異世界流刑少女刑 外伝 はなさないで

土田一八

第1話 離さないで

 私は、彼氏のフジムラヨウヘイと一緒に他の女の子達と歩いて登校していた。

 彼は女の子達に人気がある。

 特段イケメンだとかカッコいい訳でも無い。

 むしろ、外見より彼自身の中身の事で人気があった。


 それは…。


 ゆっさゆっさ…。大きなおっぱいが前後に揺れ、私はシーツを掴んで必死に喘いでいる。

「あっ!くっ、も、もう、だめぇーっ⁉」


 ちょっ!なんで私、そんな事を思い出しているのよーっ⁉


 彼は、とってもエッチが上手なのだ。それだけでなく。


「あん、あん…もう…しがみついちゃってカワイイ♡」

「あ、もしかして、き、気持ちイイのぉ?ウフフ♡」

「はぁはぁ…エヘヘ。一生懸命やってくれてウレシイ♡」

 女性の母性本能をどこかくすぐるところがあるらしく、すこぶる人気がある。


 私もその一人だけど…。マズい、パンツ濡れて来た…。



 私達は学校に着き、通用門から校庭を横切る。本来は正門から入って行くが、文化祭準備の都合で校庭を横切るコースになっていた。まあ、朝練をしている部活が無いからね。


 しかし、この日はそれだけではなかった。


「フジムラヨウヘイ‼」


「ん?なんだぁ?」

 どこからか、名前を大声で呼ばれた彼は立ち止まった。その時、一瞬だけ校庭の一部分が円形状に光った。

「貴様のせいでオレは女の子とエッチができない‼」

 何か変な事を喚き散らしている。恥ずかしくないのかなぁ?

「貴様を異世界流刑少女刑に処す‼」

 これまた大きな声で宣言された。

「何言ってるんだアイツ?」

 声の主は、名前を出すのに反吐が出そうなヤツだとすぐ分かった。ヨウヘイはまた歩き始めた。周りの生徒達も何事もなかったかのように再び歩き始める。しかし、異変はこの時すでに起こっていた。


「フジムラくーん!魔法陣がついて来てるわよーっ⁉」


 これまた大きな声だ。声の主は三年生女子、ルリナ先輩だった。


 しかし、万事休す。魔法陣はヨウヘイの動きについて来ていた。魔法陣は次第に光を増して来た。

「みんな、俺から離れろ‼魔法陣の外に出るんだ‼」

 ヨウヘイは自分からすぐ離れるように強く言う。今思えば、この時には覚悟を決めていたのかもしれない。ヨウヘイはそういう男だから。周りの女の子達は離れた。


 私はヨウヘイにしがみつく。

「ばかっ!何をしている!早く離れろ!」

「イヤだ!離さないで!」

 私は必死にヨウヘイから離れまいとしがみつく。

「シズカ…」

 ヨウヘイは私をかばうように抱き寄せてくれた。


 やがて、私とヨウヘイは白い光に呑み込まれた。


 ふわっとした一瞬、私は意識を失う。


 光が消え、気が付くと私だけがポツンと校庭にへたり込んでいた…。ヨウヘイの姿はどこにもなく、彼のカバンが残されている。


「えっ⁉…う、うそ……?」


 私は茫然としてしまった。


                                  つづく

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