呼びかけてくる。

「今行くよ!」

 姫と泣きはらした女子高生をおいて、タスクはしれっと平然としてリビングに逃げ出した。


「どうやらあなたとは友達になれないみたいね」

 ソフィーがつぶやく。

「ソフィーさん。帰るなら私の車を使ってもいいですよ」

 レイコはそう吐き捨てると靴をそろえ家にあがりこんだのだった。


つづく

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