第7話:同居人

 ◇


 寮の部屋の鍵と制服を受け取った後、俺はユリアと別れて学院寮に来ていた。


 学院寮は男女別室になっており、基本的には二人部屋らしい。


 子供部屋は一人でのびのびと快適に過ごせていたことを考えると、やはりこれまでのような生活はできなさそうだ。


 同居人はどんな人だろうか……。


 極度の潔癖症とか、怖い人だったら嫌だなぁ……などと思いながら、部屋の前に着いた。


「三〇六……ここだな」


 そして、鍵を開けて中に入ったのだが——


「……へ?」


 部屋の中には、なんと下着以外何も身に纏っていない少女の姿があった。


 肉体は彫刻のように美しく、顔は人形のように整っている。


 ユリアを初めて見たときにとんでもない美少女だと感じたが、それと同等の美しさだった。


 ……と、あまりの美しさに見惚れてしまったが、そんな場合じゃないな。


「きゃ、きゃああああああああ‼」


 甲高い悲鳴が上がった。


 銀髪赤眼の少女は俺を見るなり顔を赤らめ、慌てた様子で側にあった制服で身を隠す。


 だが、華奢な肢体には不釣り合いな大きな胸全部を隠すことはできず、微妙に隠しきれていない。


 ふと床に目をやると、少女のものと思われる脱ぎたての服が散らばっていた。


 そういえば、学院内では基本的に常に制服を着用するよう義務付けられているとさっき説明を受けた覚えがある。


 どうやら、制服に着替えている途中に俺が部屋に入ってしまったようだ。


「え、えっと……す、すまん!」


 部屋を間違えちゃったのか⁉︎


 俺は逃げるように部屋を出て、改めて部屋番号を確認する。


「三〇六……合ってるよな」


 部屋に入る前にも確認したので当然といえば当然だが、俺の間違いというわけではないようだ。


 というか、間違っていれば鍵が合わないはずだ。


 となると、学院側のミスか……?


 などと思っていた時だった。


 ガチャリと扉が開いて、さっきの少女がひょこっと顔を出した。


 隙間から見える姿を見るに、制服に着替え終えたらしい。


「さ、さっきはすまなかった。俺は怪しいものじゃなくて、新入生の……」


「……別にいい。私が着替えてたのが悪かったから。覗きとか思ってないわ」


「そ、それなら良かった……」


 どうやら、あらぬ誤解は受けていないようだ。


 俺はほっと胸を撫で下ろした。


「それで、あなたが私の同居人……ってこと?」


「いや、寮は男女別のはずだし、それはないと思うんだが……多分、学院のミスで……」


「あなた平民よね?」


「あ、ああ! その通りだ。どうしてわかるんだ?」


「じゃあ、学院のミスじゃない。入ってきて」


 銀髪の少女は、俺が入れるように扉を大きく開けて手招きしてくれた。

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