それはなさないで

千瑛路音

それはなさないで

 以前、ある女性とお金のやり取りをしたとき、その老年の女性が、自分にお金を渡す際にお金がしわになるほど親指でぎゅっと握りしめ、「お金は絶対放すなよ。」と怖い笑顔で迫ってきたことがあった。

裕福とは言えないが、あまりお金には頓着トンチャクしない時期があって、小遣いを逸脱イツダツしない程度にしか使わなかったので、それほどお金に関して考えたこともなかった。しかし、年を重ねるごとに、意外に周りの人間が、お金に関してはかなり執着シュウチャクしていることがわかってきた。お金の話をするのはあまりよくないという印象が頭にあって、だから話の話題にすらしたことがなかったが、人生の後半にあたって、急激キュウゲキにお金の執着が強くなってきた。

生活費が無ければ、生きてはいけない。それだけでもお金に執着しなけらばならないことに、ようやっと気づけることができたのだ。

お金を放さないためにはどうすればいいのか、それからはそうゆうことを真剣に考えるようになっていった。

しかし、考えれば考えるほど、お金は自分から離れていった。お金が離れるほどに、お金への執着は強くなっていった。その結果、欲望ヨクボウ暴走ボウソウし、結局何も残っていないことに気づく。とりあえず冷静さが重要なのだ。

それからは対応策タイオウサクとして家計簿カケイボをつけることにした。冷静に客観的にお金を離さないためには、数値化して無味乾燥ムミカンソウにした後、対策を練ることにする。そうすると、ある程度お金を使っていくと頭の中で黄色信号がともる。そして、心の格闘が発生する。お金を使うべきかお金を使わないべきか。そこが問題だという感じに。そして決定に際しては、これまで生きてきた中で、参考にされる事例によって決定されるが、大抵は欲は満たすが、なるべく安くで!に落ち着く。

もうとっくにお亡くなりになった女性だったので失礼を承知で話に登場していただいたが、こうゆう話をすると少し気分を害されるかもしれない。しかし、自分にとってはとてもいい人だった。感謝です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る