はなさないで

だら子

第1話

そうそうその調子。

わたしをはなさないで。


いつもあなたはわたしをはなす。


私の身体を思いっきり触っていたくせに。

そのあと、となりにいるあの子を触る。



許せない。



何度もぶっ壊してやろうとしたけど、思いとどまった。


あなたはわたしを連れて色んなところへ行くけど、その景色は見せてくれない。

身体だけの関係。



あなたに触れられた時、私は最高の気分なの。

依存症と言ってもいい。



どうしたらずっと一緒にいられるかこのところ、ずっと考えている。




僕の彼女はヤキモチをすぐ焼く。

この前だって、朝イチから海に行ったのに、急に金曜日の飲み会の話を持ち出されて…。


うまくかわしているつもりだけど、僕はモテる。

彼女一筋なのに、どうしてわかってくれないんだろう。


「君を一生はなさないよ」なんて言ってみたいけど

恥ずかしくて言えない。


そんなことを考えていた帰り道の運転目の前に車がいた。



アクセルを離すタイミングが遅れた。

ブレーキが…


「危ない!!きゃー!!」

という彼女の声と衝突音で僕は頭が真っ白になる。




わたしがメンテナンスしている間に、どうやら本命の彼女に別れを切り出されたようだ。


ちょっとイタズラしただけなんだけど、もともと運転はうまくない彼だから、わたしのせいではないよね。


考えた結論。


わたし、彼と一緒に、彼に触れたままで逝きたいの。

それが私の人生の一番幸せな最期だと思うから。



もう終わりだ。


彼女にも振られ、悩んでいた仕事でもトラブルを起こした。

夜も眠れない。食欲もない。


僕は夜中の高速道路をアクセル全開で進んでいる。

事故があり、修理が終わって戻ってきた車が僕を誘ったような気がしたんだ。

海へ行こう。


ブレーキなんてもう踏まない。あの感触は嫌い。

僕はこのアクセルを沈ませるのが大好きなんだ。


どんどんアクセルを加速する。


気持ちいい。


もっともっとこのスニーカーと一体になってアクセルと一緒にどこまでもどこまでも行きたい。


あと数秒で僕は…。・





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はなさないで だら子 @darako

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