第14話:手加減

 ◇


 オスカ先生が代わりの水晶を設置してくれたことで、ようやく俺の番が回ってきた。


 新しく用意された水晶はさっきのものより一回り大きいが、まあやることは何も変わらない。


 俺は、先の二人と同じように右手で水晶に触れた。


 ただし、意図的に水晶に流れる魔力を1/10までカットしている。


 なぜか。


 俺は、まだ実家への帰還を諦めたわけではないからだ。


 この学院を脱出する手段は二つある。


 一つ目は、規定の単位を取得し卒業すること。


 二つ目は、規定の単位を取得できずに退学すること。


 入学することに関しては腹を括ったわけだが、卒業するとは言っていない。


 すなわち、俺は二つ目の方法——成績不振による退学を狙っているのだ。


 しかし試験の成績二位かつ、十分な魔力量がありながら成績不振……では、明らかに不自然!


 そこで、この魔力量測定で手加減をしようというわけだ。


 さすがに、1/10まで出力を落とせば才能がないと見せかけられるだろう。


 出力をゼロにしないのは、魔法を使えている以上はさすがにあからさますぎるからだ。


 ピカッ!


 水晶が白く輝いた。


 ユリウスやリヒトの時はここから青くなり、紫色を経由して赤い光を放った。


 ……む、これではさすがに手加減をしていることがバレるか?


 一応は試験成績二位だからな……。


 ということで、俺はもう少し魔力を流し込む。


 すると、水晶は青く輝いた。


「な、な、な、なんということだ……!」


 様子を見守っていたオスカ先生は驚いているご様子。


「こ、これはどう考えてもおかしい!」


「いやあ……、俺も全力を出しているつもりなんですけど、これが精一杯で……」


「この水晶は、普通の魔力測定用水晶の軽く十倍は計測できる試作品なのだ! 水晶が青く光るとなると……これはとんでもない魔力量だ! こんなの、前代未聞だぞ⁉︎」


「は……?」


 あれれ……?


 え、嘘だよね……? マジで?


 しかし、オスカ先生は冗談を言っているようには見えない。


 手加減して魔力量を少なく見せかけるつもりが……失敗しちゃった?

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