第13話:爆発
◇
魔力検査室に到着。
部屋の中央に大きな水晶がある以外には何もない部屋のようだった。
床面積はかなり広く、三十一人が部屋にいる状態でも狭さは感じなかった。
「知っているとは思うが、一応説明しておくぞ。この水晶は、魔力量に応じて輝きが変化する。白、青、青紫、赤という感じで赤に近づくほどに魔力が多いことを示す。それじゃ、始めるぞ。順番は、入試成績順に——」
「センセ、俺が一番だ」
話を遮って割り込んだのは、ユリウスだった。
「いや、ユリウス閣下の申し出だとしても、まずはリヒト殿下を……」
やれやれ。
貴族というのは本当に面倒くさいな……。
自分よりも身分が高い人間に対して教えるというのは講師も大変そうだ。
「先生」
しかし、リヒトが助け舟を出した。
「僕なら後でも構いませんよ。それと、僕たちは教えを乞う立場ですから、敬称は要りません」
「そ、そうか。リヒト殿下……リヒトがそう言うなら……まあ」
「へっ、話が分かるじゃないか。さすがは王子様だ」
気を良くしたユリウスはニヤニヤと笑みを浮かべながら水晶へ。
右手で触れると、水晶が魔力に反応して白から青、青紫と変化し、最終的には眩いほどの赤い光を放った。
これは、測定できる中では最も多い魔力量を示す色である。
「フハハハハ! どうだ! これが俺様の才能だ。本来は、俺が首席で受かるはずだったんだ! そこの庶民が邪魔さえしなけりゃなあ! どんな手を使ったか知らないが、試験ではどんなインチキを使ったか知らないが、魔力量で嘘はつけんぞ!」
あれ? まさかこいつは俺が何か不正をしたとでも思っているのだろうか……?
まあ、いいか。
「それでは、僕の番ですね」
リヒトはユリウスと交代で水晶に触れる。
すると、水晶は白、青、青紫……と変化し、さっきとは別次元の赤い輝きを放ったのだった。
そして——
ボンッ!
と、大きな音を立てて水晶は爆発してしまったのだった。
「あ、あれ……?」
水晶は割れてしまい、光は完全に消えてしまった。
リヒトもこれは予想していなかったらしく、困惑しているようだった。
「な、な、なんということだ……! 水晶の許容量を超えただと⁉︎」
オスカ先生は破片を拾いながら、目を見開いている。
「そ、そんなことがあるんですか⁉︎」
「私も実際に見たのは初めてだ。と、とんでもない魔力量だ……」
リヒトとオスカ先生がやりとりする中、クラスの女子生徒たちはリヒトに熱い眼差しを向け、格の違いを思い知らされた男子生徒たちは意気消沈していた。
そして、先ほどイキっていたユリウスはというと——
「ぐぬぬぬぬぬぬぬ……」
拳を握りしめ、なんとも言えない表情をしているのだった。
ふっ、ざまあみろ。
俺は聖人君子ではないので、このように思ってしまう。
「と、とりあえず先生は代わりの水晶を持ってくる! 先生が戻ってきたらエレンから再開するぞ!」
破片を全て回収したオスカ先生は、このように説明して部屋を出て行ったのだった。
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