【第二章完結】忍者少女の全裸ダンジョン配信~底辺賢者の少女は魔法と最強装備のために回避を極めていたら伝説の忍者と呼ばれ無双する~

ケロ王

プロローグ 最強探索者《全裸忍者》水無瀬彩香

 私の名前は水無瀬彩香みなせあやか

 ある日突然、世界中に発生したダンジョンを攻略することを生業とする探索者の一人である。

 また探索者の中には、ダンジョンをただ攻略するだけでなく、攻略中の様子を配信するものもいて、私もその一人であった。


 今日も私はダンジョン攻略の様子を配信するために、渋谷のダンジョンに来ていた。

 更衣室でいつもの装備に着替え、撮影用のドローンを起動し、スマホで私のチャンネルの配信ページを開く。

 ダンジョンの中へと入り、配信を開始すると、すぐに閲覧者数が爆増し5000人になっていた。


「こんばんは、今日はここ、渋谷のダンジョンにやってきました! 今日は、昨日の続きで第四十階層から攻略していきたいと思います!」


《こんばんは、今日も衣装がエロいですね》

《こんばんは、今日も全裸期待してます!》

《みんな全裸だけじゃなくて、戦う姿も見ないと失礼だろ?! 華麗な戦闘シーン期待してます!》


 挨拶をしただけで、チャットが恐ろしいスピードで流れていく。


「あわわ、今日は全裸にはなりませんよ?! 当たらなければどうということはありません!」


《前回も、そう言って結局全裸になった件》


「今日は、昨日の私とは一味違います! 華麗にモンスターを倒していきますよ!」


《戦闘自体は華麗なんだけどなぁ、いつもお約束のように全裸になってしまうのは何故だろうか?》

《華麗な戦闘期待してます!》


 視聴者に対する挨拶もそこそこに、私はさっそくワープポイントを使って、攻略済みの階層を飛ばし第四十階層に移動する。


 渋谷ダンジョン第四十階層、ここから第五十階層まではダンジョンの中では比較的珍しい屋外型の階層になっている。

 屋外型の階層は、上に空のようなものが見えるが、実際には天井が高いだけで天井がないわけではなかった。

 この階層に現れるモンスターはグリフォンという鷲とライオンの混ざったようなモンスターを中心として、ウェアウルフやゴブリンアーチャーが木々や茂みの中に潜んでいる。


 私はさっそく、近くにいたグリフォンに石を投げつけて見通しのいい場所におびき寄せる。

 グリフォンは前足の鉤爪やくちばしで攻撃してくるものの、直線的なため、容易に回避することができた。


《狙いが甘いぞ! とっとと当てろ!》

《お願いだ! 当ててくれ!》

《モンスターを応援するやつらばかりで草》


「そんな簡単に当たるわけないでしょ? これでも賢者だからね」


《賢者は魔法職なので回避は苦手なんですが、それは》

《あきらかに賢者の発言じゃない定期》


 グリフォンの攻撃をあっさりと回避し続ける私に、何故か視聴者はグリフォンを応援し始めていた。

 そこまで引き延ばすまでもないと思った私は、さくっとやっつけることにして、拳に魔力を集中させる。


天轟雷神拳サンダーボルト!」


 私が思い切り殴りつけると、グリフォンは私の魔法により体を痙攣させながら地面に墜落した。


「ふふん、これでトドメだ! 風刃大輪掌エアブレード!」


 私は掌に魔力を集中させ、グリフォンの首に叩きつけると、あっさりとグリフォンの首が切断された。


《何故か掌底で首が切られる不思議》

《これが忍術だぜ(英語)》


 グリフォンを倒して安心していると、背後から衝撃を受け胸に痛みが走る。

 見下ろすと、私の胸の中心、ちょうど慎ましやかな双丘の間から矢が飛び出していた。

 遠距離攻撃無効の靴を履いているのだが、おそらく前回と異なり気づいて田舎たことが原因だろう。


「え……、うそ?! もしかして、スナイパー?」


《キターーーー!》

《レア登場からの即死攻撃とか》


 ゴブリンスナイパーは、ゴブリンアーチャーのレアモンスターである。

 イレギュラーと違って、能力自体はほとんど変わらないが、この即死攻撃のように特殊な能力を持っている場合が多い。

 そして、チャットのログにメッセージが大量に流れだした。


 直後、私に即死攻撃をもたらした矢が消えていく――、私の服と共に。


「きゃーー。噓でしょ?! ここで……」


《全裸キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!》

《ここからが本番ですね》

《やっとアヤカたんの本気が見れる……》

《このアヤカたんの双丘、潰せるものなら潰してみやがれ!》

《なお、潰さなくても平坦な件……》

《おい、やめてさしあげろ!》


 私は慌てて腕で大事な部分を押さえる。

 もっとも、配信動画は自動的に隠すような機能が付いているし、何より、頭につけている猫耳カチューシャにかけられた付与効果のおかげで、大事な部分は霧がかかるようになっているのだが、恥ずかしいものは恥ずかしいのである。


「よ・く・も、やってくれたわね!」


 私は茂みに隠れているスナイパーの位置を特定してダッシュする。

 スナイパーも慌てて次の矢を撃つが、私のハイヒールに付加された遠距離攻撃を完全に回避する効果のおかげで危なげなく回避する。

 しかし、私は回避すると同時に飛んでいる矢を掴むと、勢いを殺さないようにして回転し、そのままスナイパーに向かって投げつけた。


「ぐぎゃ!」


 スナイパーが断末魔の声を上げて絶命する。

 その間に、先ほど消えてしまった服が徐々に元通りになっていった。


「ふぅ、危なかったわね」


《ライフル並みの速度の矢を回避するなんて、やはり全裸忍者の防御力は半端ないぜ!(英語)》

《相変わらずのチート装備だな! これで第一階層のドロップとは思えない》

《確かに、『清浄クリーン』だけならともかく、『身代わりスケープゴート』に加えて、『自動復元オートリペア』まで付いてるなんて》

《確かに性能はチートなんだけど、自分で使いたいと思わない不思議》

《そりゃそうだわな、攻撃をまともに受けると全裸になるとか、まともな人間なら躊躇するわ》

《アヤカたん専用装備でよかったわ。パーティーメンバーに着用強制されたら、確実にパーティー解散案件》


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 私のランクはまだCランクで中級探索者というところなのだが、一部で『最強探索者』と呼ばれていたりもする。

 もっとも、それと同時に『全裸忍者』や、私は知らなかったが『ハレンチ忍者』、果ては『エロティッシュ忍者ACT』などといった不名誉な二つ名でも呼ばれていた。


 ことの発端は私がまだ、底辺探索者と呼ばれていたころに巻き込まれた事件まで遡る……。


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 この作品を読んでいただき、ありがとうございます。

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