第52話:ダンジョン探索研究会

 ◇


「十五分三十一秒⁉︎ う、嘘だろ⁉︎ もう帰ってきたのか⁉︎」


 《ポータル》の前でクリア時間を計測していたオスカ先生は、俺たちの姿を見るなりこう呟き、呆然と立ちすくしていた。


「ハハ……ちょっと速すぎましたよね。上手く行き過ぎて、僕たちもびっくりです……」


「いや上手くいったってレベルじゃねえぞ⁉︎ 歴代最短クリアパーティが四十五分二十五秒だ。ほぼ三倍の速さだ! いったいどうやれば……! わ、わけがわからん!」


 頭を抱えるオスカ先生。


 リヒトが約束通り手柄を引き受けて対応してくれているのだが、この反応を見るに少々やりすぎてしまったらしい。


 どこかで時間を潰すなりして、もうちょっと時間を掛けたほうが良かったか……?


 まあ、どうにかなったようなので良しとするか。


「やれやれ……なかなか困ったよ。はい、これ三日外出券」


「おお……!」


「こ、これが噂の……! 大切に使わなきゃですね」


「外出券……ね」


「いつ使うか迷いますわね……」


 パーティを代表して受け取ったリヒトが三日外出券を一人ずつ手渡してくれた。


 よし、これで俺は三日間自由になる権利を得た!


 久しぶりに実家に帰って、ダラダラと休暇を満喫するとしよう。


「エレン、それでさっきの話なんだけど」


「さっきの?」


「僕からのささやかなお願い」


「ああ……それか」


 さて、どんなお願いを要求してくるのやら。


 俺は、固唾を飲んでリヒトの言葉を待った。


「なに、そんな大したお願いじゃない。僕がこれから作る研究会に入って欲しいんだ」


「研究会? 何をするんだ?」


 そういえば、リヒトはいかにも活動的なタイプの割にどこの部活動や研究会にも入っていなかったので、不思議には思っていた。


 自分で新しく作ろうと思っていたのなら、納得だな。


 まあ……放課後の時間を拘束されるため面倒なお願いではあるが、想定の範囲内ではある。


 あとは内容次第といったところか。


「僕が新設するのは、名付けて『ダンジョン探索研究会』だ」


 ふむ、これは面倒くさそうな臭いがプンプンするのだが、俺の気のせいか?


 気のせいなら良いのだが……。


「実は、僕たちがさっき入ったダンジョンは、表層のほんの一部でしかないんだ。実は、地下には整備されていない広大なダンジョンが広がっている! ワクワクしない?」


「いや、全然」


「……まあ、するものとして話を進めるよ。『ダンジョン探索研究会』は、学院が休みの日を狙ってこの地下ダンジョンをゆっくりと攻略していくんだ。卒業までに制覇したいね。普段は学院の講義で成長し、休みの日はダンジョンで成長する。いいと思わない?」


「……はあ」


「何その反応⁉︎」


 こいつは休みという概念を知らないのか……?


 まったく、これは想定以上に面倒なことになりそうだな。

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