第22話:邪魔者

 ガチャリ。


 シードが扉の鍵を閉め、密室になった。


「ほんじゃ、やりますか!」


「ウェイ!」


「チョロすぎい!」


「も、もう俺我慢できねえ!」


 シード以外の四人の興奮は最高潮に達していた。


 そして、男たちのうちの一人がユリアの胸に手を伸ばした時だった。


 ガシ!


 その手をシードが止めた。


「俺が先だ」


 魔導テニス研究会では、女子学院生を乱暴する際には、不文律がある。


 獲物を捕まえてきた研究会員が最優先で手を出せる『先取特権』というものがあり、捕獲者の事後にしか非捕獲者は手を出せないというものだ。


「わ、わかってる。さっさと済ませてくれよな」


「ふん、分かっていりゃいいんだ」


 シードは制服のベルトを緩め、まずはユリアに手を伸ばす。


 ——と、その時だった。


 コンコンコン。


 扉の向こうから、来客を知らせる音が聞こえてきた。


「この大切な時に……誰だ⁉︎」


 これからようやくお楽しみにありつけると思った矢先の来客に苛立ちを隠せないシード。


 だが、もしも講師など学院側の人間の来客だった場合や、上位貴族の場合はさすがに無視は面倒なことになるかもしれない。


 シードは仕方なくベルトを閉めると、部屋の扉を開けた。


「誰だ!」


 そこに立っていたのは、制服を来た同じ学院生と思しき黒髪の少年。


 これまで見たことがない顔なので、おそらく新入生だろうとシードは予想した。


「俺はエレン・ウォルクスという者なんだが……ここが魔導テニス研究会の研究会室で合ってるか?」


「あ? あいにく今こっちは立て込み中なんだ。後にしろ」


 エレンの挨拶を聞いた後。学院側の人間でも、上位貴族でもないことを確認したシードはピシャリと扉を閉め、鍵を掛けたのだった。


「ったく、誰だアイツ。萎えちまったじゃねーか!」


 ドン!


 ぶつけようのない怒りを床にぶつけた後、改めてユリアとシーシャへの乱暴を試みるシード。


 しかし——


 ドッガアアアアアアアアアアン‼︎


 扉が魔法により吹き飛ばされ、先ほどの少年——エレンが部屋の中に強引に入ってきたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る