white day share with you.

坂中祐介

第1話

2024年3月14日。

 まだまだ、寒い日が続くが、梅の花もほころび、タンポポが咲いている。

 新橋イチローは、もう、40代後半になっていた。

ータンポポが明るく咲いた弥生にてこれから元気わが心なり

(意味)

ータンポポが明るく咲いているねこの3月にこれから僕の心も元気になるよ

 と新橋イチローは、阪急京都線の特急梅田行きの車内から見える淀川を観て詠んだ。

 彼は、関西地方では、ある公共機関が、主催している短歌の公募に入選している。その短歌は、「東海道哀しみ抱えて東路へ帰り路には楽しみ抱えて」という。

 そして、短歌を入選させて、そして、『新・東海道中膝栗毛』を入選させ、執筆の仕事をしていたが、どうも、『新・東海道中膝栗毛』の売上は、悪かったらしい。

 そして、新橋イチローは、大学院で文学の博士号を取っていて、生活のため、大学の国文学、近現代文学の講座を受け持ち、更に、高校やら予備校で現代国語を教えているのだが、仕事はなく、地域の文化サークルで、短歌を教える講師をしている。

 だが、新橋イチローは、短歌や小説以外は、頭がなく、それ以外は、生活能力が、ないため、ほとんど、家に帰ると、スマホで、いきものがかり『ブルーバード』を聴いて歌うか、または、好きだったドラマを観ている。

 新橋イチローは、それでも、頑張って、『幼馴染』を執筆させて、それで、少しは、民放でドラマになったらしい。どうも、東京武蔵放送が、4回だけ放映し、そして、憧れの有村架純さんとか上白石萌歌さんが、主演ではなかったのだが、女優の高村リノという30歳の女優が、『幼馴染』の主役の志帆の役をしていた。

 それで、少しは、一世風靡をしたが、それでも、旬が過ぎると、忘れ去られ、東京の生活も終止符を打ち、今は、大阪府高槻市に戻っている。阪急高槻市駅から淡路駅を通って、梅田まで出て、予備校で教え、短歌を教えている。

 または、天下茶屋まで電車で出て、堺市のほうまで来て、短歌を教えている。

 だが、新橋イチローは、才能はあっても、心無いファンから「新橋イチローは、詐欺師だ」「ペテンだ」「面白くない」などと批判され、新橋イチローは、こんなに頑張っているのに、金銭がないのは苦しいと思った。

 ところが、新橋イチローは、それ以上に辛いのは、お金のないことよりも、彼女がいないことであった。いや、新橋イチローは、お金持ちの家で生まれたから、お金がないのは、仕方がないと思っている。

 今日は、2024年3月14日だった。

 新橋イチローは、短歌教室で、堺市まで来ているのだが、そこの宿院文化会館の受付の女性、が、気になっていた。

 以前、新橋イチローは、ここの堺市立宿院文化会館で、講座をした。

「みんなで詠もう、短歌」を開いた。

 だが、受講生は、新橋イチローの態度に不満を持ち、講座は、4回のところ、5人の受講生がいた。

 そんな時、一人の女性の受講生が、気になった。

 新橋イチローは、

「メロディーがブルーライトヨコハマ横浜駅時代と変わるプラットフォーム」

 と詠んだら

 彼女は、授業中に、

「メロディーがやしきたかじん大阪駅時代と変わるプラットフォーム」

 と詠んだ。

「今、授業中だろう」

 と新橋イチローは、言ったが、彼女は、悪びれる様子はなかった。

 因みに、彼女は、グラビアアイドルの古川優奈さんのような雰囲気である。

 だが、新橋イチローは、痩せた頼りなさそうな男だった。

 そして

「堀之内さん、あんな生徒は嫌だ」と思って、宿院文化会館から最寄りの南海本線堺駅まで向かった。

 いつも堀之内まりやは、こっちのペースを乱す。

 あんな女は、嫌だと思った。

 だが、2024年2月14日にバレンタインデーのチョコレートを一人だけくれたな、と思った。

 そして、南海本線堺駅まで行った。

 そこから、特急なんば行きに乗って、天下茶屋まで帰ろうとした。

 その時、新橋イチローは、英語で

ーPlease tell me how to go to Namba.

(難波駅までの行き方を教えて下さい)

 と英語で言われたが、新橋イチローは、英語が大の苦手だった。

 そして、堺駅の改札口で、駅員さんに聞いて欲しいと思ったが、口下手な新橋イチローは、困った。そして、助けてもらおうと考えていたら

ーHey!Next train will go to Namba. Terminal No.3

(なんば行きは、次の電車です。3番ホームよ)

 と言った。

 女性の声だった。

 誰だろうと思ったら、堀之内まりやだった。古川優奈みたいなグラビアアイドルの雰囲気を持った女性だった。

 因みに、新橋イチローは、40代後半になっていた。

 しかし、堀之内まりやは、まだ、20代である。

 そして、英語をしゃべっていたアメリカ合衆国から来た男性は、「Thank you!」と言って、電車に乗った。

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