はなさないで
だら子
第1話
そうそうその調子。
わたしをはなさないで。
いつもあなたはわたしをはなす。
私の身体を思いっきり触っていたくせに。
そのあと、となりにいるあの子を触る。
許せない。
何度もぶっ壊してやろうとしたけど、思いとどまった。
あなたはわたしを連れて色んなところへ行くけど、その景色は見せてくれない。
身体だけの関係。
あなたに触れられた時、私は最高の気分なの。
依存症と言ってもいい。
どうしたらずっと一緒にいられるかこのところ、ずっと考えている。
*
僕の彼女はヤキモチをすぐ焼く。
この前だって、朝イチから海に行ったのに、急に金曜日の飲み会の話を持ち出されて…。
うまくかわしているつもりだけど、僕はモテる。
彼女一筋なのに、どうしてわかってくれないんだろう。
「君を一生はなさないよ」なんて言ってみたいけど
恥ずかしくて言えない。
そんなことを考えていた帰り道の運転目の前に車がいた。
アクセルを離すタイミングが遅れた。
ブレーキが…
「危ない!!きゃー!!」
という彼女の声と衝突音で僕は頭が真っ白になる。
*
わたしがメンテナンスしている間に、どうやら本命の彼女に別れを切り出されたようだ。
ちょっとイタズラしただけなんだけど、もともと運転はうまくない彼だから、わたしのせいではないよね。
考えた結論。
わたし、彼と一緒に、彼に触れたままで逝きたいの。
それが私の人生の一番幸せな最期だと思うから。
*
もう終わりだ。
彼女にも振られ、悩んでいた仕事でもトラブルを起こした。
夜も眠れない。食欲もない。
僕は夜中の高速道路をアクセル全開で進んでいる。
事故があり、修理が終わって戻ってきた車が僕を誘ったような気がしたんだ。
海へ行こう。
ブレーキなんてもう踏まない。あの感触は嫌い。
僕はこのアクセルを沈ませるのが大好きなんだ。
どんどんアクセルを加速する。
気持ちいい。
もっともっとこのスニーカーと一体になってアクセルと一緒にどこまでもどこまでも行きたい。
あと数秒で僕は…。・
はなさないで だら子 @darako
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