第6話 証明の始まり

甚九郎の話が学校での授業を通じて地元のコミュニティに広がり、彼と壇鉄の試みに対する関心が高まっていった。壇鉄の物語と簪作りの技術が注目を集める中、甚九郎はさらに一歩進んだ計画を思いついた。壇鉄の名誉を回復するため、そして彼の技術の真価を証明するために、地元の美術館で展示会を開くのだ。


甚九郎は美術館の館長に会いに行き、壇鉄の物語と簪作りの技術、そして展示会の提案をした。最初は少し戸惑いもあったが、甚九郎の情熱と壇鉄の技術に対する真摯な姿勢が館長の心を動かした。


「あなたのこの情熱、そして壇鉄さんの技術、それを多くの人に見てもらいたい。展示会を開催しましょう。」


美術館での展示会の準備が始まった。甚九郎は壇鉄の遺した簪と、自らが壇鉄から学んだ技術で作り上げた簪を丁寧に選び、展示するための説明文を一つ一つ書き上げた。壇鉄の生涯、その技術の背景、そして彼の名誉がどのように汚されたか、その真実を世に知らしめるための大切な機会だった。


展示会の開催日、美術館は地元の人々で賑わった。壇鉄の簪が一つ一つ展示され、その美しさと繊細な技術に訪れた人々は驚嘆した。甚九郎が書いた説明文を読み、壇鉄の物語に触れると、多くの人がその不幸な運命に同情し、彼の技術を称賛した。


展示会の最中、一人の年配の女性が甚九郎の前に現れた。彼女はかつて壇鉄の簪を愛用していたことがあり、その美しさと技術にいつも感動していたと語った。


「壇鉄さんの簪を見るたび、彼の技術と情熱を感じていました。あなたが彼の名誉を回復しようとしていること、心から感謝します。」


この女性の言葉は、甚九郎にとって大きな励みとなった。彼は、壇鉄の技術が時間を超えて人々の心に残り続けていることを実感した。


展示会は大成功を収め、壇鉄の名誉回復に向けた大きな一歩となった。甚九郎は、壇鉄と一緒にこの道を歩み始めてから、多くの人々とのつながりを感じるようになった。彼らの努力は、壇鉄の技術だけでなく、彼の物語を未来に繋げていくための確かな証明となったのだ。

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