第20話:勧誘と懸念
口ぶりから推測するに上級生だろうと判断した二人は事情を話してみることにした。
「実は、下級貴族や平民だと入れる研究会がほとんどなくて……」
話してもどうにかなるわけではないし、そこに対して期待してはいなかった。
ただ、わざわざ声をかけてくれたので、説明だけはすることにしたのだ。
話を聞いた上級生は眉間に皺を寄せ、悩まし気な表情になる。
「ああ……。この学院の悪いところだよな。平民だからどうとか、下級貴族は貴族にあらずとか……まったく、時代遅れだ。反吐が出る」
上級生はバッサリと学院の風潮への不満を吐くと、ため息をついた。
何か具体的に問題が解消されたわけではない。だが、共感してくれただけでユリアとシーシャは胸の中にあったモヤモヤが少し晴れた気がした。
すると、上級生は驚くべき提案をしてきた。
「俺は、三年のシード・エレガンデ。魔導テニス研究会の会長をやってる。うちは初心者歓迎だし、来たい時だけの自由参加だ。もちろん、身分がどうとか……しょうもないルールもない。もし良ければ、うちの研究会に見学に来ないか?」
エレガンデ家と言えば、侯爵位の爵位を持つ名家。
当然、その名はユリアとシーシャの知るところだった。
「わ、私たちが⁉︎ い、いいんですか⁉︎」
「まさか、そんな研究会もあったなんて……」
条件面はまさに二人が望んでいたもの。
魔導テニスとは、魔力を使って行うスポーツである。二人とも魔導テニスをしたことはなかったが、少し触れてみれば興味を惹かれるかもしれない。
とても魅力的な提案だった。
「ああ。色々な出身の学院生と楽しくやろうってのがうちの研究会のコンセプトでな。見学に来てくれるってことでいいな?」
シードが尋ねると、ユリアが少し気になったことを質問した。
「研究会員って、私たちの他にも女性の学院生はいますか? ちょっとそこが不安で……」
「ああ、もちろんよ。いっぱいいる。心配しなくていい」
「そ、そうですか! 良かったです」
ユリアはほっと胸を撫で下ろす。
ユリアはあまり男性慣れしていないため、そこだけが気がかりだった。
ちなみに、シーシャもユリアと同様の気持ちだった。
「えーと、二人とも、名前は?」
「私、ユリア・シルヴァーネです」
「私はシーシャ・ローゼンベルクよ」
「オーケー、ユリアにシーシャだな。ってことは、ユリアが男爵……シーシャが平民だな?」
身分を気にしないと言っていた矢先から身分を尋ねるシード。
だが、二人がこの違和感に気が付くことはなかった。
「はい」
「ええ」
「じゃ、研究会室へ行こうか。みんな
こうして、二人はシードに導かれ、魔導テニス研究会の研究室会へ向かうこととなった。
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