「はなさないで」はなさないで
藤原くう
「はなさないで」はなさないで
「はなさないで」
「いきなりどうしたの。別に、がけっぷちに立っているわけじゃなし、道路でもない。ここはただの公園で、私たちはベンチに座ってるだけだよ、しっかりして」
「花さ、ないで」
「それ、私が田舎から転校してきたことをバカにしてるの? なんでさ。私とあなた、こっち来てからずっと一緒にいるってのにひどい。
ってか、いきなり花が出てきてわけわかんないし」
「はなさな、イデ」
「イデ!? まああんなもの手放した方がいいよねってのはわからないでもないよ。でもまさか、あなたがあのアニメを知ってるなんて思わなかった。ちょっと意外」
「いなさないで」
「いや別に、いなしてなんかないと思うけど。むしろ、わけわかんないことを言ってくるあなたに結構付き合ってあげてる方だとおもうんだけど」
「パなさないで」
「ごめんって、昇竜拳ぶっ放して勝ったのは悪いって思ってるよ? でも当たれば読みってプロの人がいってたし、ジュースもいらないって言ったじゃん」
「けなさないで」
「貶してなんか……あ、もしかして、昨日のこと気にしてるの」
「……ばらさないで」
「いや、バレバレだったけどね。あの後、あなたったらめちゃくちゃしょんぼりしてたし、洗濯機みたいな音ゲーにもいまいち集中してなかったし」
「さらさないで!」
「それってつまり、言葉にするなってことよね。ようやく何を言おうとしてるのかわかってきた気がする、転校してきて半年、こんなに嬉しいことは――」
「そらさないで」
「ごめん、昨日のことは悪かったよ。私も大人げなかったと思う」
「そうじゃなくて!!」
「えっと、もうルールがめちゃくちゃになってるんだけど。あんたが何を言おうとしてるのか、またわからなくなってきた」
「じらさないで……?」
「あ、ああ、なるほど。腕を広げてるってことはそういうことなのね! 理解した。理解したけどさ、なんかちょっとはずかしいな」
「はなさないで?」
「『はなさないで』は、なさないで。――もっと素直に言ってくれなきゃわかんないよ。私にもみんなにもさ」
「はなさないで」はなさないで 藤原くう @erevestakiba
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