第27話

「大丈夫だ、アーダルベルト。心配かけてすまなかった」

「良かったです。それより黒いオーラが消えましたが大丈夫ですか?」


アーダルベルトはかなりボロボロな姿になっていた。俺も止めるために体を張ってくれたのだろう。


「すまない。アーダルベルト」


そして俺は前を向く。目の前に救いたい人がいるから。


「バリス。お前が愛した女はまだ生きているんだろ。それなら後悔ないようお前の気持ちを伝えろよ。たとえ叶わなかったとしても愛した女のために人生かけろよ。お前が今しているのはただの八つ当たりだ。お前だってわかってるんだろ。アーダルベルトがどれだけお前のことを考えて生きてきたかを!目覚ませよ!」

「お前に何がわかる!愛する女が俺の目の前からいなくなってもう二度と会うことが許されなくなったこと気持ちを。こんなクソみたいな世界なんて無くなってしまえばいい!俺は、俺は!だからここに来たんだ!アーダルベルトを殺して!あの貴族も殺して!俺から奪った奴らは全部殺す!」

「分かるよ。俺は最愛な人を亡くした。俺の目の前で。だがお前は違う。生きているしこの世界は彼女のものでもあるんだ。お前はそれを奪おうとしている。目を覚ませよ」

「は?何言ってんだよ。お前まだ子供だろ...」

「歳なんて関係ない。今大事なのはお前が愛した女は生きているってことだ!男ならその女のためにたとえ恥をかいてでも!人生を賭けでも!行動しろっつってんだよ!なあ!目を覚ませよバリス!」

「...」

「バリス。俺は今でもあの夜を思い出す。お前が俺にお前だけは許さないと言ったあの夜を。私はほかに何かできなかったのだろうか。私は弱くて情けない人間だ。そしてお前もまた私と同じなんだ。過去のことにいつまでも囚われ、あの選択を悔やみ、後悔して、それでも!私たちは前を向いて生きて行かなくてはならない。そして次訪れた選択に対して全身全霊をかけて答えなくてはならない!」

「アーダルベルト...

俺は間違っていたのか...?俺がやってきたことは間違いだったのか...」

「間違っていない!お前は間違ってなどいない!私が証明しよう。この命にかけてただ少しだけ遠回りをしているだけだ」

「俺は何をやってんだろうな。あの夜から俺は進めてなどいなかった。なぁ、まだ間に合うと思うか」

「当たり前だ。私も一緒だ。私はお前と一緒に生きたい。そしてまた、あの時間を取り戻したい」

「アーダルベルト...」


バリスは膝から崩れ落ちその場で俺たちに謝罪をした。

「俺はもう間違えない!遠回りなんてしない!男らしく正々堂々真正面から生きてやる!」


彼の表情は吹っ切れたかのように明るくそして、優しい表情をしていた。




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