チートスキル貰ったら雑魚スキルだった。仕方がないので真面目に生きます。

@wasd814

プロローグ 

ある日、僕は気がつくと真っ白な空間に立っていた。

周りを見渡しても、見えるのは白一色。自分が上にいるのか下にいるのかさえもわからない。

ただ確実に言えることは目の前で、テレビを見ながらポテチを頬張り、肘枕をしている女神のように見える少女はこの世のものではないということだ。


その少女は女神を思わせるような白いローブを身につけ、神秘的な美しさを備えていた。身長は僕より頭2つ分低い。髪は腰まであり、顔は天使のようだ。

ただ残念なのが、どこかおじさんっぽい。こう、言葉では言い表しがたいのだが少女というには何か違う。

まず環境だ。白い空間には似つかわしくないテレビ。

テレビはお笑い番組でも見ているのだろうか?二人組の漫才師と思われる男性が『それは違うやろ!』とツッコミを入れている。

テレビの周りはビールの空き缶や弁当の容器、ポテチの袋や食べカスが大量に散らかっている。


「あのぉ……?」

僕はたまらず声をかける。

すると少女は目で僕を一瞥しハッとした表情を見せ慌てだした。

「いや、これは、違うんです!!」

「えっと、何が違うんですか?」

「あのっ、普段はもっと綺麗というか!まさか今日来るなんて思ってなくて!」

少女は慌てながら目の前のゴミの片付けを始める。

なんというかドジっ子みたいだな……。

ゴミをイソイソと片付け、再び僕を見据える。

「ようこそいらっしゃいました。鈴木アラタ。私の名前はリリアル。転生を司る女神です」

急に声色変わったな。

「転生を司る女神?」

「そうなのです。鈴木アラタ。あなたは世界を救う勇者に選ばれたのです!」

「ぼ、僕が世界を救う勇者に選ばれた!?」

僕は驚きを隠せなかった。

そ、そうか!僕は選ばれたのか!世界を救う勇者に……?

「ちょっと何言ってるのかわからない」

「何がわからないんですか!?」

わかるわけないでしょ。普通。

「いやいや、常識的に考えて世界を救う勇者に選ばれました!とか急に言われても、はいそうですか、とはならないでしょ?それになに?さっきの悲惨な現場。弁当の容器や空き缶が大量に散らばってたじゃないか!どう見ても女神じゃなくて、おっさんだよ!」

「誰がおっさんですか!私はこうみえても女神の中で一番偉いんです!」

自称女神は両腕をパタパタと上下に振り、顔を真っ赤にしていた。

「はいはい。そういうのいいから。それより早く返してくれない?僕忙しいんだよね、今日発売の新作ゲーム『ポケット・モンキー』やらないといけないし」

僕はため息吐きながら言う。

こういう冗談はやめてほしい。何が女神だよ。まったく。どこの世界にポテチ片手にお笑い見る女神がいるんだよ。

「もぉー!信用してないですね!」

「はいはい。女神様(笑)」

「ムキーッ!!私、怒りました!!もう知りませんからね!」

自称女神はそう言うと右手をパチッと鳴らした。すると自称女神の前には一冊のノートが出てきた。女神はそのノートを開くと大声で読み始めた。

うん?待てよ……そのノートもしかして……

「新たなる伝説。神の楽園『ゴットエデン』人々は神の怒りにより暗黙の時代になっていた。人は絶望に打ちひしがれ、生きる希望を失い、伝説の勇者『アラタ』を待っていた。神の怒りは限界を超え、ついにメテオブーストなる力を————」

「ちょっとやめて————!!!」

僕は大声をだし女神の声をかき消そうとする。

なんで厨二病ノートがここに!?あれは家族でもわからない場所にしっかりと封印したはずなのに!!

「これで私が女神だと信じますか?(ニコッ)」

「はいはいはい!!信じます!女神様!!」

すごい威力だ!僕の急所を的確に突いてきやがる!

しかもあんな黒歴史、他人に見られるだけでも死にそうなのに!それをよりによって大声で読むなんて!!ありゃぁ、女神というより鬼だな。

「まだ何か?」

「なんでもございません!女神様!」


「それでなんで僕が世界を救う勇者に?」

僕と女神様は改めて向き合い話をしていた。

ただ女神様の手には僕の黒歴史ノートがあるので要注意だ。下手な言動をすれば、また大声で読まれ僕の命は儚く散るだろう。

「実はミストラスという世界で異変が起きているのです。魔王が倒され一時は平和が訪れていました。ですが今度は原因不明の病気の蔓延、魔獣の増加、市民の生活習慣病が増えているのです。このままではこの世界は滅んでしまいます。アラタにはその原因を突き止め救ってほしいのです」

おかしい、生活習慣病は異変とは関係ないはず……。

「へぇ〜。魔王を倒したのに何故か魔獣や病が増えてると。そしてその原因を……うん?だからどうして僕がそのミストラスを救う勇者に選ばれたの?」

僕は首を傾げる。

だって僕なんかよりも適任の人たくさんいるような気がする。僕の得意なことはゲームをすることぐらい。体力とか全然ないよ?こういうことはスポーツ選手とかボディビルダーとかの方が……ハッ!?

「もしかして僕がイケメンで優秀で特別な才能を———-」

「抽選です」

んなアホな……。

「なんだよ抽選って!?世界を救う勇者をそんな適当に決めていいの!?もっとこう、才能のある人を選ぶとかしないの!?」

「だから言ったでしょ?選ばれたって。私だってもっと優秀な人を選びたかったですよ。ですが優秀な人は他の異世界で手一杯。ですから、あなたのように一日中引きこもってゲームや漫画読んでる人を抽選で選ぶしかなかったんですよ」

女神様の説明を聞いて妙に納得。確かに他の異世界の方が魔王がいたりして危機に瀕してる。その点この世界は最大の難敵、魔王が討伐されているのだ。あとは魔獣増加や病の調査をして救うだけ。

だけど大変そうだなぁ。漫画とか小説かで見て異世界転生に憧れはあったけど……いざ自分がやるとなぁ……。

「ちなみに、断るとどうなるの?」

「この厨二病ノートをSNSにばら撒きます」

「やらせてください!女神様!」

僕は女神様に頭を90度下げた。

女神様のお願いを断るなんて僕にはできないっ!(涙)

「それではアラタ。ミストラスの調査、お願いしますね。今回は引き受けてくれたお礼にチートスキルを差し上げます」

「本当に!?」

僕は礼をした状態から顔をあげ美しい女神様の顔を拝む。さっき鬼って言ったやつ誰だ?

ただ正直ありがたい。チートスキルを持ってないと僕みたいな人間は初期のスライムすら倒せないだろう。

「それではアラタ!異世界に行って世界を救ってきなさい!」




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