第10話

もう30年も前、既に隆盛を誇っていた家系ラーメンに僕は新参者だったからごくありふれたマナーだったかもしれない。

並んでより空腹な僕の前にスッと出されたライス。

たくあんが乗っている。

まだ知らなかった。

この時の僕は、たくわんでライスをほぼ食べきってしまった。

次いで出てきた中盛りチャーシュー硬め濃いめ多め。

店内掲示の通りににんにくしょうが豆板醤を小さじ半分ずつ。

さっそく麺をひとすすり。

なんだ、これ?

硬めの中太麺の存在感。

こってりしながら飲みやすいスープ。

海苔とほうれん草がそれらと絡み合う。

評価の高い寿々喜家のチャーシューだけど、正直他のインパクトに霞んだ。

おそろしくうまい。

夢中で食べたが、最後苦しくなった。

自分が少食である事を思い出していた。

それでも帰り道は、世界が違って見える程幸せな気分だった。

これが、ラーメンか。

本当のラーメン。

食事でこんな気持ちになれるなんて。

それがラーメンだったなんて。

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