頼めばヤらせてくれると噂だった黒ギャルビッチが、なぜか俺に色々頼んでくる

ぱぴっぷ

どうしてこうなった……

大倉おおくら、今日も泊めてよ」


「えぇっ!? ま、真野さん!? 俺は一人暮らしだからマズイって、この間も……」


「あたしは気にしないから、いいでしょ?」


「俺が気にするんだよ……」


「お礼にしてあげるから、ねっ? お願い…… 大倉ぁ……」


「わ、分かったよ、分かったから離れて!」


「ふふっ、やった! ……じゃあ大倉」


 まただよ…… 今回も真野さんは勝手に決めて、俺の部屋に泊まりに来るみたいだ。


 どうしてこうなった……



 ◇



 高校を卒業してもうすぐ社会人二年目。

 就職のために実家から出て一人暮らしを始めた俺は、仕事終わりに晩御飯を買うためにスーパーに入った。


 実家からは最寄りの駅から一駅しか離れてないから地元と言えば地元なんだが、初の一人暮らしということもあり、俺は新生活を楽しんでいた。


 就職先の会社もこの辺じゃ有名な企業の子会社で、給料も新卒のわりにそこそこ良い。

 あとは彼女でも出来れば最高なんだが、身体が縦にも横にも大きめな俺には…… はぁ…… 難しいよなぁ。


 俺の高校時代のあだ名は『オーくん』だった。

 名字が『大倉』で、ファンタジー物に出てくる『オーク』のように太っているからだと思うが…… そのまんま過ぎるだろ。


 まあ、イジメられていたわけではないし、クラスメイトとの仲も良好だったからいいけど、こんな見た目だからモテるわけもない。


 はぁ…… 自分で言ってて悲しくなってきた…… さて、今日の晩飯は何にしようかな?


 そんな事を思いながらカゴを持ちながらスーパーの店内を歩いていると……


 んっ? あの金髪で日焼けしたような肌の女の人…… どこかで見たことあるな?


 褐色の肌に派手で露出の多いギャルのような服装。

 短いスカートを履いているからムッチリとした太ももがよく見える…… いけない! あんまり見ていると怪しまれてしまうから見ないようにしないと!


 そしてあまり意識しないように別の商品を見るふりをして通り過ぎようとしたところ……


「……あれ? 同じクラスだった大倉陽おおくらよう、よね?」


「……へっ!?」


 金髪ギャルがいきなり近付いてきて話しかけてきた! しかも俺の名前を知ってる……


 えっ? この褐色ギャル見たことある! 確か高校の時のクラスメイトで名前は……


「大倉、奇遇ね! 同じクラスだった真野唯愛まのゆあだけど覚えてる?」


「あ、あぁ、覚えてるよ…… 久しぶり、だね」


 そうだ、同じクラスの真野唯愛だ……


 金髪の丸みのあるショートカットに少しつり目気味でちょっとクールな印象のある褐色の肌の美人で、高校生の時も言われていたけどスタイル抜群な女性。

 今も豊かな胸を強調するように胸元が大きく開いた服を着ているし、健康的でムッチリとした太ももを惜しげもなく出している。


 あと真野さんのことで一番強く印象に残っているのは…… 『頼めばヤらせてくれる』と男子の間で噂になってたことかな……


 そんな真野さんが何で俺なんかを覚えてるんだ? クラスメイトだけど一言、二言くらいしか話した事なかったはずだぞ?


「高校卒業以来…… だね、あんま話した事なかったけど、ふふっ、あっ、大倉ってこの辺が地元なの?」


「いや、隣の駅の方が実家で、就職でこっちに引っ越してきた、一駅しか離れてないから地元みたいなもんだけどね」


「ふーん…… ってことは、一人暮らしでもしてるの?」


「えっ? あ…… うん」


 何でそんな事をいきなり…… って、真野の目が少し変わったような気がする……


「……カゴに弁当、ふーん、そっかぁ」


 な、なんだよ…… カゴの中身と俺を舐め回すように見て……


「ねぇ、お願いがあるんだけど」


「お、お願い?」


 何か嫌な予感がするんですけど……


「今日さ…… 大倉んちに泊まらせてくれない?」


「えぇっ!? いや、それは……」


「お願い! 実は今日泊まる場所が見つからなくてさ、野宿しようか迷ってたんだ」


 野宿…… こんな露出の多めな真野さんが外で寝ていたらきっと大変なことに…… いや、それでもさすがにあまりよく知らない人を家に泊めるのは気が引ける…… よし、断ろう……


「……お礼もするから、ねっ? お願ーい!」


 うわっ! 腕に抱き着かれて…… ムニュリとムニュリさんがムニュムニュ…… うぅっ…… 嫌だけど、嫌なのにぃ……


「わ、分かった! 分かったから…… 離れて!」


「やった! ふふっ、じゃあ決まりね! じゃあ、あたしの分のお弁当も買って…… あっ、朝ごはんも欲しいかも!」


 えぇっ!? お、俺が買うの!? 


「お願ーい! ……えい!」


 わわっ! またムニュリさんを押し付けて…… 分かったよ、買えばいいんでしょ、買えば!!


「……ふふっ、ありがと、大倉!」


 ……美人なだけあって笑った顔が可愛いな。

 しかもムニュリさんも大きいし…… ところでお礼って一体何だろう?


 ……あることが頭をよぎってしまったが、何を期待しているんだ俺は! ほぼ初対面みたいなものだぞ! ……煩悩退散! 煩悩退散! 


 そして真野さんの弁当を買うために再び店内を見て回ることにしたのだが……


「歯ブラシって予備に買ってあるの? ない? じゃあこれも!」


「あたし、シャンプーとトリートメントはこれじゃないとダメなのよねー、はい、これも!」


「……これも! あっ、あれも!」


 弁当以外にもあれこれと買い物カゴに入れていく真野さん。

 止めようとしても……


「大倉ぁ…… お願ーい!」


 ムニュリムニュリ…… 結局あれこれと買わされてしまったが、一日泊まるだけだよね? 買い過ぎのような気がするんだけど……


「買い物も終わったし、じゃあ大倉んちにしゅっぱーつ!」


 ……何で腕を組んでくるの? 高校のクラスメイトといってもほとんど接点なかったのにいきなり距離が近くないかな?


「何? あっ…… ふふっ、もっと当てて欲しいの? 仕方ないなぁ…… えい!」


 うわぁっ! またムニュリと…… そ、そういう訳じゃ……


「……エッチ」


 ないんだよぉ……


 ただ、何も言い返すことも出来ず、腕に柔らかいものを押し付けられながら、俺の家へと二人で歩いて向かった。

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