【混沌】混沌、キチゲ発散を決意する
肉まんを頬張りつつ自室に戻る道すがら、今後のシミュレーションについて考える。
「ぶっちゃけ手詰まり感半端ないんだよなー」
もうね、
他の神仏の勢力圏に干渉するのも、後に日本と呼ばれたりする東の島国くらい神様が溢れかえった縦割り組織とかじゃないと難しいのがまた。
「やあ、混沌。どうしたんだい浮かない顔をして?」
「
話しかけてきたのは190cmを超える身長に、均衡の取れた筋肉質な体。サラッとした金髪と、目尻がやや下がった大きな目に輝く青い瞳が特徴のイケメン。
身長150cmに届かない、
「本当にどうしたんだい混沌? 困っていることがあるなら何でも相談してくれ。話を聞くぞ?」
「ああ、ごめん。さっきまで
「ああ、例の仮想の未来を生み出して観測する術についてかい? 私からもお前の言うことは事実だと女媧様にお伝えしてはしているのだけど、なかなか耳を貸していただけないからな」
「ほんと、少しでも耳を貸してもらえるなら、例の人類確定滅亡イベントにも備えられるってのにね。仕事丸投げして、生じた問題を相談してもガン無視とかやる気無くすっての」
どこぞの全知(笑)と違い、仮想未来から得た知識で作った料理を食べさせたら私の術について理解を示してくれた同僚。事ある毎に手を貸してくれようとするのも嬉しいけど、愚痴の相手になってくれるのが何より助かる。
「空の彼方からの侵略者に攻めこまれて全滅だったか? 隠れてやり過ごさせるとかではうまくいかないのか?」
「だーめ。地下深くに眠る資源の略奪が目的でさ、空飛ぶ船から何かを地表に打ち込んで持ってくって感じなんだ。その時の衝撃が起こす地震やら何やらで全滅しちゃうんだよね。そんなわけだから既にすべての生物が滅んだ未来でも、しっかりやって来て資源を持ってく感じ」
「ふうむ……。具体的な内容まで聞くのは初めてだったがそういう理由だったのか。それなら先にその資源とやらを掘り出してしまえばいいんじゃないか?」
「それは考えたんだけど、いかんせん何を掘り出してるのかわからないんだよね。仮に分かったとしても掘り出せるかわからないし、掘り出すことで侵略が前倒しになってもっと早く滅ぶかも知れないし」
ま、そこは今後のシミュレーション次第か。ほんと考えることは多いわ、理解のない連中には嫌味言われるわで頭狂いそうになる。
「あ~~、キチゲ発散したいー」
「なんだいそれは」
「心と体の平穏を保つための儀式的な? 普段なら絶対つけない条件をつけて人間がどうなるか見てみたいなーって」
いつもなら狩りや文字の使用など、ほっといても人間がやりだすことを早めるくらいだけど、それこそ漫画にでてくる【スキル】だの【チートアイテム】だのを渡してみたり、モンスターとか人類の敵を配置しても面白いかも。
でもそんなことしようもんなら窮奇が黙ってないよなー。こいつの仕事は生態系の頂点に人間が来るようにバランス調整することだもの。
「あくまで仮想の世界でなら色々試してみてもいいんじゃないか? 現実でやるとなったら止めるかも知れないが」
「現実で止められることは、仮想未来のキミに止められるからね。許可できる範囲が知りたい―――そうだね、例えばこんなのはどう?」
術で目の前の空間を自室に繋いで本棚から1冊の本を取り寄せ窮奇に渡す。
「【封神演義】。題名は読めるが、ところどころ読めない文字が混じるな……。それに絵と文字の配列が複雑で読みづらい」
「俗に日本語っていう東の島国に住む神々の言語だからねー。漫画も窮奇には早かったか。それはそれとして、その中に出てくる【
2つ目の肉まんに手を伸ばしつつ、パラパラとページを捲る窮奇の様子を見守る。生態系に上位存在を配置するわけでもなし、将来的にもっとやばい核兵器とかを作るの容認してるのを見れば道具については許容範囲広いはずなんだよなー。引っかかるとしたら、人間自身が発明するか
「未来の書物なのは分かったが、この書の内容を実行しようと思い立ったのはなにか理由があるのか? おそらく他にも書はあるのだろう?」
「私が出てくるんだよ。もっとも【
「【宝貝】とやらを作って配ること、か」
「そういうこと。ついでに言うなら、小説版に限ればすべての仮想未来の中で作られるから気になってたってのもある」
それこそ人間が文字を覚える前に滅んだ世界でも、洞窟に書かれてるというような正真正銘のホラー作品だったりする。
どうせ私は成り行きを見守るだけだし? せっかくのキチゲ発散なら見えてる地雷を思い切り踏み込むのも悪くないだろうさ。
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