世界最弱のダンジョンマスター〜モンスター数0、階層1、部屋数1の最弱童貞ダンジョンだったのに、瞑想するだけでレベルアップすると判明して美少女パーティに毎日探索されちゃいます
黒猫虎
短編
俺こと
「なあ、
「だよな。階層も部屋も1つだけ」
「あれじゃ客来ないだろ?」
「まだ
ちくしょう……
「そういえばさ、俺のダンジョン、レベ18」
「マジ!? あと2つじゃん」
「やっとかー、ダンジョン人化」
「レベル20!」
うそ、アイツのダンジョン、もうすぐレベル20になるのか?
俺のダンジョンなんて、レベル1どころか経験値ゼロのママだっつうのに。
「人化したら、写真撮って見せてくれよな」
「いいぜ。俺のダンジョン娘ちゃんはぜったい美少女だからな」
「やっぱダンジョン娘ランキングに登録するのか?」
「うーん悩む、どうしよっかな」
ガタッ
「お、シンピン野郎が帰るみたいだぜ」
「草」
「草」
「それより、ダンジョン娘はレベル50になったら○ッチさせてくれるってマジ?」
「マジマジ。去年卒業した○○先輩のトコ、親愛度MAXなったってさ」
「え、ということは……!?」
非常に気になる話が聞こえてきたが、俺にとっては関係ない遠い世界のコトだ。
それに、俺にはやることがある。
というワケで、帰るっ!(涙目)
……
20XX年。
突如として人類1人ひとりに、
・自分とダンジョンの能力値が確認できる「ステータス」
・世界中のダンジョンにアクセス出来る「ダンジョンポータル」
・個人所有のダンジョン「マイダンジョン」
の基本スキルが与えられた。
最初ばかりは驚かれたが、すぐに人類は適応していった。
それから十数年。
俺のダンジョンは欠陥ダンジョンだった!
モンスターが1体もいない。
新たに配置も出来ない。
何故だ、普通は必ずいるハズだろ!
そして、ダンジョンは返品交換不可なのだった。
モンスターがいないから探索者も来ないし呼べない。
知っての通り、友人もいない。
だからいつまでも俺のダンジョンだけ成長しない。
ダンジョンマスターが自分のダンジョンを探索しても、取得できるダンジョン
こんな欠陥ダンジョン、俺のダンジョン以外には見たことも聞いたこともなかった。
だからかなり特殊なんだと思う。
特殊だから、解決方法も分からない。
毎日クラスメイトに馬鹿にされるが、言い返すことも出来ない。
学校の教師たちは慰めてくれるが、俺のいないところでは笑っているに違いない。
今日は担任の教師に、卒業後を心配されてしまった。
俺も自分の将来が心配だ。
モンスターゼロ、1階層1部屋のダンジョン――略して011ダンジョン。
011ダンジョンには未来が無い。
……というワケでもない。
実はさっき少し思いついた。
011ダンジョンの活用法。
担任教師に心配されてる時に閃いた。
それは、
「瞑想ルーム」
モンスターが一人もいないダンジョンの中は音一つしない。
完全に静かだ。
ということは、かなり瞑想に適しているはずだ。
上級のダンジョン探索者は探索と探索の間に瞑想して心身をリラックスさせるのが流行ってるとミーチューブで流れてきたのを見たことがある。
イメージはカラオケルームに近い。
電話とメニュー表を設置して、フードとかドリンクを頼めるようにしたらどうだろう。
瞑想ルームを思いついた自分を褒めたい。
善は急げだ。
俺は駅前のカラオケルームの視察を敢行した。
◆
瞑想ルームのことを思いついて、3週間。
いい感じで準備できたと思う。
メニュー表はこんな感じか。
フードとドリンクの種類にも力を入れた。
店内用の電話も頑張って設置したぞ。
あと、ダンジョン内に男女別のトイレも完備した。
ダンジョンは全部自然に吸収してくれるとはいえ、気になる人は気になるからな。
もろもろの費用は全額を親に前借りしたのは秘密だ。
さっそく、ダンジョンポータルに「瞑想ルーム」の告知を打つ。
"瞑想ルーム始めました。ドリンク、フード完備"
お客は来てくれるかな?
もちろん、オープンしてすぐに客が入るとは思ってない。
これから地道に営業していこうと考えているところだ。
ところが期待してなかったのに、オープン初日から客が来た。
「1部屋空いてますか?」
「あっ、大丈夫っすよ。空いてます」
「じゃあ、1人お願いします」
幸先いいな。
お客様第1号は、黒キャップを目深にかぶった、女性探索者だった。
若そうだけど、けっこう高レベル探索者かもしれん。
何気ない立ち姿や移動の姿勢が様になってる。
俺は素人だから知らんけど。
女性探索者はメニューを見て、1番長い時間のコースを選んだ。
「この12時間コースが最長ですか?」
「はい」
「ではそれで。前払いですよね? これでありますか」
「たしかに。ではごゆっくり」
ふふふ。
瞑想ルームは普通のダンジョンと違って、ダンジョン探索がメインじゃなく、部屋を貸すサービスだから、「使用料」が発生するのだ。
これを思いついた俺、天才じゃね?
女性探索者を1つだけの部屋に案内して「使用中」の札をドアノブにかける。
ダンジョンポータルの方にも「当日完売」の案内を出す。
さて、12時間何して過ごそうかな〜?
◆
「ふぅ〜っ」
12時間後、女性冒険者が部屋から出てきた。
意外に息があがっている。
「ありがとうございました」
「こちらこそ。……ここの瞑想ルームってダンジョンの中にあるんですよね? ここのダンジョン、もしかしてかなりレベル高くないです?」
うん?
「いえ、レベル1ですよ」
「あ、そうですか……」
なんだか納得しているようなしてないような。
「瞑想は捗りましたか?」
「はい。かなり静かで集中できました。……あとはダンジョンから圧をけっこう感じたのが良かったんですけど、気の
彼女のセリフの後半はモゴモゴと口ごもっていて、良く聞こえなかった。
まあ、瞑想は捗ったらしいので、良かった良かった!
「また来ます」
「ありがとうございます。あ、1部屋しかないので、事前予約が確実ですよ」
「ありがとうございます。お食事も美味しかったです」
帰る間際にチラと目のあたりまでお顔が見えた。
かなりの美少女っぽい。
どこかで見たことあるような……?
高レベルの探索者と思うが、もしかしたら配信とかで見たことあるのかな。
有名配信者だったりして。
彼女が帰ったあと、「ステータス」と「ダンジョンポータル」を開いて色々確認する。
俺は驚いた。
「一度に、こんなに?」
そこにはかなりのダンジョンPTが記載されていた。
あと、大量の魔力。
「あの人から吸い取ったんかな……?」
うーん。
けっこうな階層にならないと魔力吸わなかったと思うけどな……?
どういう仕組みなんだろうか。
初めての来客だから、色々と良くわからん。
まあ、とりまこれで祝・童貞卒業!
◆
あのお客さん、また今日も来てくれた。
「しばらく通いますね」
「大丈夫ですよ、お客さんはアナタだけなので」
ほんとありがたい。
◆
「1部屋に何人まで大丈夫ですか?」
「料金は人数分かかりますけど、4人くらいまでなら大丈夫っすよ」
「今度はパーティメンバーと来るかもです。明日は探索なので来れないです」
「了解です」
あれから、彼女は毎日通ってくれている。
もう連続5日だ。
明日は来れないって、フツー冒険の合間に瞑想じゃないの?
逆になってますよ?
そして、2日後にまた彼女から予約が入った。
初めは予約で彼女の名前を知った。
超人気の配信者でもあり、それで見たことあったみたい。
女子なのに最強熱血系の前衛ファイター。
レベルはすでに50を超えてるらしい。
ダンジョン娘も所有してるんだろうな。
実に裏山である。
その彼女が予約を3人分入れていた。
彼女のパーティメンバーかな?
まさかね。
……と思っていましたが。
が。
が。
実際に直接目にするとヤバイね。
【クリムゾン・スターリー】の3人、勢揃いじゃないですか!
クール系の司令塔ファイター兼スカウト、
キュート系の支援系、
3人とも超絶美少女。
超絶美少女で超人気国民級アイドルの大人気ダンジョン攻略パーティがなぜか俺の011ダンジョンにいるのはナゼ!?
Why!?
「また来ました。パーティメンバー連れてきました」
「大丈夫ですよ、部屋増やしておきました」
「マスター、やっぱりこのダンジョン、高レベルだよ。このコ達にも意見聞いたけど間違いないって」
「そうなんですか?」
「間違いないよ。ボクが断言する。80レベル80階層以上は間違いないと思うよ。もしかしたら100レベル100階層もあるかも」
「ユナナもそう思うな。だって瞑想だけでユナナの魔力タンクを空っぽにするなんてそれしか考えられないっしょ!?」
「そうなんですか。でも、調べる手がないですからね……」
「マスター今度、探索者ギルドからダンジョン測定器借りれたら借りてくるね。それで調べれば真実が分かるよ」
「ありがとうございます、星咲さん」
「いいですって、マスター。……でもそろそろ、下の方の"彩華"で呼んでくれても、イイんですよ……」
やはり、星咲さんのセリフの後半はモゴモゴと口ごもっていて、良く聞こえなかった。
◆
3人が帰ったあと、恒例のお楽しみの時間だ。
「ステータス」と「ダンジョンポータル」を開いて色々確認していきましょう。
「おお豊作! 神よ、クリムゾン・スターリーの皆様よ、感謝します!」
3人分のダンジョンPTはヤバかった。
かなりの量だ。
「おお。これで部屋をあと2つ増やそう」
実は、これで部屋数は5部屋になる。
「やはりモンスタースポナーはまだ設置出来ないか……」
モンスタースポナーとはモンスターがスポーンされる地点のことだ。
モンスタースポナーが設置できれば、瞑想ルームとしてだけではなく、普通のダンジョンとしても運営できそうなんだけど。
「モンスタースポナーが出来ることを見越して、そろそろ通路を伸ばしてみるか……」
見込み違いでモンスタースポナーが設置できなかったら、ボウリングのレーンにしてもいいかも。
――気がついたら"通路"をポチッていた俺だった。
◆
星咲さんがまたまたお友達を連れてご来店だ。
こんどは同パーティではなく、同じクランのメンバーらしい。
それにしても。
「この中で剣を振っても大丈夫ですか?」
「大丈夫です」
「魔法使っても?」
「……壊さない程度であれば」
瞑想するだけより、色々消費してくれた方がダンジョンPTが有利そうだからな。
それにしても、クラン全員美少女なのは、何か理由があるのかな!?
おかげで、美少女に免疫がついてきたぞ。
閑古鳥が鳴いていた俺の011ダンジョンだが、ここんとこ繁盛していた。
とはいえ、まだまだ星咲さん関連のお客さんオンリーだけど。
つまり美少女100%だけど。
親に前借りした借金だが、実はこの度、全額返済しちゃった。
うはは。
「マスター……?」
「ウハハハ……はい、何でしょうか」
密かな高笑いをしていたら、眼の前には超絶美少女――星咲さんと他二人のクリムゾン・スターリーが不審げに俺を見つめていた。
「マスター、そろそろ検証も終わったんで報告しようと思うんだけど」
「検証? 報告?」
何それ、聞いてない。
「マスター。この瞑想ルーム、ヤヴァいです」と星崎さん。
ナニ、が?
「マスター! この瞑想ルーム、何もしなくてもレベルが上がるんだけど? 知ってたの?」夢見さん。
いえ、知りませんでしたよ。
「マスター? 部屋にこもるだけでレベル上がるなんてユナナ聞いたことないよ? もっと使用料上げたほうが良いと思う!」輝城さん。
え、上げていいの?
客の方から値上げ要求ってあるんだ……。
「しかも私たちのステータスの【ダンジョン耐性値】がめちゃくちゃ上がってるの! これまで短時間しか潜れなかった50階層以上のダンジョンも、これから余裕かもなの」
「マスター、分かってる? ボクたち攻略組でも上位なんだけどこれは断言できる。君の瞑想ルーム、かなり凄いってことだよ?」
「うーうん、凄いんじゃない。"しゅごい"んだよ!」
「う、うん」
3人組に圧倒される俺だったが、更に追い打ちされる。
「それで、コレ見て」
「何これ……ダンジョン測定器?」
「ギルドがやっと貸してくれたの」
星咲さんが見せてきたのはギルド貸出のダンジョン測定器。
その測定値が示すモノは――――
「に、210階層!?」
「そ。このダンジョンは200階層超え相当のダンジョン圧があるってこと」
ど、どういうことだ……?
俺のダンジョンは011で、210……?
「リーダー。一度に情報与え過ぎたみたいだよ。マスター限界じゃない?」
「……そうみたい」
「あはー。面白い顔になってる」
「今日は帰ろうか」
「また来るよ」
「バイバイ、また明日」
3人は、フリーズしてしまった俺をそのままに、そっと帰っていった。
俺はひとり、ダンジョンポータルとステータス画面を見直す。
「やっぱ、レベルは1のまんまだよなぁ……アレ?」
見間違いかと、目をゴシゴシとこすってみる。
「モンスタースポナーが設置できるようになってる……?」
◆
「……めっちゃ使用PTかかるな……え、ドラゴンスポナー!?」
設置できるようになったモンスタースポナーは、ドラゴンスポナーだった。
つまり、ドラゴンが湧いてくるってことだね。
うぉい。
というワケで、この前作った通路を更に延長、延長、延長していく。
そして、その先に「部屋(巨大)」を設置。
その部屋に、大量のダンジョンPTをブチ込んでドラゴンスポナーを設置した。
「こんにちはー」
「ちわー」
「ちわわ。マスター、元気になった?」
クリムゾン・スターリーの3人組だ。
「あっ。ちょうどい良いところに」
事情を説明する。
「な、なななー!?」
顎が落ちそうな星咲さん。
+他2名。
「「「ドラゴンスポナー!?」」」
初めこそ驚くばかりだったクリムゾン・スターリーだったが、時間が経つにつれて、その目がスターリーの名の通り、爛々と輝きだす。
「これは気合を入れ直さないと死にますね!?」
「ちょうど体を動かさなきゃと思ってたところだよ!?」
「瞑想ばっかりで、ユナナ退屈してたしー!?」
大丈夫かな、レベル210相当なんだけど……。
「マスター、任してください、行ってきます!」
「あ、危ないと思ったら、ダンジョンマスター権限で助けてくださいね!」
「行ってくるよー!」
……
そうして、世界でたった一つの、「一階層からドラゴンが湧いてくる瞑想ルームダンジョン」が誕生したのだった。
まる。
あ。
あれから予約してきたクラスメイト数名を強制キャンセルにしておきました(笑)
後は、贅沢な悩みかもしれんが、最近ダンジョンに活気が溢れすぎてしまい、瞑想ルームとしてはうるさ過ぎる点だ。
そろそろ「壁(防音)」を部屋数分ポチらないといけないかもしれない。
ダンジョンPTは十分過ぎるほどあるんだけどな。
2個目のモンスタースポナーか、2階層の拡張メニューに備えて無駄遣い出来ないんだよなー。
贅沢な悩みだ。
そして、ダンジョンのレベルがとうとう"2"になったある日。
俺は見つけてしまった――例のメニューを。
【人化(ダンジョン)(親愛度MAX)】。
うわー、ごっそりダンジョンPT取られる。
しかし、貯めに貯めたダンジョンPTは十分。
気合も十分。
「親愛度MAX」の表示が少し気になるが。
「行ったれー!!」
メニュー、ぽちぃ。
「やっと会えました……マイマスター」
「な、ななな、なにその服!? エロ過ぎる!!」
親愛度MAXの所為なのか?
俺のダンジョン娘が登場時からエロ装備過ぎる件。
そして、あまりにもエロ美し過ぎる。
身長約160cmの見たこともないくらい美しい少女。
月光に照らされたような銀糸のように輝く髪、深い海のように澄んだ青色のパッチリ大きな瞳、超長いまつげ、キメ細かい乳白色の肌、優雅で華奢な体つき、お腹周りがパックリと開いた清楚なのにエロい天界のドレス。ウエストほっそい。胸はシースルーでほぼ見えてます。桜色の真珠が2つ。そして最奥の秘密の部分には秘密のファスナーががが。
完全に童貞殺しです、ありがとうございます。
ダンジョン娘ランキング、ブッちぎりで1位になりそうな予感。
「いつまでレベル1で待たせるんですか……交じわい待ったなしですよ」
どこのとは言わないが、俺の右手がエロ装備のファスナーを下げる手伝いをさせられていた。
するすると下がっていく。
裂け目が広がっていく。
「待って、俺は」
「持ちません♪」
彼女に柔らかく襲われながらも、所有しているダンジョン娘のステータスを急ぎ確認する。
====
種族名:ダンジョン(天空の塔)
名 前:リュミナ
====
(な、なんだ、天空の塔!? そんな種族名聞いたことないぞ……)
と難しいことを考える俺だったが、彼女の口づけによりとうとう思考力が奪われてしまったのだった。
俺のダンジョン生活第2章が、今始まる。
〜fin〜
世界最弱のダンジョンマスター〜モンスター数0、階層1、部屋数1の最弱童貞ダンジョンだったのに、瞑想するだけでレベルアップすると判明して美少女パーティに毎日探索されちゃいます 黒猫虎 @kuronfkoha
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