第4話 ステータスチェック

 翌朝、私はいつもより早い時間に目を覚ますと、そうそうに支度を済ませる。

 そして、学校に行って先生に事情を説明して、午前中の授業を欠席する旨を伝えた。

 昨日、ムーンビーストによって溶かされてしまったスマホを購入してデータを復旧させるためである。


 色々と問題視されることもあるが、スマホは最近の生徒たちにとって貴重な連絡手段となっている。

 そのため、音信不通になり不要な捜索のために駆り出されるよりはマシということで、私の学校ではむしろスマホの携帯を推奨しているくらいである。


 私は、さっそくショップに行き、前に使っていたものと同じ型のスマホを購入する。

 購入といっても、探索者向けの端末保険に入っているため同じ機種であれば無償で代わりを手に入れることができるようになっていて、私は前まで使っていた機種を受け取り、探索者協会の支部へと向かった。


 そこの受付の人に話をしてスマホを預け、ロビーで待つこと10分ほど、名前を呼ばれたので受付に行き、データを復旧したスマホを受け取った。


「念のため、中身の確認をお願いします」


 その言葉に従い、私はスマホの中身をチェックするが、特に問題は無かった。


「大丈夫そうです。ありがとうございました」

「あ、それと、お時間は大丈夫でしょうか?」

「あ、はい。何か?」

「えーと、昨日の件につきまして、支部長が直接話を伺いたいとのことで……。お手数ですが、奥の通路を進んでいただき、A会議室でお待ちいただけますでしょうか?」


 私は受付の案内に従って、A会議室で待機する。

 しばらくすると、厳つい顔をしたオッサンが部屋に入ってきた。

 私はヤバい人が来たと思って、慌てて立ち上がりお辞儀をする。


「いやいや、座ったままでいいよ。早速だけど、昨日の件で話を聞きたい。もっとも事実確認は探索者カードの記録があるから、君自身に問題がある、というわけじゃないんだ」

「はぁ……。では、どのような用件なのでしょうか?」

「幸運にも昨日の配信動画を入手できたからね。あいつらが君にイレギュラーを押し付けたことも、君がイレギュラーを倒したことも疑いの余地はない。ただ、君のステータスではイレギュラーを倒すのは難しいはずだ。事実、途中までは一方的にやられていたからね」

「え? 配信動画?!」


 私は、昨日の配信動画、すなわち全裸にされて触手に蹂躙されていた動画を見られたことを知って、急に恥ずかしくなり俯いてしまう。


「あ、いやいや、変な意味で言っているんじゃない。本当に運がよかったんだよ。あの後、あいつらもクレーム入れてきやがったが、配信動画を証拠として押さえてあると言ったら、おとなしく引き下がったしな」


 トレインパーティーが懲りずに文句を言ってきたことに呆れていたが、彼は苦笑いを浮かべながら話を続ける。


「それで……。君は途中から急にイレギュラーを圧倒し始めた。レベルが上がるはずの無い状況でね。それで、君の能力が正しく計測されていたかどうかを確認するために、これからステータスチェックを受けて欲しい。もちろん、費用はこちら持ちだ」


 そう、探索者登録時は無料であるステータスチェックも、それ以降は高額ではないとは言え有料になる。

 それでも、底辺探索者の私にとっては結構痛い金額であるため、彼の提案は渡りに船であった。


「はい、是非ともお願いします」


 私が食い気味にOKすると、彼は、相変わらず厳つい顔だが、安堵したように微笑んでいた。


 私はステータスチェックの装置の前に立ち、指定された位置に手をのせる。

 しばらく計測中の文字がモニタに表示された後、私のステータスが表示された。


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 ミナセ アヤカ

 年齢:16歳

 レベル:024

 筋力:842

 知力:0058

 敏捷:0254

 器用:0130

 体力:1242

 魔力:3

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 レベルが24に上がって、筋力と体力が大幅に上昇していた。

 知力と敏捷、器用は低めではあるものの、だいぶ一般人に近い数値になってきたようだと、思って悲しくなってきた。

 しかし魔力に至ってはレベル1から変わらず3のままであった。

 支部長も、私の数値を見て納得の表情をしていた。


「なるほど、筋力と体力特化、典型的な戦士系ステータスだな。タンクであれば、一流も目指せるだろう。これならばイレギュラーを倒したと言っても納得だな」

「いや、そもそも、この装置壊れていますよね? 魔法でイレギュラー倒したんですけど、それで魔力が3っておかしくないですか?」


 私はタンク向きと言われたことで若干へこんでいたが、それ以上に出てきた数値がおかしいと思い、支部長に訊いてみることにした。


「ん? 魔法? いや、動画でも確認しているが、君はイレギュラーを殴り殺してたじゃないか。触手も蹴りで引きちぎっていたみたいだしな。どうみても魔法を使っているようには見えないぞ。はっはっは!」

「いやいや! 蹴ってるように見えますけど、風属性の魔法ですよ。それにイレギュラーを倒したのも火属性の魔法ですから! こう見えても賢者なんですよ?」

「うーん、まあ、憧れているのはわかるけども、知力58で賢者はさすがにないぞ。それに魔力3でまともに魔法が使えるわけないじゃないか。まあ、憧れを持つことは悪いことじゃないし、頑張ればいつかは使えるようになるから、諦める必要はないけどな」


 私にとっては明らかに魔法なのだが……。

 支部長にとっては、私の妄想だと思っているようであった。

 このまま主張しても埒があかないと思ったので、私はおとなしく引き下がることにした。


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 ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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