第15話 そこまでいくと逆に怖いまである。
(ピカッ…ゴロゴロゴゴンっ!!ザバーザバー)
4時間目の英語の授業中、急転直下の大暴雨。
数十分前、体育で外にいた時はこんな大雨になるとは思ってなかった。
なかなか無い大雨に教室内がザワつく。嵐の方が表現的には正しいかな。非日常に沸き立つ者もいるが大半は困ったような顔をしてる。
「なんで?今日傘持ってきてないんだけど」
「電車動くか?」
「絶対濡れるよ、これ」
「終わる頃には止むかな?」
(ピーンポーンバーンポーン)
突然校内放送が流れ出した。
『校長先生です。
この後、さらに強くなるとの事なので公共交通機関が止まる可能性があります。
ですので、今日の授業はここまでにしてすぐに帰りのホームルームを行い、各自下校してください。
保護者が迎えに来てくれる場合は静かに教室で待機していてください。
以上で放送を終わります。校長先生でした』
放送を聞いて、先生が教卓に教科書を置いて話し始めた。
「はーいeveryone、放送の通りhurry upってことなので私がホームルームやっちゃいます」
ホームルームが終わってすぐに帰る者、連絡を取る者、二の足を踏む者。
さすがに俺も帰れないとまずいから足早に教室を出る。
下駄箱は1年でごった返しになってて全然進まないし歩きづらい。
外を見ると木がぐにゃんぐにゃんになるくらい風に押されてる。こりゃ、明日は落ち葉が大量だな。
しかも、風が酷くて傘も意味あるかどうか、絶対何人かは傘が折れたり裏返る。
カッパを持っておけば良かったな。
人混みに疲れたから一旦トイレで一休み。
あの感じだと落ち着くまで5分くらいかかりそうだから、今のうちに電車の時間を調べておく。
とりあえずまだ電車は止まってないようで安心した。
しばらくして下駄箱に行ってみればだいぶ人は減ったけどまだ結構いる。まぁ、これなら詰まる程じゃないからこのまま帰る。
靴を履き替えると雑音の中に聞き馴染みのある声が聞こえた。
「ずぶ濡れで電車とかマジ無理なんだけどぉ」
「詰んでるでしょ。傘あっても死ぬ」
「レインコート使います?余ってるので良かったら」
「マジ?マジ助かるんだけど」
「ありがとぉぉ」
野田君だ。カバンからカッパを出して渡してる。何着持ってんだ!
「誰かの借りちゃう?」
「さすがにやばいっしょ」
「レインコート余ってますけど使いますか?」
「え!?」
「いいの!?めっちゃ助かる」
手品師が口から大量の国旗を出すみたいにカバンからカッパを出してる。何着持ってんだ!
その後、これを10回繰り返した。
あまりにも準備が良すぎるけど、まさか常備してたのか?カッパだけとは考えにくいしどれだけの物があのカバンに入ってるんだろうか。
気になるけどパンドラの箱のようで恐ろしい。
(ザーザー)
傘を打つ雨の威力が半端ない。しかも、傘の芯棒を地面に並行、盾を構えるようにしてないと風に持ってかれる。膝から下はすでにびしょ濡れ。
腕全体で支えても、ちょっとでも風の流し方を間違えると飛ばされる。
(バサッ!)
あーほら、前の人の傘が裏返った。キョロキョロしてる、うんわかる、恥ずかしいよね。
駅までは5分、耐えろ俺。
(バギャロボンっ!)
「うがっ!」
裏返ると同時に16本の骨が折れた。
結構頑丈な傘だよ?1発でダメになるかね。
くそう!こうなりゃ駅までダッシュだ、タオルで拭けばどうにかなる!どうせ混んでて座れないからな!
(ピっ)
改札を通って俺の心が折れた。
『運休』
電光掲示板に書かれた無慈悲な単語。
「嵐のバッキャロー。I can fly!!」
俺は走った。嵐の中、顔にあたる大粒の雨を耐えながらとにかく走った。
雨に濡れるなんてそうそうできることじゃないからな、むしろ清々しいまである。
家まで走って1時間。全ての信号を青で迎えた。
そうさ、俺の気持ちはブルー…なんてね。
「ハックション!!」
風邪はひかなかった。丈夫な体に産んでくれてありがとう。
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