【混沌】混沌、源頼光に助言する(適当)
「すいません、状況がよくわかってないんですけど……もしかしてこいつがなにか迷惑おかけしました?」
「いや、なんか全身真っ黒な人がいるなーって見に来ただけなんだけど……」
「あーそうなんですねー……。それなら良かったです……ははは」
こんな見るからに怪しすぎる影人間をこんな路地まで見に来るか普通?
もしかして、いつでも殺せるとか思ってないよね? やっばい、生きた心地しないんだけど。
「それで結局あなた達はこんな市場の外れで何してるの?」
「え!? い、市場、市場~……あ、そう! 私は占いやってるんですよ! 細い路地の方が雰囲気出るかな~なんて。そう、ここは運命に導かれた人しか入ってこれない場所で――」
実際得体が知れない相手ではあるけど、少し話して感じるのは陰謀渦巻く
「――と、いうことで運命に導かれたお客様! なにかお悩みはありませんか!? 今ならなんと、初回特典で無料で占います!」
5分に及ぶ営業マシンガントークにポカンとしてたけど、なにやら悩みはあるようで真剣な面持ちに変わってく。……ならばここで仕掛ける!
「よろしければお名前をうかがっても? 占いの材料になりますので」
「私?
「【みなもとのらいこ】……さん? えっと女性ですよね? それとも
「よく間違えられるけど、れっきとした女だよ。でも女で佩刀してるのってそんなに珍しい?
くそ……、大体名を残すような人物はどの仮想未来でも一緒だったりするから、知ってるやつだったら楽だったのに。
そもそも女の武士って何!? 詩でも詠んでろよ! 源って義経ってやつくらいしか知らないっての!
「それでどう? 私、
陸奥守……なんとかの守っていうのはたしか地方役人の責任者みたいなものだっけ……?
「そうですね。女性の武士が珍しくないのであれば、地道に手柄を立てていけばいずれは――」
「それじゃ遅いのよ!!」
やっばい、どこに地雷があったのかわからないけど、完全に目が座ってらっしゃいますわ。これ、うかつなこと言ったらまずい雰囲気ですわ。
「今年現任の国司の任期が切れるの。次に選ばれなかったら最低でも4年待たなきゃダメ。私はこれ以上富ちゃんを待たせる訳にはいかない」
そう言うと頼光は1度目を瞑り、深く息を吐いた。再び開かれた瞳からは、どんな困難でも乗り越え成し遂げてやるという強い意志を感じる。
「私は陸奥守になりたい……いや、ならなきゃいけない。これは私の友達との大切な約束だから。あなたとの出会いが運命だというのなら、どんなか細い道でも可能性を示して欲しい」
参った……うっかりセールストークで運命に導かれたとか使うんじゃなかった。
しかし【みなもとのらいこ】。源ねえ……【いいくに】だか【いいはこ】だかを作ったのも源だったっけ? 他に源が付くやつがやったことは……あ。
「妖怪退治?」
「え?」
「そ、そう! たった今占いの結果が出ました。妖怪退治をしましょう。ほらほら、なんちゃら山のなんちゃら童子を退治すれば必ず想いは叶いますって」
「倒すべき相手が、かなり曖昧なんだけど……」
うっさいな! こっちだって知らないんだよ! 宇宙からの侵略者にばかり意識が行っててこんな時代ノーマークだっての!
「それは仕方ありません。占いとは道を示すもので答えを与えるものではありません。ですが、あなたが真に陸奥守にふさわしい存在なら、必ず成し遂げられるはずです」
そんな心の声は表に出さず、陸奥守の適正みたいなことを擦ってやる。よし、考えろ考えろ。そして無理矢理にでも自分を納得させるんだ!
「なにもあなた1人で抱える必要はありません。綱さん、でしたっけ? 女性の武士は珍しくないって言ってた方と相談してみるのも良いのではないですか?」
「……なるほど。うん、それもそうね! ありがとう占い師さん。なにかお礼になるものを……砂金は綱に預けたままだっけ。他には――」
勝った。あとはさっさとここから追い出すのみ!
「あ、お礼とかほんと結構なんで。迷える子羊を救えればそれで結構です、はい」
「うーんそれじゃ私の気持ちが――……うん、分かったわ。今度会えたときには改めてお礼をさせてもらうってことでいい?」
「はい。そういうことで結構ですからお気をつけて―――って速ッや!?」
私の両手を掴んでぶんぶん握手した後、頼光とかいう女性はとんでもない速さで駆けていった。あれ? もしかして我らが最凶娘の
結界を突破してきたりこの世界の人間のスペックいろいろバグってる気がするけど、窮奇のやつ人間の脅威を排除するんじゃなくて、人間を強化する方向で調整してるのかな?
となると適当言っただけの妖怪なんかも、
「まあいいや、とにかくこれでミッションコンプリート。エラーも解消ってことだろうしさっさと帰ってこんな世界消しちゃお。心臓に悪いわ」
『それは困る。貴公に話がある故、我がこの地に呼んだのだから』
いきなり声をかけられて慌てて振り返るとそこには観測者の姿しかない。
その左肩がぼこりと膨れ上がると地面に垂れて1度水たまりのように広がったそれは、人型に膨れ上がった。
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